皆さんは、「特殊詐欺」と聞くと「無視すればいい!」
そんな風に思っていませんか?
確かに、基本的には無視すればよかったはずでした。ですが、すでにその常識が覆ってしまった事件が発生しています。
今回は、「少額訴訟を起こされれば、詐欺であっても合法になる!?」についてご紹介します。
なにが起こっているの?
例えば、偽の裁判所からハガキが届いた場合は、無視しても問題ありません。
ところが、本物の裁判所から封筒が届いた場合、無視してしまうと合法的に各請求された金額の支払い義務が発生しています。
つまり、嘘の請求にも関わらず無視したことで被害がでることになります。
まるで、特殊詐欺の集団と裁判所が手を組んだかのような犯罪に見えますが、これは「少額訴訟」という制度が悪用された結果引き起こされています。
少額訴訟ってなに?
少額訴訟の特徴は?
- 1回の期日(1日)で、審理を終えて判決がなされる。
- 60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限り利用できる。
- 申し立てから約1ヶ月で判決が出る。
→平成10年の民事訴訟法改正で、簡易裁判所に認められた特別な訴訟手続きです。
最大の問題点は、そもそもその訴訟が「詐欺目的かどうか?」というチェック機能がないことです。残念ながら、嘘の訴訟が起こされることをまったく想定していなかったことが見てとれます。
ちなみに、少額訴訟を利用できるのは同じ簡易裁判所で1年に10回までです。ですが、組織ぐるみで悪用された場合、被害者はどんどん増えることになります。
少額訴訟はどんな流れで進むの?
今回、発生している特殊詐欺の例から考えてみましょう。
少額訴訟の流れ
❶原告(詐欺師)が、嘘の訴状を裁判所に提出。
➋裁判所が受理すれば被告(詐欺の被害者になる人)に訴状を送付。
❸被告にされた人は、答弁書を裁判所に送付しなくてはいけない。
❹被告から答弁書を受理した裁判所が、事情聴取などを事前に行いその後、指定の期日に裁判が行なわれる。
さて、裁判所から身に覚えのない請求がきても、これまでマスコミなどで「無視」することが連日のように報道されてきました。
そこで、「この封書も詐欺だ!」と考えて無視したとします。
訴訟内容は確かに詐欺ですが、今回の特殊詐欺は本物の裁判所からの封書でした。
つまり、「❸被告にされた人は、答弁書を裁判所に送付」という義務がありますが、なにもせずに無視すれば、そのまま原告(詐欺師)が合法的にお金を請求することができることになります。
少額訴訟はそんな簡単に利用できてしまうの?
そもそも、少額訴訟は一般市民が主な利用者として想定されています。
裁判費用がほとんどかからない!?
①収入印紙代
- 請求金額:10万円まで→1,000円
- 〃 :10万円~20万円→2,000円
- 〃 :20万円~30万円→3,000円
- 〃 :30万円~40万円→4,000円
- 〃 :40万円~50万円→5,000円
- 〃 :50万円~60万円→6,000円
②郵便切手代
- 3,000円~5,000円程。
あとは、裁判所へ行くときの交通費や弁護士費用ということになります。
もしも、被告(被害に遭った人)が答弁書を裁判所に送付して裁判所に行くことになったとしても、原告側(詐欺師)は逃げることが予想されます。
つまり、原告側からすれば、1人につき1万円程の出費で訴訟を起こすことができ、「無視してもらえることで合法的にお金を手に入れることができる」ことになります。
書類が簡単・・・
書き込み式の定型訴状を簡易相談窓口に備え置かれています。
記入例は、ネットで調べれば簡単に出てくるため、誰でも簡単に少額訴訟を起こすことができてしまいます。
封筒の中身は?
少額訴訟の訴状は、差出人として裁判所名を表示した封筒が届きます。
- 裁判所に出頭を求める期日呼出状
- 少額訴状手続きについての説明書
- 書込み式になっている答弁書用紙
→封書は、特別送達(書留郵便の一種)で送られてきます。
「特別送達」ってなに?
そもそも、特別送達とは公的機関(裁判・公正取引委員会・特許審判など)が確実に文書を送達するために、送った相手に届いたことを証明するために使われる郵便物です。
つまり、書類自体はもちろん本物です。
裏面には、所定の「郵便送達報告署用紙」が貼り付けられています。逆に言えば、本当に重要な書類はハガキなどではなく、このように確実に送り先に届く方法が利用されます。
→特別送達は、配達員が郵便物を直接渡す方法で手渡されるため、このように直接手渡される書類は重要書類になるため、安易に「無視」を選択しないようにご注意下さい。
このように、現在は詐欺の請求と本物の書類を組み合わしている場合があるため、無視して良いかどうかどうかの見分けが付きにくくなっています。
(請求は偽物でも、手続きが本物の場合がある=法的な効力がある)
最後に
今回は、書類が本物だった場合を紹介しましたが、偽物だった場合も注意しなくてはいけない点があります。
書類じたいは偽物のため、本来ならこれまで通り無視していいのですが、本物か見分けがつかないこともあります。
そんなとき、書類に記載されている電話番号に連絡をしてしまうと、詐欺集団につながってしまう危険があります。つまり、必ず自分で連絡先を調べる必要があります。
このように、特殊詐欺はどんどん巧妙化しています。そして、とうとう裁判所という国家権力まで当たり前のように悪用するまでに至っています。
ただ、今回の件は少額訴訟にチェック機能が無いことがもっとも大きな問題です。今のままでは、裁判所が特殊詐欺を斡旋している状態になってしまいます。
いつ法整備が行なわれるのか分かりませんが、被害者は確実に増え続けていくでしょう。
ないとは思いますが、仮にあなたが同じことをしようとしたとします。
ですが、既に犯罪として認識されているため当然、対策がおこなわれます。
ところで、特殊詐欺は重罪になりやすいですよね。
しかも、今回は、裁判所という国家権力の悪用(乱用)ですので今後の法改正により、どれほどの罪に問われるか想像もできません。
今後の特殊詐欺には、無視だけでは対策が不十分な場合があるため、くれぐれもご注意下さい。
困った時は110番。
または、「警察相談窓口:#9110」へ!
警察相談窓口:#9110については、次回ご紹介します。
参考
裁判所
→http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_minzi/minzi_04_02_02/index.html
弁護士費用保険の教科書
→https://bengoshihoken-mikata.jp/archives/8809
裁判所からの特別送達
→https://cosmetic-tsuruya.com/juutakuro-nentai/tokubetusouta.html
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