今回のシリーズでは、無断欠勤について、労働者側と企業側それぞれの視点で紹介してきました。
前回の記事では、企業からすれば無断欠勤を放置することで様々な手間が増え場合によっては、法律的な問題まで引き起こされることがわかりました。
それでは、企業がもしも無断欠勤を放置した場合はどうなると思いますか?
今回は、もしも企業が無断欠勤者をそのまま退職させずに放置したら、無断欠勤者はどんなデメリットがあるのか紹介します。
そもそも、無断欠勤したら退職扱いになるんじゃないの?
誤解される部分として、企業が一方的に「今日から退職です」と決めて、労働契約を終了させることはできません。
会社側から労働契約を終了させる場合には、自然退職の根拠となる規定や、解雇の要件などを確認する必要があります。
とはいえ、さすがに「無断欠勤は一発アウトでは?」と思う人もいるかもしれませんね。
ですが実際は・・・
- 1日〜数日の無断欠勤 → 原則として「欠勤」であって、自動的に退職にはならない
- 長期間まったく連絡がつかない → 就業規則に「一定期間無断欠勤した場合は退職扱い」といった規定があれば、**自然退職(退職扱い)**になる可能性がある
つまり、無断欠勤=退職ではありません。
場合によっては不当解雇になり、企業側が逆に訴えられるリスクすらもあります。
そのため、たとえ無断欠勤だとしても、そもそも、企業が一方的に労働者との雇用関係を終了させる場合には、解雇などの法律上のルールが問題になります。
つまり、手続き上・・・
- 会社が一方的に「今日から退職です」とした場合→ 就業規則や手続き、解雇の合理性などが問題になる
- 本人が「辞めます」と意思表示する場合 → 自己都合退職になる
特に重要なのが、「自然退職」と「解雇」は別物というところです。
たとえば、就業規則に「無断欠勤が○日以上に及び、会社からの連絡にも応答しない場合は、退職の意思表示があったものとみなす」とあれば、一定の条件があれば退職扱いとみなされることがあります。
ただし、「退職の意思表示があったものとみなす」といった規定が設けられている場合でも、規定の内容や適用状況によっては、その有効性が問題になることがあります。
いずれにせよ、無断欠勤1日だけで「退職扱い」にはできないと考えるのが基本です。
無断欠勤者を退職させるための方法?
①「自然退職」
就業規則に基づく「自然退職」
これが、会社側が「退職扱い」にしたい場合に一番重要になります。
例えば就業規則に、
「正当な理由なく○日以上無断欠勤し、会社からの連絡にも応じない場合は、退職したものとみなす」といった規定があった場合。
この規定の条件を満たせば、会社が解雇するのではなく、一定の事由によって労働契約が終了した=自然退職として扱える可能性があります。
ただし、単に就業規則に「無断欠勤○日で退職」と書けば何でも有効、というわけではありません。
会社としては、
- 無断欠勤の事実を確認
- 本人に電話・メール・書面などで連絡
- 本人に欠勤理由を確認する機会を与える
- 就業規則の自然退職条項を確認
- 規定に定められた期間・条件を満たしたことを確認
- 退職扱いとしたことを本人に通知
- 記録を残す
という対応をするのが企業側としては安全な対応と言えるでしょう。
*会社が本人と連絡を取って、「今後勤務する意思がありますか?」と確認し、本人が「退職します」と意思表示をすれば、通常は自己都合退職として処理されることになります。
②解雇
本人が退職に同意しない場合などに、会社が一方的に労働契約を終了させる方法です。
ただし、会社が勝手に「連絡がないから、退職届を書いたことにしておこう」ということはできません。
このように、無断欠勤者との雇用関係を終了させる方法として、本人の退職意思を確認する方法、就業規則に基づく自然退職・解雇などがあります。
それでは、自然退職はいつ・どのタイミングでどのように対応すればいいのでしょうか?
自然退職として処理できるのはいつ?
例えば、厚生労働省のモデル就業規則には、「2週間以上の無断欠勤」を、労働者の責に帰すべき事由による解雇予告除外の例として挙げています。
ただし、これは「2週間無断欠勤すれば解雇できる」という基準ではありません。
あくまで、解雇予告除外認定の対象となり得る事例として示されているものです。
なお、解雇する場合は、原則として30日前の予告または30日分以上の平均賃金による解雇予告手当が必要です。
会社側からの一連の流れ
無断欠勤発生
↓
本人と連絡が取れない
↓
就業規則の自然退職条項を確認
↓
規定の期間・条件を満たすまで待つ
↓
連絡を試みた記録を残す
↓
自然退職として処理
↓
本人へ退職扱いとなったことを通知
このように、就業規則に基づいて手続きを進め、本人への連絡や通知の記録を残しておくことで、会社が突然一方的に解雇したと受け取られるリスクを抑えることができます。
企業側からすると、働いてもいない人のために、これだけの対応が必要になるのはかなり大変ですよね。
なお、派遣社員の場合は少し注意が必要です。
派遣社員の雇用主は派遣会社なので、派遣先を無断欠勤したからといって、派遣先との関係だけで雇用契約が終了するわけではありません。
派遣先での就業が終了したとしても、派遣会社との雇用関係がどうなっているのかは別に確認する必要があります。
「派遣先に行かなくなった=派遣会社も退職した」とは限らないため、派遣社員の場合も正式に退職手続きを行うことが大切です。
派遣社員の場合は、派遣先と雇用主が異なるため、無断欠勤した場合の影響も少し異なります。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
さて、それでは本題のもしも企業が無断欠勤者をそのまま放置したら、無断欠勤者はどうなるのでしょうか?
企業から放置された無断欠勤者はどうなる?
結論から言えば、無断欠勤者が「会社を辞めたつもり」で会社からの連絡を無視しても、退職手続きまで消えるわけではありません。
例えば、新社会人として就職したはいいけど、出勤しなくなるということは残念ながらありますよね・・・
その場合、また再就職のために就職活動をすることになると思うのですが・・・
「前職の退職処理」ができていないとこんなことがあるかもしれません。
例えば4月にA社へ入社した新社会人が、
4月15日から無断欠勤
↓
A社からの電話・メールも無視
↓
「もうA社は辞めた」と考える
↓
5月にB社へ就職
この場合、短期間だから「A社でほとんど働いていないから、A社をなかったことにできる」とはなりません。
また、短期間の勤務であっても、雇用契約が成立していれば、退職時には雇用保険や社会保険、給与、源泉徴収票などに関する手続きが必要になる場合があります。
特に、A社で社会保険・雇用保険に加入していたなら、「無断欠勤してそのまま次の会社へ行けば終わり」というわけではありません。
つまり、A社が自然退職などの手続きを取らず、本人からも退職の意思表示がない場合、A社では「無断欠勤中の従業員」として扱われ続ける可能性があります。
この状態を放置すると、本人が後からA社に連絡して退職手続きを進める必要が生じる可能性があります。
そもそも、最初に説明したように企業が無断欠勤者を自然退職として処理するまでにはそれなりの手間と時間がかかってしまいます。
くれぐれも、自己判断で無断欠勤だけで退職できたと勘違いしないようにご注意ください。
まとめ
今回は、無断欠勤した場合の労働者のリスクについて見てきました。
そもそも、前の会社の退職処理が終わっていない状態でも、次の会社に入社すること自体はあり得ます。
しかし、それによって前の会社との雇用関係が自動的に終了するわけではありません。
B社に入社すること自体はできる?
「前職の退職処理が終わっていないからB社に就職できない」というルールではありません。
ただしB社は、入社した従業員について健康保険・厚生年金や雇用保険の資格取得手続きを行います。
雇用保険については、B社は新たに雇った人について資格取得届を提出する必要があります。
*前職の雇用保険被保険者番号が分からなくても、前の会社名を記載して手続きできる場合があります。
しかし、ここで問題になるのが、次の4点です。
- A社の退職日がいつなのか?
- 社会保険の資格喪失日はいつなのか?
- 雇用保険の離職日はいつなのか?
- 離職理由は何なのか?
A社との退職関係を整理しないままB社へ転職してしまうと、後になってA社の退職日や社会保険、雇用保険などを整理する必要が生じる可能性があります。
「無断欠勤して会社から連絡が来なくなった=退職できた」と考えるのは危険です。
会社を辞めるのであれば、無断欠勤ではなく、正式に退職の意思を伝えて退職手続きを進めることが大切です。
特に派遣社員の場合は、派遣先で働かなくなったことと、派遣会社を退職したことは同じではありません。
派遣先との就業関係と、派遣会社との雇用関係を分けて考える必要があります。
次回は、無断欠勤したまま転職したらどうなるのか。
前職の退職日・社会保険・雇用保険を解説していきます。






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