前回、テレワークでも労災認定の対象になることをお伝えしました。
ところで、最近このテレワークでパワハラが注目されるようになってきました。
「直接会わないのにパワハラ?」と考える人もいるかもしれませんが、むしろ直接会わないからこそ引き起こされているのかもしれません。
今回は、「遠くて近いテレハラ(テレワーク・ハラスメント)」についてご紹介します。
→「テレワークと労災」については、こちらの記事で紹介しています。
そもそも「改正パワハラ防止法」が施行されている!
パワハラ防止法(正式名称:労働施策総合推進法)が改正され、すでに改正パワハラ防止法が2019年5月29日に成立しています。
- 大企業:2020年6月施行
- 中小企業:2022年4月施行
→企業に対してハラスメント対策の強化が義務づけられました。
つまり、中小企業にはまだ義務化されていません。
ただし、すでにハラスメントは社会問題になっているため、「義務化されていない」とはいえ中小企業も避けては通れないでしょう。
→「パワハラ防止法」については、こちらの記事で紹介しています。
ちなみに、パワハラは以下の6種類が挙げられています。
- 身体的な攻撃→暴行・傷害
- 精神的な攻撃→脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
- 人間からの切り離し→隔離・仲間外し・無視
- 過大な要求→業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
- 過少な要求→業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり仕事を与えない。
- 個の侵害→私的なことに過度に立ち入ること。
1~6を確認すると、テレワークで引き起こされそうなパワハラは身体的な攻撃以外、全て引き起こされる可能性があると思いませんか?
テレワークによるパワハラはこんなにたくさんある!?
例えば、テレワークは働く場所によって「在宅勤務」・「モバイルワーク(喫茶店や主張先のホテルなど)」・「サテライトオフィス勤務(自社専用の小規模なオフィスなど)」の3つに分けることができます。
さて、多くの人がイメージしやすい在宅勤務。つまり、自宅で仕事をする場合どういったパワハラがあると思いますか?
在宅勤務なのにパワハラ?
そもそも、一人暮らしの方ばかりではありませんし、むしろ誰かと暮らしている人の方が多いのではないでしょうか?
また、一人暮らしだったとしても電車が近くを通っているなど、周囲の環境がよくない人もいるでしょう。
そもそも、テレワークをするためのネット環境が悪い人もいます。
どういうことかというと、自宅で仕事だけに集中できる環境を整えることが意外に難しいのです。
私の場合なら、記事を自宅で書きますが2歳と4歳の子どもがいるので、最長でも1時間が限界です。
また、あまりネットを使いすぎると制限がかかってしまうため、無駄な通信には使わないようにしています。
→動画で6時間程見れるぐらいの通信はできるのでそれほど困りませんが・・・
そういう意味では、私もテレワークに適した環境ではありません。
つまり、テレワーク中にこういった弱い部分を同僚などに指摘される可能性があります。
それ、「テレハラ」ですよ・・・
先程の例で言えば、「同僚から、子どもなど同居者の声や生活音、プライベート空間について非難される」場合が挙げられます。
そもそも、個人のプライベート空間について言及することはセクハラに当たります。
当然、体型ついて指摘したり、容姿について指摘することもセクハラに当たります。(他にも、「オンライン会議で全身を映すことを要求する」など)
ちなみに、1対1のオンライン飲み会に誘ったり、SNSでの個別のつながりを求める行為も同様です。
そう考えると、人目を気にしないテレワークは、セクハラなどのパワハラの温床になりかねません。
他にも、こんなことが!?
~仲間はずれ~
例えば、パワハラの1つに「人間からの切り離し」がありますが、これはテレワークでも引き起こされています。
- 特定の人物をオンライン会議に呼ばない。
- チャットグループに招待しない。
→業務上、必要なのに隔離してしまう行為。つまり、仲間はずれにする行為です。仕事なので、「仲間はずれ」というのも意味が分かりませんが・・・
~普段は気をつけているのかもしれませんが・・・~
また、テレワークだからと会社では気をつけられているであろう「業務に関する指導以外の説教」や「オンライン飲み会の強要」などが引き起こされる可能性もあります。
「対面しないことによる気軽さ?」がそうさせるのかもしれませんが、これらは全てパワハラに当たります。
さらに、テレワークに対する不安からか、こういったテラハラも挙げられます。
~テレワークによる不安?~
テレワークは、会社とは違い働いている様子が分かりませんよね。分かるのは、仕事の進行状況。つまり、現時点での結果です。
順調に仕事が進んでいればいいですが、必ずしもそうとは限りません。そういったイライラや不安から・・
「業務内容や時間の使い方について過度な説明を要求」されたり、「オンライン会議の強要など、過度な監視」をしたりといった行為が挙げられます。
途中経過の確認は確かに必要ですが、その報告に追われてしまえばそれこそ本末転倒です。
そもそも、こういった行為もテレハラに当たります。
それでは最後に、ダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社が実施した「テレワークにおけるハラスメントの実態調査」についてご紹介します。
テレワークにおけるハラスメントの実態調査
2020年5月21日~22日にインターネット調査が行われました。
その結果、テレワーク業務で上司とコミュニケーションを取っている会社員110名から有効な回答がえられています。
テレワークで上司とのコミュニケーションにストレスや不快感を感じる部下⇒約8割
- 言葉遣いがきつい
- web会議をやりたがる
- メールのやり取りでニュアンスが伝わりにくい
- 仕事をサボっていないかチェック
おそらく、上司はセクハラをしているという意識がないのでしょう。
こういったことの積み重ねで、「上司とのコミュニケーションにおいて、ストレスや不快感が出社時よりも増えた」と答えた部下⇒66.4%
つまり、アンケートで回答した約8割(約88人)の人がストレスを感じており、さらにその内の6割以上が職場よりも上司に対するストレスや不快感が増加しています。
ただ、これは通勤に対するストレスなど職場ならではのストレスがなくなったことで、上司へのストレスがダイレクトに噴出してしまったことも原因にあるのではないでしょうか?
とはいえ、「常に仕事をしているかの連絡や確認」だけでなく、「オンラインでのプライベートに関する内容の質問」を体験した部下がそれぞれ4割を越えています。
これでは、上司に対するストレスが増加しても仕方がないですね・・・
そして、そもそもオンライン会議にも問題があるようです。
オンライン会議は遠くて近い?
調査の結果、「オンラインでの会議やミーティングで上司との距離感が近すぎる」と感じたことのある会社員⇒63.6%
そして、このように感じた人達の94.0%は不快感やストレスを感じているそうです。
つまり、アンケートに答えた6割以上の人が「オンライン会議は上司と近すぎて嫌!」と感じていることが分かります。
それでは、部下は上司にどうなって欲しいと考えているのでしょうか?
部下から上司への要望は?
- 「仕事とプライベートの棲み分け」⇒52.7%
- 「チャットやメールでの言葉の使い方」⇒43.6%
- 「コミュニケーション内でのプライベート介入」⇒30.9%
セクハラ問題に関係なく、どれもテレワークをする上で気をつけることですよね。
ですが、テレワークをする上で最も基本的な、「仕事とプライベートの棲み分けができていないことに対する不満」が最も高くなっていました。
職場ではやらないのに、テレワークではやってしまうのか?
それとも、もともとそういう上司なのか分かりませんが・・・
ただ、この結果からみると、まだまだ日本はテレワークを使いこなす環境の整備ができていないことが、浮き彫りになってしまっています。
そもそも、在宅で仕事だけに集中できる環境の準備は、想像以上に難しく大きな壁になることは付け加えておきます。
最後に
パワハラ防止法の目的は・・・
労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的
つまり、労働者の働く意欲を削がないようにすることで、実力を発揮してもらう職場を目指すことにあります。
そんな会社があれば確かに理想的ですが、まだまだ始まったばかりの働き方です。
そして、中小企業にも改正パワハラ防止法が適用される頃には、もっと厳しくなっているのかもしれません。
ただ、そもそもの目的は働きやすい職場
です。
目的を忘れて、「テレハラだから!」とやってはいけないことばかりが先行してしまわないように、「なんのためにやっているのか?」意識する必要があるのではないでしょうか?
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