無断欠勤したまま再就職したら保険はどうなる?雇用保険・社会保険の手続き

これまで、無断欠勤した場合、何が起こるのか?

本人と企業側の視点でそれぞれ紹介してきました。

前回の記事では、無断欠勤者の退職日について紹介しました。

では、保険はどうなるのでしょうか?

今回は、もしも、無断欠勤を放置して再就職したら保険はどうなるの?

についてお伝えします。

この記事では、会社員・派遣社員が関係する「健康保険・厚生年金・雇用保険」を中心に解説します。

 

そもそも再就職で気になる保険って何?

もしも、無断欠勤をして再就職したとします。

以前の記事でも紹介しましたが、無断欠勤が続いたからといって必ずしもすぐに会社は無断欠勤者を退職させることはできません。

それでは、無断欠勤者が結果的に以前の会社に席を残した状態で再就職してしまうと、どの保険がどんな影響を及ぼすと思いますか?

結論から言えば、

  • 前の会社との雇用関係がまだ残っているのか?
  • 新しい会社との雇用関係が始まったのか?

これらが、保険の加入・喪失手続きに影響してきます。

そして、これらの保険に該当するのが、

  1. 健康保険
  2. 厚生年金
  3. 雇用保険

この3つの保険になります。

 

なんでこの3つの保険が影響するの?

健康保険

前の会社に在籍している間は、原則として前の会社の健康保険の資格が続きます。

ところが、無断欠勤したまま新しい会社で働き始めると、

「前の会社の健康保険はいつ資格喪失したの?」
「新しい会社ではいつから健康保険に加入するの?」

という問題が出てきます。


厚生年金

厚生年金も、退職日がいつになるのかが重要になります。

前の会社との雇用関係が続いているのに、新しい会社でも厚生年金の加入要件を満たす場合、

「前の会社ではまだ在籍扱いなのに、新しい会社でも厚生年金に加入するの?」

という問題が生じます。

つまり、前の会社の退職処理がどうなっているのかが重要になります。


雇用保険

雇用保険は「失業したときの給付」と関係するため、

「前の会社を退職していない状態で、新しい会社に就職したら?」
「前の会社の雇用保険の資格が残っていたら?」
「新しい会社で雇用保険に加入できるの?」

という問題が出てきます。

さらに、後で離職することになった場合には、離職日や離職理由、失業給付にもつながってきます。

それでは、具体的にどんなことが起こる可能性があるのでしょうか?

 

もしも、前の職場が離職できてなかったら・・・

典型的なケースではこうなります。

  • A社:8月1日から無断欠勤。まだ退職扱いになっていない
  • B社:8月10日から入社。健康保険・厚生年金の加入条件を満たしている

つまり、流れを示すと・・・

A社を無断欠勤している

A社との雇用契約がまだ終了していない

B社に再就職する

B社でも社会保険・雇用保険の加入条件を満たす

A社の退職処理がされているかどうかによって手続きが変わる

この場合、健康保険・厚生年金・雇用保険の3つが影響してきます。

ここからは、上記のケースを前提として説明していきます。

*通常の転職なら、社会保険については会社同士が手続きをするので、本人が自分で健康保険・厚生年金の切り替え手続きをする場面は基本的にありません。

 

健康保険と厚生年金

今回の、無断欠勤したままB社に再就職という場合では、健康保険と厚生年金は基本的に同じ考え方となります。

日本年金機構も、従業員の採用・退職について健康保険と厚生年金をセットで手続きする仕組みにしています。退職した場合の資格喪失日は、どちらも原則として退職日の翌日です。

A社
8月1日から無断欠勤

まだ退職していない

この時点で無断欠勤だけを理由に、健康保険・厚生年金が自動的に切れるわけではない

そして・・・

B社
8月10日から入社

加入条件を満たしている

B社が健康保険・厚生年金の資格取得手続きをする

という流れです。


その後、A社の退職日が8月9日と確定したなら、

8月9日:A社退職

8月10日:A社の健康保険・厚生年金資格喪失

8月10日:B社の健康保険・厚生年金資格取得

となります。

これは、「会社が退職処理をしない限り永遠に退職できない」という意味ではありません。

例えば本人がA社に対して退職の意思表示をして退職日が確定したり、会社が就業規則などに基づいて退職日を決めたりすれば、その時点で手続きを進めることになります。

A社で退職に関する手続きが進まない可能性もあります。

それでは、B社は今後も振り回されることになるのでしょうか?

実は、こういう場合、雇用保険が影響します。

 

雇用保険

雇用保険がかかわることで、A社が放置し続けると、雇用保険のところで問題が表面化しやすくなります。

ただ、「雇用保険でA社を強制的に退職させる」という意味ではありません。

例えば、

  • A社:8月1日から無断欠勤
  • A社:退職手続きをしていない
  • B社:8月10日から入社
  • B社:雇用保険の加入条件を満たしている

とします。

B社は、採用した人(A社の無断欠勤者)について雇用保険の資格取得届を提出します。

原則として、雇用した日の翌月10日までが提出期限です。

ところがハローワークで確認すると、

「この人、A社の雇用保険がまだ残っています」

となる可能性があります。


ここまでを整理すると・・・

無断欠勤したままA社の退職処理が行われていない状態で、B社に再就職すると、雇用保険の手続きで問題が表面化する可能性があります。

B社が雇用保険の資格取得手続きを行った際、A社の雇用保険資格がまだ残っていることが分かると、A社とB社の資格期間が重複することになります。

雇用保険は、原則として2社で同時に加入することができないため、ハローワークでA社の離職日とB社の資格取得日について整理することになります。

ハローワーク「被保険者に関するQ&A」

ただし、これはあくまで雇用保険上の処理です。

ハローワークで雇用保険の資格関係が整理されたからといって、それだけでA社との実際の雇用関係や退職日が決まるわけではありません。

A社との雇用関係が実際に終了している場合には、その退職日をもとに、健康保険・厚生年金についても必要な手続きが行われます。

つまり・・・

「雇用保険の重複が発覚する」

「ハローワークで雇用保険の資格関係を整理する」

「A社との雇用関係がいつ終了したのかを確認する」

「その退職日をもとに、健康保険・厚生年金についても必要な手続きを行う」

というイメージです。

なお、雇用保険上の資格取得日・喪失日の調整が、そのまま健康保険や厚生年金の資格取得日・喪失日を変更するわけではありません。

 

派遣社員の場合はどうなる?

ここまで、A社に直接雇用されている会社員が、無断欠勤したままB社へ再就職したケースについて説明しました。

では、派遣社員の場合はどうなるのでしょうか?

派遣社員の場合、正社員の転職とは少し事情が違います。

例えば、

  • A社:派遣元
  • C社:派遣先
  • B社:新しく働き始めた会社

とします。

派遣社員は、実際に働いている派遣先のC社ではなく、基本的には派遣元のA社と雇用契約を結んでいます。

そのため、

C社に無断欠勤する

派遣先C社には行かなくなる

それだけでA社との雇用関係が終了するわけではない

その状態でB社に就職する

A社との雇用関係が残っていれば、雇用保険などの手続きで問題になる可能性がある

ということがあります。

つまり、派遣社員の場合は、「派遣先に行っていない」=「派遣元を退職した」とは限らないという点に注意が必要です。


例えば、派遣先C社を無断欠勤したまま、派遣元A社から正式に退職扱いになっていない状態で、B社に就職したとします。

B社が雇用保険の資格取得手続きを行った際に、A社の雇用保険資格が残っていることが分かれば、正社員の場合と同じように、前職との資格関係をハローワークで整理する必要が出てくる可能性があります。

実際にハローワークの案内でも、登録型派遣労働者について雇用保険の手続きを行う際には、派遣元管理台帳などを確認することになっています。

 

そのため、派遣社員の場合も、

派遣先に行かなくなった

派遣元との雇用関係はどうなっているのか?

派遣元を退職したのか?

新しい会社で働き始めた場合、雇用保険などの資格関係はどうなるのか?

という順番で考える必要があります。

なお、派遣社員の場合でも、雇用保険上の資格関係を整理したことによって、派遣元との実際の雇用関係や退職日が自動的に決まるわけではありません。

ここは、先ほど説明した正社員の場合と同じです。

派遣先を無断欠勤して、そのまま別の会社で働き始める場合も、派遣元との雇用関係を整理しておくことが重要です。

 

まとめ

今回の記事では、無断欠勤したまま以前の会社を退職せず、別の会社へ再就職した場合、健康保険・厚生年金・雇用保険がどうなるのかについて紹介しました。

一見すると、

「A社が放置する」

「B社が手続きをする」

「ハローワークが雇用保険の資格関係を整理する」

という流れに見えるため、「では、無断欠勤した本人は何もしなくてもいいの?」と思うかもしれません。

しかし、そういうわけではありません。


無断欠勤した本人も、A社との雇用関係がどうなっているのかを整理する必要があります。

例えば、本人が退職を希望しているのであれば、A社に退職の意思を伝えるなど、退職に必要な手続きを進める必要があります。

A社が離職に関する手続きを行わない場合には、本人がハローワークへ相談することもできます。

一方で、A社にも、実際に離職した場合には雇用保険の資格喪失などの手続きを行う必要があります。B社も、入社した従業員について雇用保険や社会保険の資格取得手続きを行います。

そして、A社とB社の雇用保険の資格期間が重複していることが分かった場合には、ハローワークで資格関係を整理することになります。

雇用保険では、前職の離職年月日とB社の資格取得年月日に重複がある場合、原則として前職の離職年月日を基準にB社の資格取得年月日を変更して処理します。

ただし、これは雇用保険上の処理であり、事業所同士の雇用関係や社会保険の資格取得・喪失を直接変更するものではありません。

つまり、無断欠勤したまま再就職すると、本人だけでなく、A社・B社それぞれに手続きが発生し、場合によってはハローワークで資格関係を整理する必要が出てくる」ということです。

無断欠勤したまま別の会社へ再就職することは、本人にとっても、新しい会社にとっても、手続きが複雑になる可能性があります。

そのため、退職するのであれば、できるだけA社との雇用関係をきちんと整理してから再就職することが大切です。

では、もし無断欠勤を続けた結果、A社から退職扱いや解雇とされた場合、「退職理由」はどうなるのでしょうか?

次回は、無断欠勤者の退職理由について紹介します。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

元派遣社員としての経験や実際の給与・労働環境をもとに、派遣・正社員・労働制度についてわかりやすく解説しています。制度の仕組みだけでなく、実際に働く人の目線で役立つ情報発信を心がけています。