これまで、7回にわたって「無断欠勤したら?」というシリーズの中で「解雇」についても触れてきました。
退職するにしても、自己都合なのか?会社都合なのか?
退職と一言でいってもさまざまです。
とはいえ、解雇されたからといって、横領や情報漏えいなど、重大な問題を起こした人ばかりではありません。
例えば、仕事が辛くて行けなくなってしまい連絡もできずにそのまま無断欠勤をしてしまった場合も、解雇になる可能性があります。
今回は、そんな労働者にとって決して他人事ではない「企業から解雇された場合どういった影響が出るのか?」について見ていきましょう。
そもそも解雇ってなに?
例えば、
- 仕事上の能力や勤務態度などを理由とする 普通解雇
- 重大な規律違反などを理由とする 懲戒解雇
- 会社の経営悪化などによる人員整理を目的とした 整理解雇
などがあります。
ただし、日本では会社が自由に「明日から来なくていい」と、できるわけではありません。
解雇には法律上の制限があり、合理的な理由や社会通念上の相当性が必要とされています。
例えば、私も以前の職場では、カッターを使うなど、怪我のリスクがある仕事をしていました。
実際に、何度かカッターで指を大きく切ってしまい、仕事がストップしたこともあります。
それでも、怪我をしたことを理由に、すぐに解雇されるということにはなりませんでした。
私の場合は、最終的に自分で退職したため、自己都合退職となりました。
さて、すでに上げたように解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3つがあります。
解雇の説明の前に重要なことなので一つだけ。
必ずしも、「解雇=悪いことをした人への処分」ではないことを付け加えておきます。
その理由は、最後にお伝えします。
① 普通解雇
労働者の能力不足や勤務態度、勤務状況などを理由として行われる解雇です。
例えば、
- 仕事に必要な能力が不足している
- 勤務態度に問題がある
- 正当な理由のない欠勤や遅刻を繰り返す
- 業務上必要な指示に従わない
- その他、労働契約を継続することが難しい事情がある
といったケースがあります。
ただし、「会社がそう思ったから解雇できる」というわけではありません。
労働契約法16条では、解雇について、
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効
とされています。
→厚生労働省|労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)
つまり、普通解雇でも会社側には相応の理由が求められます。
② 懲戒解雇
こちらは、労働者が重大な規律違反などをした場合に、懲戒処分として行われる解雇です。
例えば、
- 重大な業務上のルール違反
- 会社の金銭を横領した
- 重大な情報を故意に外部へ漏らした
- 長期間にわたって無断欠勤を繰り返した
- 重大な犯罪行為を行った
などが考えられます。
普通解雇と違い、「懲戒処分の一種としての解雇」という点がポイントです。
ただし、こちらも「重大な違反があれば何でも懲戒解雇にできる」というわけではありません。
就業規則などに定められた懲戒事由に該当することや、行為の内容・程度などから見て、その処分が相当であることなどが問題になります。
③ 整理解雇
普通解雇・懲戒解雇とは少し性質が違います。
整理解雇は、会社の経営上の理由によって、人員を削減するために行われる解雇です。
例えば、
- 会社の経営が悪化した
- 赤字が続いている
- 事業を縮小することになった
- 部門そのものを廃止することになった
といったケースです。
ここでは、労働者本人に重大な問題があるわけではありません。
そのため、整理解雇については、一般に次のような事情が重要になります。
- 人員削減の必要性があるか
- 解雇を回避するための努力をしたか
- 誰を解雇するかの基準が合理的か
- 労働者への説明・協議などの手続きが適切か
いわゆる「整理解雇の4要素」として説明されることが多い部分です。
「無断欠勤」はどの解雇になる?
実は、無断欠勤=必ず懲戒解雇、というわけではありません。
例えば、
仕事がつらくなって無断欠勤してしまった
↓
会社から連絡が来ても応答しない
↓
長期間にわたって欠勤が続く
↓
就業規則などに基づいて解雇される
というケースなら、事情によっては普通解雇や懲戒解雇が問題になる可能性があります。
逆に、1日無断欠勤しただけで、直ちに「懲戒解雇」という単純な話でもありません。
欠勤した期間、理由、過去の勤務状況、会社の就業規則、本人への注意・指導など、さまざまな事情を考える必要があります。
つまり、無断欠勤が続いた場合、事情によっては普通解雇や懲戒解雇につながる可能性があることを覚えておくといいでしょう。
それでは、そもそも「解雇」になるとなにが問題になるのでしょうか?
派遣社員の場合はどうなる?
ここまで、一般的な会社員をイメージして「解雇」について説明してきました。
では、派遣社員の場合はどうでしょうか?
派遣社員の無断欠勤については、「派遣社員が無断欠勤するとどうなる?給料・契約更新を解説」でも詳しく紹介しています。
派遣社員の場合、雇用契約を結んでいるのは、基本的に派遣先ではなく派遣元(派遣会社)です。
そのため、
派遣先から「もう来なくていい」と言われた
↓
派遣社員も解雇された
という単純な話ではありません。
派遣先と派遣元との間にある「労働者派遣契約」と、派遣元と派遣社員との間にある「労働契約」は別のものだからです。
実際、厚生労働省も、派遣先と派遣元との派遣契約が途中で解除されたとしても、それだけで派遣元が派遣社員を直ちに解雇できるわけではないと説明しています。
特に、契約期間の定めがある派遣社員について、派遣元が契約期間の途中で解雇する場合には、原則として「やむを得ない事由」が必要です。
つまり、
「派遣先との契約が終わった=派遣社員も解雇」
とは限りません。
派遣先での仕事がなくなった場合でも、それだけで派遣元との雇用契約が終了するわけではありません。
そのため、派遣社員の方が「派遣先との契約が終了したので、あなたも今日で解雇です」と言われた場合には、派遣元との雇用契約がどうなっているのかを確認することが重要です。
詳しくは、厚生労働省|労働者派遣事業に係る法令・指針・疑義応答集・関連情報等でも説明されています。
解雇される不都合な理由とは?
1.転職活動で理由を説明する必要が出てくる
解雇された場合、転職先から退職理由を聞かれる可能性があります。
特に、
- 懲戒解雇
- 重大な勤務態度の問題
- 無断欠勤などを理由とした解雇
などの場合には、単純な自己都合退職とは違って、説明に悩むことがあります。
ただし、「解雇された=転職できない」ということではありません。
2. 失業給付の扱いに影響する場合がある
ここは前回の「離職理由」の記事ともつながります。
解雇の場合、雇用保険上、会社都合による離職として扱われるケースがあります。
一方で、重大な責任や本人の責めに帰すべき理由による解雇の場合は、一般的な会社都合の解雇とは異なる扱いになることがあります。
つまり、
「解雇された=すぐに失業給付を受け取れる」
という単純な話ではありません。
実際には、離職理由や雇用保険の加入期間などによって、受給資格や給付日数、給付制限などの扱いが変わります。
3. 退職金に影響することがある
これは会社の退職金制度によります。
特に就業規則や退職金規程で、
「懲戒解雇の場合は退職金の全部または一部を支給しない」
などと定められている場合があります。
そのため、懲戒解雇では退職金への影響も確認する必要があります。
他にも、「会社を辞めさせられた」という事実そのものが、解雇に伴って生じる心理的な負担として残ることもあります。
このように、解雇によって転職や失業中、就業中であってもなにかしらの不利益が出る可能性があります。
ただし、整理解雇の場合は、労働者が何かしたわけではありません。
整理解雇のような会社側の事情による離職は、雇用保険上「特定受給資格者」に該当する可能性があります。
→特定受給資格者については、次回紹介します。
その場合、一般的な自己都合退職とは、基本手当の受給資格や給付日数などで扱いが異なることがあります。
つまり、「整理解雇=労働者にとって悪いことしかない」
というわけではありません。
3つの解雇を原因別に分けるとこのようになります。
| 種類 | どんな解雇? | 主な理由・きっかけ |
|---|---|---|
| 普通解雇 | 労働者の能力・勤務状況などを理由とする解雇 | 能力不足、勤務態度、無断欠勤など |
| 懲戒解雇 | 重大なルール違反などに対する懲戒処分としての解雇 | 横領、重大な規律違反、重大な無断欠勤など |
| 整理解雇 | 会社の経営上の事情による解雇 | 経営悪化、事業縮小、人員削減など |
このように、普通解雇や懲戒解雇と整理解雇では、解雇に至る理由や性質が異なります。
特に整理解雇は、労働者本人に問題があるからではなく、会社の経営上の事情によって行われる点が大きな特徴です。
そのため、整理解雇は他の解雇とは扱いが異なります。
整理解雇は他の解雇と違うの?
もちろん、整理解雇も「解雇」であることに変わりありません。
ただし、普通解雇や懲戒解雇とは大きく異なる点があります。
普通解雇や懲戒解雇は、基本的に労働者側の事情が問題になります。
一方、整理解雇は、会社の経営状況の悪化や事業縮小など、会社側の事情によって行われる解雇です。
リストラの一環として、整理解雇が行われることもあります。
そのため、整理解雇では「労働者が何か問題を起こしたから解雇された」というわけではありません。
また、雇用保険についても、整理解雇など会社側の事情による離職は、一定の要件を満たせば「特定受給資格者」に該当する場合があります。
このように、同じ「解雇」でも、解雇された理由によって、その後の扱いが変わる場合があります。
まとめ
そもそも、「解雇を告げられた=その場で会社を辞めなければならない」、というわけではありません。
無断欠勤の場合の「退職日」については、「無断欠勤の退職日はいつ?退職扱い・自然退職・解雇の違いを解説」でも詳しく紹介しています。
原則として、会社が労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告する必要があります。
30日前に予告しない場合は、原則として30日分以上の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う必要があります。
例えば、会社から
「今日、解雇します」
と言われた場合、原則として会社は30日前の予告をするか、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。
また、
「20日後に解雇します」
という場合には、30日に10日足りないため、原則として10日分の平均賃金に相当する解雇予告手当が必要になります。
ただし、解雇予告手当を支払えば、どんな解雇でも自由にできるというわけではありません。
「解雇が有効かどうか」と「解雇予告の手続きが適切かどうか」は別の問題です。
解雇には、客観的に合理的な理由や社会通念上の相当性が必要になります。
また、解雇予告の手続きが適切だからといって、その解雇自体が有効になるわけでもありません。
なお、労働者の責に帰すべき事由に基づく解雇など、一定の場合には解雇予告や解雇予告手当が不要となることがあります。
ただし、労働者の責に帰すべき事由を理由として即時解雇する場合には、原則として所轄労働基準監督署長の認定が必要です。
つまり、「解雇された=その場で退職」という単純な話ではありません。
そして、同じ「解雇」でも、普通解雇・懲戒解雇・整理解雇では、その理由や性質が大きく異なります。
次回は、今回も登場した「特定受給資格者」について、自己都合退職との違いも含めて詳しく見ていきます。






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