新型コロナウイルスが流行して、初めての夏がやってきます。すでに暑い日もありますが、マスクを付けることが当たり前となりましたよね。
ただ、以前の記事でも紹介していますが、夏にマスクを付けることはかなり危険な行為になりかねません。
さて、そんなマスクを付けることも新しい生活様式の1つですが、今度は2020年7月1日から一部地域を対象として試験的に「熱中症警戒アラート」と呼ばれる取組を環境省と気象庁が開始しました。
今回は、「熱中症警戒アラートでなにが変わる?」についてご紹介します。
→「夏場とマスク」についてはこちらの記事で紹介しています。
「熱中症警戒アラート」ってなに?
熱中症警戒アラートというのは、危険が高くなる「暑熱(しょねつ)環境」が予測される場合に、国民に気付きを与え、予防行動を促す目的で実施されます。
→環境省・気象庁が新たに提供を開始する、熱中症対策に関する情報。
環境省によると、2020年7月1日~10月28日の間に関東甲信地方の1都8県で先行実施を行い、先行実施の結果を踏まえて、2021年の夏からは全国で実施予定
となっています。
~2020年7月1日からすでに先行実施されている都県~
- 東京都
- 茨城県
- 栃木県
- 群馬県
- 埼玉県
- 千葉県
- 神奈川県
- 山梨県
- 長野
それでは、そもそも熱中症警戒アラートはどういった時に発令されるのでしょうか?
熱中症警戒アラートの見方は?
熱中症警戒アラートが出されるタイミングは、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予測された「前日夕方」や「当日早朝」に発表されることになります。
また、地域によって環境が異なるため発表されるのは、都県単位になります。
アラートの発表内容は?
- 対象都県の方々に対して熱中症への注意を促す呼びかけ
- 対象都県内の観測地点毎の日最高暑さ指数(WBGT)
- 暑さ指数(WBGT)の目安
- 都県内の各観測地点の予想最高気温及び前日の最高気温観測値(5 時発表情報のみ付記)
- 熱中症予防において特に気をつけていただきたいこと
それでは、具体的にどういったタイミングで発表がなされるのでしょうか?
熱中症緊急アラートが出されるタイミングとは?
①各都県内の暑さ指数予測地点のいずれかにおいて、翌日の日「最高暑さ指数」を33℃以上と予測した日(前日)の17時頃に「第1号」を発表。
→前日 17 時頃に発表した都県については、当日の予測が 33℃未満に低下した場合においても、アラートを維持し、当日5時頃に「第2号」を発表
する。
②当日5時頃に「第2号」を発表する。
③当日の予想から日最高暑さ指数を 33℃以上と予測した都県については、当日5時頃に「第 1 号」を発表する。
つまり、段階的に発表されることになりますが、第1号が発表されれば暑さ指数が33℃を下回る予測になったとしても、第2号は出されることになります。
このように書くと、あくまでも予測であるため「それじゃあ、熱中症緊急アラートが出されても、たいしたことがない日もあるんだ!」と勘違いする人が出てくるのではないでしょうか?
それでは、そもそも「暑さ指数33℃」が、どういった状態かご存じでしょうか?
暑さ指数ってなに?
そもそも、暑さ指数で示されている33℃の「℃」は、気温のことではありません。
暑さ指数はWBGT(湿球黒球温度:Wet Bulb Globe Temperature)のことですが、これは1954年にアメリカで提案された、熱中症を予防することを目的とした指標
です。
具体的には、人体の熱収支に大きな影響を与える
- 湿度
- 日射・輻射(など)周辺の熱環境
- 気温
この3つを取り入れた指標です。
つまり、「建物が近くにあるのか?」「日よけになる物があるのか?」など、あなたがいる地点(現在地)によって大きく変わってしまいます。
そして同じ場所であっても、「あなたがなにをしているのか」によっても熱中症の危険性が変わります。
こういったことから、大前提として熱中症緊急アラートは都県単位で発令されるため、「発令されていないから大丈夫!」とはなりません。
それでは、この「暑さ指数33℃の危険性」について見ていきましょう。
→「暑さ指数」については、こちらの記事で紹介しています。
結局、「暑さ指数33℃」ってどういう状態?
そもそも、環境省の熱中症予防情報サイトでは「暑さ指数は31℃」しかありません。そして、「日常生活時」と「運動時」のWBGTの指針はこのように定められています。
→運動の有無によって、WBGTは大きく変わります。
<日常生活に関する指針>
(表1)
温度基準(WBGT) | 注意すべき生活活動の目安 | 注意事項 |
危険(31℃以上) | すべての生活活動でおこる危険性 | 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。 外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。 |
厳重警戒(28℃以上~31℃未満) | 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。 | |
警戒(25℃以上~28℃未満) | 中等度以上の生活活動でおこる危険性 | 運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。 |
注意(25℃未満) | 強い生活活動でおこる危険性 | 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。 |
つまり、暑さ指数が31℃を越えると、特に高齢者は屋内外に関わらず、命の危険があるレベルになります。
<運動に関する指針>
(表2)
気温(参考) | 暑さ指数(WBGT) | 熱中症予防運動指針 | |
35℃以上 | 31℃以上 | 運動は原則中止 | 特別の場合以外は運動を中止する。 特に子どもの場合には中止すべき。 |
31~35℃ | 28~31℃ | 厳重警戒 (激しい運動は中止) |
熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。 10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。 暑さに弱い人※は運動を軽減または中止。 |
28~31℃ | 25~28℃ | 警戒 (積極的に休憩) |
熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。 激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。 |
24~28℃ | 21~25℃ | 注意 (積極的に水分補給) |
熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。 熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。 |
24℃未満 | 21℃未満 | ほぼ安全 (適宜水分補給) |
通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。 市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。 |
このように、運動をする場合「暑さ指数が31℃以上」の環境では、基本的に運動は中止しなくてはいけません。さらに言えば、「参考気温35℃」とありますがこれもあくまでも指標でしかありません。
「参考気温」と「湿度」と「暑さ指数」
資料5-3 (厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課提出資料に、「表4.WBGT値と気温・相対湿度との関係」が掲載されています。
この表を確認すると・・・
参考気温35℃で暑さ指数が31℃の場合、湿度だけで見れば湿度55%の日(日常生活時の場合)ということになります。ただ、ここに運動が加わっているため危険な数値となる湿度も変わってきます。
また、最高気温が低いからといって、例えば気温が30℃だったとしても湿度が85%あれば運動をしていない、日常生活時であっても「暑さ指数は31℃」となります。
暑さ指数の33℃は、そもそも上限を超えている状態!
それでは、もう一度見直しますが熱中症緊急アラートだ出される「暑さ指数は33℃」です。
表1.2を確認していただくと、暑さ指数が約3℃あがるごとに危険性がワンランク上がっています。
- 日常生活に関する指針の「危険」のさらにワンランク上の注意喚起は、なんだと思いますか?
- 運動に関する指針の「運動は原則中止」のさらにワンランク上の注意喚起は、なんだと思いますか?
つまり、熱中症緊急アラートは暑さ指数33℃未満の予測になったとしても、第2号の発令は必要不可欠ということになります。
→そもそも、暑さ指数は25℃以上で「警戒レベル」です。
暑さ指数の基準が高すぎる気もしましたが、「緊急アラートは本当に緊急のアラートだ!」と私達に認識させるためには、むしろ効果的なのかもしれません。
問題は、私達が緊急アラートがでたときに「熱中症から命を守る行動をしないと!」と意識できるようにどのタイミングでなれるのかです。
実験的に始まったばかりで、まだまだこれからの新しい基準ですので本格的に始動する来年までに認識できるといいのですが・・・
熱中症緊急アラートが発令されたらどうしたらいいの?
環境省・気象庁では、「熱中症予防のための新たな情報発信「熱中症警戒アラート(試行)」について」において、このような例が示されています。
- 普段以上に屋内の気温・湿度、あるいは暑さ指数(WBGT)を確認し、エアコン等を適切に使用する。
- 不要・不急の外出を避け、涼しい屋内で過ごすようにする。
- 高齢者、障害者、子供等に対しては周囲の方々から特に声をかける。
- 空調機器が設置されていない屋内及び屋外での運動や活動等の中止・延期等を検討する
日頃から実施している熱中症予防対策を、普段以上に徹底することが求められることになります。
また、「令和2年度の熱中症予防行動」では、このような対策が示されています。
熱中症予防行動とは?
- 暑さを避ける
- マスクを適宜外す
- こまめな水分補給→「1日1.2L」と「汗を大量にかいたときは塩分」
- 健康管理
- 体力作り
例えば、マスクを付けることで熱がこもり、マスクの加湿効果により熱中症に気付きにくくなることが指摘されています。
*「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」 では、現時点(6/1時点)では、「マスクをつけて運動しているから必ず熱中症になりやすいとは言えない。」とあります。
最後に
熱中症は、全ての人に命の危険があります。
そもそも、これまで「気象庁:高温注意情報」・「環境省:暑さ指数」などにより、注意喚起は実施されてきました。
ですが、あまり浸透していないことが現状です。
実際、総務省の報告によると、2019年5月~9月の全国における熱中症による救急搬送人員の累計は71,317人でした。
2018年では、同時期で95,137人もいたことから23,820人も減少していることが分かります。
ところが、それ以前の救急搬送人員の年別推移はこのようになっています。
- 2017年・・・52,984人
- 2016年・・・50,412人
- 2015年・・・55,852人
- 2014年・・・40,048人
- 2013年・・・58,729人
つまり、2014年以外は毎年5万人以上の人が熱中症で救急搬送されていたことが分かります。そして、そもそも2018年はこれまでの約2倍も熱中症により救急搬送されていたことが分かります。
2019年は減少したとはいえ7万人を越えてしまっています。そう考えると、2020年は10万人を越える可能性ありますよね・・・
熱中症警戒アラートが発令されたときは、本当に注意が必要な時です。
2021年からは、全国で始まります。一度、気象庁が発表している熱中症警戒アラートの選択地図を確認してみて下さいね。
コメントを残す