教育改革 英語試験は民間資格に・・・~今後の予想も踏まえて説明~

 

2020年度から、センター試験は廃止され「大学入学共通テスト」が始まります。

そのなかでも、英語が「民間資格」にとって変わることが決まりました。

簡単に言えば、民間資格の結果がそのまま受験の英語の点数になります。

「複数回受けられるので、受験生にとってはチャンスが増える!」

と思ったら大間違いです。

今回は、英語の民間資格による弊害について紹介します。

 

大学入学共通テストってなに?

センター試験では、知識や技能が求められ皆さんご存じのマーク式のテストでした。

ですが、グローバル化により「思考力・判断力・表現力」が求められるようになりました。「指示待ち人間」なんて問題としてよく取り沙汰されますよね。

なるほど。確かにこれでは世界どころか日本でも通用しないでしょう。

そこで、2020年から教育改革が行なわれることになりました。

→小学校から高校での新しい学習要件についてはこちらの記事で紹介しています。

2020年教育改革 ~英語教育はどうなっていく?~

この教育改革にともない、大学受験も変更されることになりました。

英語の場合は、「見る・聞く・話す・書く」が重要ということになりました。

センター試験では「読む・聞く」の2技能だけの評価にとどまっているとされ、今後は教育改革で培われた「話す・書く」も試験で試させるそうです。

 

センター試験の特徴は?

センター試験の特徴は、なんといっても公平・中立に重きを置かれました。

自由記述にすれば採点者によって点数が変ってしまう可能性もあります。

そのため、マークシート式でおこなってきました。ただ、そうまでしても毎回「正誤なし」として点数がつかないなど多くの問題が発生していました。

 

これから始まる共通テストでは・・・

①国語・数学の自由記述問題が行なわれる。

→自由記述になるということは、設問の文章量が大幅に変わるので、速読・読解力が強い受験生ほど強くなります。時間的な余裕がかなり厳しくなるでしょう。それ以前に、誰がどういった基準で採点するのかよく分りません1点2点で合否が分かれるので、かなりシビアな基準があるはずなんですが・・・

②推薦やAO入試を受験する受験生も大学入学共通テストを受験する必要があります。

→これまで、推薦入試の場合は面接と小論文で合格できていた受験生も例外なく全ての受験生が受験しなくてはいけなくなります。

③英語の「話す・聞く」力も試されるようになります。

そして、本題の英語の試験です。

「話す・聞く」試験を問うためには毎年50万人以上とも言われる受験生にたいしてどうやって行なうのか?

時間的にも採点方法にもどんな画期的な方法でするのかと思っていたのですが・・・

3dman_eu / Pixabay

民間資格試験にぶん投げられました。

 

民間資格試験のなにが悪いの?

①TOEIC・TOEFUL・英検(従来型の英検は対象外)など認められた7実施主体8種類どれを受けてもいいということになりました。

②しかも、高校3年生の4月から12月の間に受験した2回までの英語外部検定試験のスコアのみが成績の対象になります。

③極端な話し、小学校生の時から何回もうけて試験慣れをすることもできます。

まさしく、試験対策が長期間にわたってできてしまいます。

これだけ聞けば、何回でも受けれるなら「ラッキー!」と思うかもしれませんね・・・

ですが、じつはかなり狭き門になっています。

まずは、それぞれの検定試験について確認してみましょう・・・

 

実施団体:【公益財団法人 日本英語検定協会】

①英検(1級~3級)

「成績提供システム」を利用する入試&利用しない入試どちらの入試でも利用できます。

英検とは、「実用英語技能検定」のことです。英語圏における社会生活(日常・アカデミック・ビジネス)に必要な英語を理解し、使うことができるかを評価します。

*アカデミックとは、「伝統や堅実」という意味で基礎的(授業で使われる)英語という意味です。

1.S-Interview
【1次:RLW】紙(PBT)→Reading・Listening・Writing 「読む」・「聞く」・「書く」
【2次: S 】対面式  →Speaking 「話す」

*PBT=Paper Based Test 紙でおこなう試験。筆記試験のことです。

  • 2日間(2次は全員が受験可能)
  • 年2回実施されて、約400会場。
  • 対象は、高3生と既卒者(高等教育課程修了者)

→1級~3級まで受けることができます。

2.1day
【RLW】紙(PBT)
【 S 】録音式

  • 1日で終了する。
  • 年2回実施され全都道府県で実施される。
  • 対象は、高3生と既卒者

→準1級~3級まで受けることができます。

3.英検CBT
【RLW】コンピュータ(CBT)
【 S 】録音式

*CBT:Computer Based Test コンピューターでおこなう試験

  • 4技能全てがCBTで行なわれる。
  • 1日で終了する。
  • 毎月行なわれますが、大都市19会場のみ。(今後、拡大予定)
  • 対象学年の規制はなく誰でも受けることができる。

→2級~3級まで受けることができます。

このように、「英検」とひと言でいっても受講する方法によって対象学年や試験会場・申し込める級も異なります。

料金は・・・

3級:5,800円 / 準2級:6,900円 / 2級:7,500円 / 準1級:9,800円 / 1級:16,500円

②TEAP(TEAP/TEAP CBT)

1.TEAP

EFL環境の大学で行なわれている授業等で行う言語活動において英語を理解したり、考えを伝えたりすることができるかを評価します。

*EFLとは、英語を母国語としていない人のための“第二外国語としての英語”や英語教育を指します。

  • Reading test  : マークシートによる択一選択方式(時間:70分)
  •  Listening test : マークシートによる択一選択方式(時間:約50分)
  •  Writing test   : 解答用紙への記入(時間:70分)
  •  Speaking test  : 1対1の面接方式(時間:約10分)

*4技能パターン(RLWS)→15,000円
*2技能パターン(RL)  →6,000円

→受験する大学の要件に合わせて受験することができる。

2.TEAP CBT

ICTを活用した出題を行い、EFL環境の大学授業等で行なう言語活動において英語を理解したり、考えを伝えたりすることができるかを評価する。

*ICTとは、情報通信技術のことでスマホやスマートピーカーなど。

  • Reading test : コンピュータによる択一選択方式(ドラッグ/ドロップによる解答あり)(時間:80分)​
  • Listening test: コンピュータによる択一選択方式(時間:40分)
  • Writing test : コンピュータの解答エリアへのタイピング(時間:50分)
  • Speaking test : 録音方式(時間:30分)​

*4技能パターンのみ→15,000円

どちらも、年に3回受験できる。

 

実施団体:【ブリティッシュ・カウンシル】

③IELTS(アイエルツ)

英語を用いたコミュニケーションが必要な場所に置いて、就学・就業するために必要な英語力があるかを評価します。

→IELTSの成績証明書を得るには、リスニング・リーディング・ライティング・スピーキングの4つのテストを全て受験する必要があります。4つのテストの合計所要時間は約2時間45分です。

リスニング・リーディング・ライティングの筆記テストは同日に休憩なく一気に行なわれます。ただ、スピーキングに関しては筆記試験の前後6日以内に実施されます。

  • 受験料は25,380円
  • 申し込みには、本人確認として有効期限内のパスポートが必要。

→大学受験のためにパスポートを取る人はいないと思うので、他の試験を選択する人がほとんどだと思います。

 

実施団体:【Educational Testing Service】

④TOEFL iBT

高等教育機関において英語を用いて学業を修めるのに必要な英語力を有しているかを評価します。

  • 0~120点満点。
  • 月に3~4回実施。(ひと月に複数回の受験が可能)
  • スコアの有効期間は2年間。
  • 受験料は$235(2万円前後)

 

実施団体:【一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会】

⑤TOEIC(L&R および S&W)

和文英訳・英文和訳などの技術ではなく、身近な内容からビジネスまで幅広くどれだけ英語でコミュニケーションができるかどうかを評価します。

1.TOEIC L&R(Listening&Reading)

  • 10点~990点までのスコア。
  • リスニング:マークシート方式(時間:約45分間)
  • リーディング:マークシート方式(時間:75分間)
  • 年間に10回(1・3・4・5・6・7・9・10・11・12月)開催。
  • 受験料:5,725円

2.TOEIC S&W(Speaking&Writing)

  • 0点~200点で10点刻みで表示。
  • スピーキング:マイク付きイヤホンでの音声録音による解答(時間:約20分間)
  • ライティング:キーボードでのタイプ入力による解答(時間:約60分間)
  • 年間:24回(毎月)開催。
  • 受験料:10,260円

 

実施団体:【株式会社ベネッセコーポレーション】

⑥GTEC(Advanced/Basic/Core/CBT)

英語によるジェネラルな状況におけるコミュニケーション能力を評価します。

*ジェネラルとは、「一般的の」・「全体的の」と言う意味です。名詞の「将軍」という意味ではないのであしからず。

GTECは、小学生から社会人まで英語力が測定できるスコア型4技能検定です。

そのため、大きく分けて3種類(小学生、中高生、大学・社会人)に分かれています。そしてレベル別にさらに年代に合わせて10タイプの問題タイプに細分化された試験です。

そのうち、外部受験の英語として使えるのは4種類ということになります。

1.Core(中2・3レベル)

  • 0点~840点のスコア
  • 海外のホームステイや語学研修を楽しめるレベルまでの英語力を図ることができます。
  • 受験時間:約102分
  • 紙:(マーク式)Reading,Listening・(記述式)Writing / タブレット:Speaking

2.  Basic(高1・2レベル)

  • 0点~1080点までのスコア
  • 海外の高校で授業を理解し参加できるレベルまでの英語力を測ることができます。
  • 受験時間:約120分
  • 紙:(マーク式)Reading,Listening・(記述式)Writing / タブレット:Speaking

3.  Advansed(高2・3レベル)

  • 0点~1280点まで
  • 海外の大学で授業を理解し、参加できるレベルまでの英語力を測ることができます。
  • 受験時間:約120分
  • 紙:(マーク式)Reading,Listening・(記述式)Writing / タブレット:Speaking

4.  CBT(高3レベル)

  • 0点~1400点
  • 自分の専門外の内容についても理解し、発言できるレベル
  • 受験時間:約175分
  • 試験はパソコン。

*1~4に関係なく年3回受験することができます。

*試験会場は全国になる予定。

*第1回・第2回検定料:9,720円(8%税込み)/ 第三回検定料:9,900円(10%税込み)

 

実施団体:【ケンブリッジ大学英語検定機構】

⑦ケンブリッジ英語検定

英語圏における日常生活に必要とされる実践的な英語力があるかを評価します。

イギリスの名門ケンブリッジ大学によって1858年に設立され100年以上の歴史のある検定試験です。

ヨーロッパが中心で、日本ではほとんど知られていないと思います。

1.KET(Key English Test)

日常生活に必要な書き方・話し言葉によるもっとも基礎的なコミュニケーションを認定します。

→英検3級 / IELTS:4.0 / TOEIC:300~350 / TOEFL:350~380相当。

2.PET(Preliminary English Test)

英語圏での日常生活が送れるレベルです。高校・短大・大学生向けです。

→英検3~準2級 / IELTS:4.5 / TOEIC:350~500 / TOEFL:380~430相当。

3.FCE(First Certificate in English )

英語の日常使用する職場で働きたい方向け。

→英検準1級 / IELTS:6.0~6.5 / TOEIC:800~900 / TOEFL:500相当。

4.CAE(Certificate in Advanced English)

仕事で英語を使用するプロフェッショナルな方向け。

→英検1級 / IELTS:6.5~7.5 / TOEIC:900~950 / TOEFL:525~550相当。

5.CPE(Certificate of Proficiency in English)

ケンブリッジ検定の最上級レベル。

→英検1級以上 / IELTS:8.0 / TOEIC:950+ / TOEFL:600+相当。

*受験は年に4回。

*受験料は27,000円(10%になれば27,500円)

国際的に通用し、生涯にわたって有効です。

→本来、国際的な人材を集めるなら圧倒的にこちらの検定試験が有効ですがあくまで大学の入学ための外部テストと考えると難易度が高いため避ける人が多いでしょう。

こちらのHPからも確認できます→ケンブリッジ英語検定

geralt / Pixabay

 

英語外部検定を調べてみて・・・

たくさんの検定試験から選べるように見えますが、簡単に問題点だけ伝えておきます。

  1. パスポートがないと受験できない・東京にしか受験会場がないなど受験するだけで敷居が高い試験まで選択肢に入っている。
  2. 1回受験するだけで数万円もかかる資格試験が多く現実的ではない。
  3. 検定試験の情報量に差がありすぎる。→忙しい受験生が選ぶとしたらなじみがあり情報が入りやすい英検かベネッセのGTECを選択する確率が高い。
  4. 英検の場合は、スコアではなく級の合否なので合格しないとなにも残らない。
  5. GTECだけは、なぜかかなり試験申込者に手厚い。(受験料も他の資格と比べれば利用しやすい)

①「実施の手引き」②「受検の前に読むしおり」③「問題冊子(2冊)」④「タブレット(上限50台)(※)」⑤「実施用CD」⑥「解答一覧」⑦「解答用紙(マークシート)」⑧「STEP UPノート(付属CD付)」⑨「教師用ガイドセット」⑩「マークシート返送用小物」

*タブレットはスピーキングを申し込みの場合のみ。

が申込者に送られてきます。

というわけで、時間的にも受験対策としても日本の受験生のために用意された?ベネッセのGTECを選ぶ受験生が多くなることが予想されます。

本来の「国際的な人材を養成する」という目的ならケンブリッジ検定は歴史もあり生涯使える国際的な資格になるのでこちらの方がいいとは思いますが、なかなか選ばれないでしょう・・・

*ちなみに、TOEICの有効期間は実はありません。ただ、企業や学校側が「⚪年以内のスコア」と指定することがあります。また、TOEFLのスコアの有効期間は2年間です。なぜ日本でこちらが主流になったのか分りません。

最後に、民間企業が採点を行なうので責任の所在が不明です。全ての受験生を公平・中立に採点する必要がありますが、営利団体である民間企業に全て任せてしまっています。これまでも、不正や出題の正誤でかなり問題が起こっていました。つまり、今後なにもない方が不自然な状態になります。

 

まとめ

  • 英語外部試験の選択肢は広いようで実はかなり狭い
  • 受験料が高いためお金持ちほど何度も試験慣れができる。(受験生と親の負担がかなり増大)
  • おそらく、GTECの一人勝ちの状態になる。
  • これまでと変わらず、「受験のための英語外部試験」になると予想されるため、文部科学省が目指している国際的な人材を育成できるかは不明。

参考

旺文社 教育情報センター 2018 年 5 月
http://eic.obunsha.co.jp/pdf/exam_info/2018/0508.pdf

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です