最近、気象情報を見ていると聞き慣れない言葉が並んでいませんか?
「バックウォーター現象」や「熱中症警戒アラート」など、さまざまな言葉が飛び交っています。
そして、今年も大きな水害が九州地方で発生しています。
私達が避難の可能性を考える情報には、大雨警戒レベルなど聞き逃してはいけない情報がいくつもあります。
今回は、そんな『聞き逃してはいけない気象情報の1つ「線状降水帯」』についてご紹介します。
⇒「熱中症警戒アラート」については、こちらの記事で紹介しています。
⇒「大雨警戒レベル」については、こちらの記事で紹介しています。
「線状降水帯」はどうして危険視されるの?
線状降水帯は、気象庁用語集によりこのように定義されています。
次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域。
→ただし、気象学的に厳密な定義は存在しておらず、2000年頃に日本で作られた新しい用語です。
さて、一言で「線状に見える雨雲」といっても、動きが速い物もあれば停滞する物もありますが、定義にもあるようにその位置が移動する降雨バンド(帯)は、線状降水帯ではありません。
あくまでも、「ほぼ同じ場所を通過する場合」や「停滞する場合」を意味します。
それでは、なぜ線状降水帯は危険視されるのでしょうか?
「集中豪雨」の原因になりやすい!
集中豪雨は気象庁用語集より
同じような場所で数時間にわたり強く降り、100mmから数百mmの雨量をもたらす雨。
のことです。
こちらも、気象学的な厳密な定義は存在していません。
集中豪雨のイメージとしては・・・
- 総降水量+短時間の降水量→500mm/24h+100m/3h
- ピークは数時間程度 →約3~6時間
- 空間的には比較的狭い領域→100✕100㎞²
⇒「降水量がどれくらいの威力になるのか?」については、こちらの記事で紹介しています。
それでは、線状降水帯はどの地域が多くなっているのでしょうか?
南日本が最も多い!?
線状降水帯により発生した集中豪雨の発生件数はこのようになっています。
<2019.5.12:第51回メソ気象研究会・台風研究連絡会・第6回観測システム・予測可能性研究連絡会・第12回気象庁数値モデル研究会より
- 北日本・・・25件
- 東日本・・・38件
- 西日本・・・16件
- 南日本・・・60件
つまり、線状降水帯は全国的に発生していますが、南日本が最も頻回に発生していることが分かります。
*ちなみに、「南日本=日本の南」という意味ですが、基本的に範囲は九州地方と南西諸島を指します。(もっと広い範囲を指す場合もある)
→そんな南日本に特に多い線状降水帯ですが、実は集中豪雨事例の64.4%を占めています。(特に、南日本の集中豪雨事例の原因はほとんどが線状降水帯)
それでは、甚大な被害をもたらす線状降水帯はどのようにしてできるのでしょうか?
線状降水帯はなぜ発生するの?
日本で見られる線状降水帯は、ほぼ以下の2種類しかありません。
1.破線型
例えば、関東平野などから流れ出した冷たい空気が南下し、一方で海からは東風によって暖かな空気が流れ込んだとします。
この「冷たい空気」と「暖かい空気」という異質な空気がぶつかる場所を「前線」といいますが、これが比較的狭い範囲で形成されることを「局地前線」と言います。
破線型は、この局地前線上に暖湿流が流入することで、個々の積乱雲(降水セル)が同時期に発生する
ことで引き起こされます。
2.バックビルディング形成型
ウェザーニュースでは、このように説明されています。
1.最初に風の収束や地形効果などによって積乱雲が発生。激しい雨を降らせながら上空の風に流されてゆっくりと移動する。
2.風上側のこの積乱雲が発生した場所で新たに積乱雲が発生し、またゆっくりと風下へ移動する。
3.また同じ場所で積乱雲が発生し、発達した積乱雲が流され、また同じ場所で積乱雲が発生する…、というこの流れを繰り返す
つまり、積乱雲が移動先でも繰り返し作られることで、その結果、場合によっては300kmぐらいまで線状に延びることになります。
→積乱雲から見て環境の風の上流方向に新しい積乱雲が次々と出現し、それが成長するとともに移動して線状になる。
線状降水帯の怖い点は・・・
- 積乱雲を発達させる水蒸気の供給や上昇気流を引き起こす要因の解消
- 積乱雲を移動させる上空の風の流れの変化
→どちらかがない限り、線状降水帯による激しい雨が終わることはありません。
現象が組み合わさって、大きな被害になる!
集中豪雨が続くことで、大雨警戒レベルがどんどん上がっていくことになります。
現実には、例えば雨量が増えることでバックウォーター現象などが発生し堤防が決壊するなど、様々な現象が引き起こされていくことで、被害が拡大していくことになります。
「バックウォーター現象」というのは、本来なら支流が本流に合流することで川は流れていきますよね。ところが、本流が増水してしまうとせっかく流れてきた支流の水は行き場を失うことになります。
その結果、水が少しでも低い所へどんどん流れ込み数位があっという間に上昇してしまうことになります。この現象により、堤防の決壊などが引き起こされる原因の1つとなります。
ただ、普通はそんなバックウォーター現象といった水害の仕組みなんて知らないですよね。
だからこそ、「ハザードマップ」や「大雨警戒レベル」などで、誰が見たり聞いたりしても分かるような「危険な地域を知らせるマップ」や「避難タイミングを知らせる指標」が作られました。
ですが、例えば大雨警戒レベルが発令されてからでは避難準備が不十分になるかもしれません。それでは、「線状降水帯が大きな災害を引き起こす恐れがあるもの」と知っていればどうでしょうか?
少なくとも、気象情報などで「線状降水帯」
と言う言葉が出れば、気をつけるのではないでしょうか?
最後に
線状降水帯は、「東日本では9月」・「南日本では梅雨」に発生しやすい特徴があります。
なにより、線状降水帯の走行は地形の影響を受けることから、ある程度予想することができるようです。
- 九州北西部・・・「東」・「北東」
- 四国・・・「北東」・「北」
など、地域によって走行がある程度決まっています。
これからも、聞き慣れない言葉が出てくると思いますが、「なぜ注意喚起がなされているのか?」調べて見てはいかがでしょうか?
例えば、今年の夏からは地域限定で「熱中症警戒アラート」が開始されます。このように、新しく始まる制度もあります。
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