前回、お餅が喉に詰まる事故についてご紹介しました。
ただ、お餅が詰まるのは喉だけとは限りません。飲み込んでからも、注意が必要です。
今回は、「お餅が腸閉塞の原因に!?」についてご紹介します。
→お餅の窒息事故については、こちらの記事で紹介しています。
「腸閉塞」ってそもそもなに?
腸閉塞は、さまざまな原因で腸管の内容物がつまり肛門側に移動できなくなった状態です。つまり、お餅に限った話しではありません。
ちなみに、腸閉塞には「機械性腸閉塞」と「機能性腸閉塞」があります。
- 機械性腸閉塞・・・腸管の内容物が物理的に通過できなくなる腸閉塞。
- 機能性腸閉塞・・・血管の血流や神経の障害で通過できなくなる腸閉塞。
今回の、お餅が詰まる腸閉塞は物理的に通過できなくなるため「機能性腸閉塞」に当たります。
さて、そんな腸閉塞ですが食べ物が詰まることで引き起こされる腸閉塞を「食餌性イレウス」と呼びますが、原因となる食べ物としては、「消化されにくい食べ物」や「水分を含むと膨らんでしまう食べ物」が原因だと考えられています。
- 糸こんにゃく
- コンブ
- ワカメ
- キノコ
- 餅
など。
冗談みたいな事例
- ダイエット目的で「ふえるワカメ」を大量に食べた。
- 鍋料理の椎茸を噛まずに1個丸呑みした。
こういったことが原因で腸閉塞になり、その後、開腹手術で取り除かれることとなった事例まであります。
まさしく、「詰まった異物を取り除いた」そんな事例です。
さて、今回はお餅についてですので、ここからはお餅による腸閉塞になった事例をご紹介します。
《餅による腸閉塞事例》
- 63歳男性が義歯を外して雑煮の餅を丸呑み。→入院となったが便中に硬化した餅が排泄。
- 68歳男性が雑煮の餅をよく咀嚼せずに摂取。→ 〃
このように、お餅は腸管内で硬化しそれが詰まってしまうようです。
お餅を摂取してからどれくらいで症状が出てくるの?
《お餅を摂取してから症状が出てくる時間》
食道潰瘍(食道粘膜に深くはっきりした傷がみられる場合)→摂取直後に発生します。
この食道潰瘍を除けば、多くの症例で数時間~1日以内です。少なくとも、症状は4日以内に出現しています。
時間差で症状が出現することもあるため、注意必要です。
《症状》
- 腹痛
- 吐き気
- お腹のはり
- ガス・便が溜まる
先程の事例では、嘔気・嘔吐・おなかのはり(腹部膨満)・腹痛といった症状により受診されています。
お餅の特徴!
お餅の主成分はデンプンです。
そのため、一般的にお餅は「消化されやすい食べ物」として認識している人もいるかもしれません。ですが、理化学(物理学と化学)的には消化されにくいことが指摘されています。
実際、手術により消化管内から摘出された餅は、いずれも未消化の硬化した餅だったことが分かっています。また、餅が3ヶ月以上消化されずに腸管内に存在していた事例まであります。
食事で注意することは?
言うまでもありませんが、餅に限らず丸呑みはかなり危険な行為です。子どもの頃に言われたように、よく噛むことが基本的な対処となります。
とはいえ、腸閉塞の原因はさまざまあるため、一般的な予防法はありません。
ただ、開腹手術後の腸閉塞に対しては消化の良い食事をとるとともに、「大建中湯」という漢方薬が有効だと言われています。
そして、食事療法や運動を行なっても排便がない場合は、下剤などで排便コントロールをする必要があります。
腸閉塞の死亡率は6.7%です。
なにより、腸閉塞は自然に良くなることはほとんどありません。さらに、例えば複雑性腸閉塞の場合は、時間が経つと腸管が壊死してしまうため緊急手術が必要になります。(捻れている腸管を解除し、壊死した腸管を切除する必要がある)
そのため、排便・排ガスの停止をともなう腹部膨満や腹痛・嘔吐が気になるときはすぐに受診する必要があります。
最後に
腸閉塞には、便が溜まることで発生する「糞便イレウス」というものもあります。
イレウスとは、日本語で「腸閉塞」のことです。
私がケアマネとして担当して利用者さんがこの「糞便イレウス」でした。
すでに手術を繰り返されていたため、これ以上の手術ができない状態になっておられ、とにかく排便コントロールができないと、命に関わる状態でした。(本人は腹痛の訴えはありましたが、かなり元気でした)
このように、腸閉塞の原因はさまざまでいつどこで何が原因で起こるか分かりません。
ですが、無理な食べ方をしないことでリスクを少しでも抑えることはできます。
くれぐれも、暴飲暴食にはご注意下さい。そして、排便やガスが出ない状態は危険です。早めに受診して下さいね。
参考
日本消化器病学会雑誌第110巻第10号
→https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/110/10/110_1804/_pdf
全日本民医連
→https://www.min-iren.gr.jp/?p=4165
徳洲会グループ:消化器内科の病気:腸閉塞(イレウス)
→https://www.tokushukai.or.jp/treatment/digestive/cho_heisoku.php
All About:腸閉塞の原因は食事?腸閉塞の原因と予防法
→https://allabout.co.jp/gm/gc/445057/
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