前回、防災の観点からポケベルの電波を使った取組みについてご紹介しました。
ただ、防災をしようと思えばどうして多額の資金が必要になります。
今回は、そんな防災・減災の強い味方!期間限定で現在実施されている「緊急防災・減災事業」についてご紹介します。
緊急防災・減災事業ってなに?
そもそも災害に強い街にしようと思えば、冒頭でお伝えしたように多額の資金が必要になりますよね。
とはいえ、よっぽどお金持ちの納税者ばかりが暮らす街ならともかく、そんな費用負担を普通は地方自治体だけでまかえるはずがありません。
つまり、「緊急防災・減災事業」は予算の少ない自治体であっても防災に取り組めるようにするための事業です。
そして、東日本大震災等を教訓として、全国的に緊急に実施する必要が高く、即効性のある防災・減災のための地方単独事業のことです。
地方債
緊急防災・減災事業「債」というのは、防災対策にかかる費用が対象になっている地方債です。
「債」というのは、ズバリ借金のことです。
つまり、地方債というのは「自治体の借金」ということ。一般家庭で例えると、住宅ローンのようなものです。
これだけだと、「つまりお金のない自治体が、防災・減災のためにさらにお金を借りるだけ?」って考えてしまいますよね。
ですが、この事業は国が実施している事業ですので大きな価値があります。
市の負担は30%!?
もちろん、事業費を全額補償してもらえるわけではありません。
とはいえ、地方債充統率100%で、地方交付税交付金算入率が70%もあります。つまり、実質市の負担は30%で済むことになります。
つまり、「最初は100%借金でまかなうことができるため、かかった費用の30%はあとで返してね!」ということです。
ちなみに、「地方交付税交付金」とは、地方自治体の収入の格差を少なくするために交付される資金のこと。つまり、国税の一部を財政基盤の弱い自治体に配分するためのものです。
個人的には、再分配するはずの資金を防災・減災に充ててしまうため、事業を利用した自治体としなかった自治体との差。
そもそも、「本来分配されるはずだった自治体へのお金が減ってしまうのでは?」という疑問が残ります。
とはいえ、防災・減災は必要な事業であることは明らかなことはいうまでもありません。
幅広い資金の使い方ができる!?
- 大規模災害時の防災・減災のために必要な施設整備
- 大規模災害に迅速に対応するための情報網の構築
- 津波対策の観点から移転が必要と位置付けられた公共施設の移転
- 消防広域化事業等
- 地域防災計画上に定められた公共施設等の耐震化
これらが対象事業となります。
1.大規模震災時の防災・減災対策のために必要な施設の整備
- 防災拠点施設(地方防災センター等)
- 防災資機材等備蓄施設・拠点避難地
- 非常用電源
- 津波避難タワー・活動火山対策避難施設等
- 避難路・避難階段
- 指定緊急避難場所や指定避難場所において防災機能を強化するための施設
- 指定避難所における避難者の生活環境の改善のための施設(空調・Wi-Fi・バリアフリー化に係る施設等)
- 緊急消防援助隊の救助活動拠点施設
- 緊急消防援助隊の機能強化を図るための車両資機材等
- 消防団の機能強化を図るための施設・設備
- 消防水利施設
- 初期消火機材
2.大規模災害に迅速に対応するための情報網の構築
- 防災行政無線のデジタル化
- 全国瞬時警報システム(J-ALERT)の新型受信機の導入・情報伝達手段の多様化
- 高機能消防指令センター(デジタル化に伴い整備するもの等)
- 防災情報システム・衛星通信ネットワークシステム等、大規模災害時の情報伝達のために必要な通信施設
- 災害時オペレーションシステム
3.津波対策の観点から移転が必要と位置付けられた公共施設等の移設
- 津波浸水想定区域内にあり、地域防災計画上、必要な防災対策の拠点となる施設や、災害時に援護が必要となる者のための施設の移転
4.消防広域化事業等
- 広域消防運営計画または消防署所等の再編整備計画に基づき必要となる消防署所等の増改築等
- 上記計画に基づき機能強化を図る消防車両等の整備
- 統合される消防本部を消防署所等として有効活用するために必要となる改築
- 消防機関間の柔軟な連携・協力(共同化)に伴う高機能消防指令センターの整備
5.地域防災計画上に定められた公共施設・公用施設の耐震化
- 指定避難所とされている公共施設及び公用施設
- 災害時に災害対策の拠点となる公共施設及び公用施設
- 不特定多数の者が利用する公共施設
- 社会福祉事業の用に供ずる公共施設
- 幼稚園等
*消防署所等については、耐震性が十分でないことから、早急に耐震化を行う必要があり全部改築することがやむを得ないと認められるものについても対象。
さて、対象事業の中身をさらに細かく見ていきました。
一つ言えることは、「無関係な自治体は一つもない!」と言うことです。
*ちなみに、返還が必要な3割分の原資は「緊急防災・減災事業債」の起債後に集めた寄付やふるさと納税で充当することもできます。
それでは、具体的にどういった使い方になるのでしょうか?
1億円を使って設備投資をした場合
市町村が、例えば緊急消防援助隊に登録する海水利用型消防水利システム(スーパーボンバー)を1億円で整備するとします。
海水利用型消防水利システムとは、「大型動力ポンプ付消防自動車」と「コンテナ式ホース延長車」の2台1セットで構成された車両のことです。
最大50mの落差の水源から送水することができ、また約2,000m先の遠距離へ送水することができるため、大規模災害など大量の消火用水が必要となる火災でも対処することができます。
償還額(1億円)
- 1年目→2,000万円
- 2年目→2,000万円
- 3年目→2,000万円
- 4年目→2,000万円
- 5年目→2,000万円
地方交付税措置額(0.7億円)
- 1年目→1,400万円
- 2年目→1,400万円
- 3年目→1,400万円
- 4年目→1,400万円
- 5年目→1,400万円
つまり、7割は地方交付税交付税で措置され(賄われる)ため・・・
実質的な市の負担額
- 1年目→2,000万円-1,400万円=600万円
- 2年目→2,000万円-1,400万円=600万円
- 3年目→2,000万円-1,400万円=600万円
- 4年目→2,000万円-1,400万円=600万円
- 5年目→2,000万円-1,400万円=600万円
つまり、600万円が5年分で3,000万円の負担ですむことになります。
一部事務組合等の場合
「一部事務組合」という複数の「普通地方公共団体」や「特別区」が行政サービスの一部を共同で行なうことを目的として設置する組織を作ることができます。
例えば、A市・B市・C市・D市で構成された一部事務組合等を組織した場合、先程と同じように海水利用型消防水利システムを1億円で共同で整備したとします。
3,000万円を4つの市で分担することで、一つの市にかかる費用を大幅に減らすことができます。
最後に
当然、津波の被害が予想される地域はそれだけ予算が必要になります。地方交付税はそもそもが分配金です。必要な場所により多くの資金が必要なことはいうまでもありません。
緊急防災・減災事業にどれだけの予算が組まれているか分かりませんが、すくなくとも全ての自治体をまかなうことは難しいでしょう。
そのため、「申請してきた自治体に対して」という対象にするのも仕方がないのかもしれません。
ただ、防災・減災に取り組んでいる自治体とそうでない自治体とで、今後対策に雲泥の差が出ることは「自明の理」ではないでしょうか。
あなたの自治体は、防災・減災が進んでいますか?
緊急防災・減災事業は、平成29年度~平成32年度までの事業です。タイムリミットは迫っています。
参考
消防庁消防・救急課
→https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/290907_jimurenraku.pdf
みんな元気になるトイレ
→http://corp.tasukeaijapan.jp/toilet/about/
松山市:海水利用型消防水利システム概要
→https://www.city.matsuyama.ehime.jp/smph/kurashi/bosai/sbbousai/sboshirase/kaisuiriyou.html
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