前回、住宅手当についてお伝えしました。
ただ、住宅手当はすべての会社で支給されるわけではなく、企業が独自に設ける法定外福利厚生の一つです。
ところで、よく聞くこの「福利厚生」ですが、その仕組みや内容を正しく理解している人は意外と少ないのではないでしょうか?
今回は、普段あまり意識することのない福利厚生について見ていきましょう。
そもそも福利厚生ってなに?
そもそも「福利厚生」とは、従業員やその家族の生活を支え、働きやすい環境を整えるための制度や取り組みのことです。
例えば、次のようなものがあります。
- 健康保険や厚生年金保険
- 雇用保険や労災保険
- 住宅手当や家賃補助
- 社員食堂や食事補助
- 資格取得支援
- 慶弔見舞金
-
社宅や社員寮
などなど、ごく一部ですが福利厚生と一言でいってもさまざまなものがあります。
住宅手当については、支給条件や会社による違いなどを別の記事で詳しく解説しています。
▶️住宅手当はなぜ会社によって違う?支給対象や派遣社員の待遇を解説
▶️賃貸と持ち家はどちらが得?住宅手当・家賃補助の違いを解説
そして、福利厚生には大きく分けて2種類あります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 法定福利厚生 | 法律によって企業に負担や実施が義務づけられているもの |
| 法定外福利厚生 | 企業が独自に設けているもの |
例えば、健康保険や厚生年金保険は法定福利厚生、住宅手当や社員食堂は法定外福利厚生に該当します。
つまり、福利厚生とは、給与だけでは補えない部分を会社が支援し、従業員の生活や働きやすさを向上させるための仕組みです。
企業目線で見ていくともう少し分かりやすくなります。
企業目線では何が違う?
例えば、次のような違いがあります。
| 項目 | 法定福利厚生 | 法定外福利厚生 |
|---|---|---|
| 制度の根拠 | 法律 | 会社独自 |
| 企業の負担義務 | 法律上の義務あり | 原則として任意 |
| 内容の決定 | 法律に従う | 会社が設計 |
| 具体例 | 健康保険・厚生年金 | 住宅手当・食事補助 |
企業からすれば、法定福利厚生は法律で定められた義務であるため、自由に廃止したり、負担をなくしたりすることはできません。
一方、法定外福利厚生は、会社の経営状況や方針などに応じて、制度の導入や見直しを検討できます。
ただ、既存の制度を変更・廃止する場合にも、労働契約法などの制約があります。
労働条件の変更については、労働契約法第8条から第10条に定められています。
そもそも、なぜ企業も保険料を負担するの?
これは福利厚生という言葉の問題とは別に、社会保険制度の仕組みの問題です。
例えば、健康保険や厚生年金保険は、従業員だけでなく企業も保険料を負担する仕組みになっています。
厚生年金保険料の負担割合や納付方法については、日本年金機構の公式ページでも確認できます。
これは、病気やケガ、老後などに備えるための費用を、従業員と企業が分担する仕組みになっているためです。
そのため、企業側から見れば法的な負担義務であり、従業員側から見れば生活を支える制度という、異なる側面があります。
つまり、福利厚生は「任意のサービス」という意味ではないということになります。
あくまでも、福利厚生という分類は、企業が任意で提供しているかどうかではなく、従業員の生活や健康などを支える制度かどうかという観点から整理されています。
その中で、「法的に義務付けられているかどうか?」という点があるだけです。
派遣社員の場合はどうなる?
派遣社員の場合も、基本的な考え方は同じです。
ただし、派遣社員の場合は、雇用主である派遣会社が法定福利厚生の負担義務を負うという点が重要です。
なぜなら、派遣先の会社で働いていても、雇用契約を結んでいるのは派遣会社だからです。
1. 派遣社員にも法定福利厚生はある?
派遣社員であっても、それぞれの法律で定められた加入要件を満たせば、社会保険などに加入することになります。
例えば、次のような制度です。
| 制度 | 派遣社員の場合 |
|---|---|
| 健康保険 | 加入要件を満たせば加入 |
| 厚生年金保険 | 加入要件を満たせば加入 |
| 雇用保険 | 加入要件を満たせば加入 |
| 労災保険 | 原則として適用 |
| 介護保険 | 年齢などの要件を満たす場合に適用 |
これらの加入手続きや保険料負担は、原則として派遣会社が担います。
2. 派遣社員の場合、誰が負担する?
派遣社員の場合、法定福利厚生の負担や手続きを行うのは、原則として雇用主である派遣会社です。
例えば、次のように分かれます。
| 項目 | 主な担当 |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金 | 派遣会社 |
| 雇用保険 | 派遣会社 |
| 労災保険 | 派遣会社(保険料を負担) |
| 給与の支払い | 派遣会社 |
| 実際の仕事の指示 | 派遣先 |
ただし、安全衛生や福利厚生施設の利用など、派遣先にも法律上の責任があります。
すべてを派遣会社だけが担当するわけではありません。
3. 派遣先の正社員と福利厚生は違う?
例えば、派遣先の正社員には住宅手当や食事補助が支給されていても、派遣社員には同じ制度が適用されない場合があります。
しかし、派遣社員の待遇については、労働者派遣法に基づく同一労働同一賃金のルールがあります。
同一労働同一賃金の仕組みや、派遣社員の待遇については、同一労働同一賃金とは?でも詳しく解説しています。
派遣社員の待遇は、次のいずれかの方式で決められます。
- 派遣先均等・均衡方式
-
労使協定方式
それぞれの方式の詳しい仕組みや待遇のルールについては、厚生労働省の公式ページで確認できます。
また、食堂・休憩室・更衣室については、派遣先の通常の労働者と同様に利用できるよう、派遣先が利用機会を確保する必要があります。
一方、通勤手当などの支給条件や金額は、待遇の決定方式や支給条件によって異なる場合があります。
そのため、単純に支給金額だけを比較するのではなく、待遇の決定方式や支給条件などを確認することが大切です。
私自身も、同じ職場で同じ仕事をしていましたが、派遣社員から正社員に変わったことで、通勤手当の支給額が以前の倍ほどになった経験があります。
同じように通勤していても、雇用形態や会社の支給条件によって、受け取れる金額が変わることがあります。
このように、働く会社や雇用形態によって待遇に違いが生じることもあるため、給与だけでなく、各種手当や福利厚生にも目を向けることが大切です。
まとめ
今回は、福利厚生の仕組みや法定福利厚生と法定外福利厚生の違い、派遣社員の場合について解説しました。
福利厚生には、法律によって企業に負担や実施が義務づけられているものと、企業が独自に設けているものがあります。
企業にとっては費用がかかるものですが、人材の確保や離職防止、働きやすい環境づくりにつながるという側面もあります。
また、派遣社員の場合は、雇用主である派遣会社が担うものと、派遣先が担うものがあり、正社員と同じ制度がすべて適用されるわけではありません。
普段はあまり意識することのない福利厚生ですが、働く会社や雇用形態によって、その内容や受けられる待遇は異なります。
給与だけでなく、こうした福利厚生にも目を向けることで、働く環境をより具体的に比較できるのではないでしょうか。
次回は、企業にとって費用負担にもなる法定外福利厚生を、なぜ導入するのかについて見ていきましょう。






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