水道法が改正されることとなり、なぜ改正が必要なのか厚生労働省のHPで示されています。私たちが生きるために必須となる水を確保するために国はどうしようとしているのか?
今回は、厚生労働省が示している改正水道法を参考に考察していきます。
現行の水道法に関しての記事はこちらで紹介しています。
→水道法を現行のまま続けたらどうなる?~これからは維持する時代~
現状とすでに予測されていることは?
①人口減少社会の到来
約40年後の2060年の推計人口8.674万人になると推測されています。
→2060年には有収水量(水道料金徴収の対象となる水量)が約4割減少すると推測されています。
②水道事業は、独立採算性
独立採算制とは、他の組織体と切り離して管理し,収支均衡の維持や収益の確保を図る経営管理制度のことです。
つまり、原則水道料金で運営されている水道事業による収入が今後減少することがすでに確実視されています。
→実際、急激に拡大していった水道事業ですが2000年がピーク(3,900万m³/日)でした。2014年には3,600万m³/日まで減少しています。
・水道の普及率は、H27年には97%を超えました。ですが、高度成長期の時代に急速に設置された水道管(予算の6割を占める)などの水道資産が老朽化で限界にきています。
→ちなみに、H26年度の管路更新率は全国平均で0.74%(すべての管路を更新するのに130年かかるとされています)
現状では、視力検査のような管路の更新率ですね・・・
③自然災害による水道被害の多発
東日本大震災や関東・東北豪雨など震災が起こるたびに老朽化した配水管の破裂などに見舞われ深刻な水問題が発生しています。また、断水の復旧に熊本地震のさいは約3か月半を要しています。
④水道事業に携わる職員の減少
→職員数は30年前に比べると3割減少し、高齢化も進んでいます。
(主観:確かに、国として現状把握はできているのだと思います。)
国が考えた対策
今回の水道法の改正は、①~④で示されてきたことを鑑みると・・・
老朽化している配水管といった水道施設の修繕予算の確保がメインのようです。
予算が組めれば
①人員配置を増やすことができる。
②老朽化した水道施設が整備できる。
③人口が減少しても水道事業が維持できる。
そこに白羽の矢が立ったのが「民営化」です。
(主観:国には、民営化以外のアイデアがないのか正直不安です。)
水道法改正の概要
簡単にいえば、官民との連携を図るという考え方。
コンセッション方式といわれる、 施設の所有権は移転せず、民間事業者にインフラ の事業運営に関する権利(運営権)を長期間にわたって付与する方式がとられます。
つまり、市町村の裁量で「民間事業者にも水道事業を担ってもらおう!」という考え方です。
企業ができないこと
水道事業の所有権は、国が持った状態になります。
つまり・・・
①経営方針の決定(水道事業の開始・休廃止、水道施設の更新等に関するものを含みます)
②利用者との給水契約との内容決定および締結。
③水道施設の建設・改修(新設工事・全面除去を伴う再整備に限る)など。
こういったことは、企業の判断ではできません。
企業ができること
①大規模災害時の対応
→大規模災害など想定外の事態が発生したときの応急給水や施設の普及といった緊急時の対応。
②水道施設の更新
→耐震化や通常の災害復旧を含む
③水道施設の運営等に関する企画等
→水道施設の運営等に関する企画
→利用料金の収受(受け取ること):条例で定められた範囲での利用料金の設定を含む
④水道の管理に関する技術上の業務
→施設の運転・保守点検・維持・修繕(通常の災害復旧を含む)
→水質検査・水質管理
→給水装置の検査等
改正水道法のイメージ
住民からみると・・・
・住民(私たち)→運営権をもった事業者に利用料金を支払う→民間事業者は公共主体に運営権の対価を支払う
公共主体からみると・・・
・施設の所有権をもっている公共主体→民間事業者に運営権を設定する(売る)→金融機関や投資家が事業者に投資する→事業者は住民にサービスを提供する
ちなみに、運営権(事業期間)は浜松市の事例では20年間となっています。
今後の予測
現行の水道法とのちがいをみると・・・
①これまでも、市町村の裁量で事業者に任せることはできたがそれが全体的に広がり当たり前となる。
②現行法では、任された事業者は全てを引き受けてくれる事業者がみつかるまで辞めることができなかったが改正されれば、そもそも運営権を公共主体から購入することになる。
③現行の水道法では、合理的な理由で算出された水道料金を支払わなければ水道を停止させることができます。事業者が配管の補修・修繕費用によっては水道代が払えなくなる家庭が出てくる可能性がある。
④何かあった場合の責任の所在が事業者に集中する可能性がある。
まとめ
配管整備や人口減少により確実に赤字が見込まれる事業に、なぜ営利企業が多額の運営権を買ってまで参入してくると考えているのかは最後まで分かりませんでした。
ネットでは、「水男爵と呼ばれる外資が参入して・・・」なんてさまざまなことが書かれていますが真実は分かりません。
今回は、あくまで厚生労働省が示している改正水道法から考察しているので・・・
ただ、もし20年の運営権を買って最初は融資が集まったとしても一度こければ倒産もありえます。そもそも長期間運営できる事業者がいくつ存在するのか?もし、運営権を買った事業者が倒産したら?
かといって、数年という短期間で事業所がコロコロ変われば確実に水道事業は混乱します。
厚生労働省の資料には、企業が参入したときのメリットやその必要性は明記されていますが、企業参入の危険性やその対策に関しては確認することができませんでした。(管理体制の説明や罰則のみで具体的な問題事例は考えられていない?)
また、仕組みは一定ではなく今回のようにどんどん変わっていく可能性が高いです。一つ言えることは、日本が大きく変わる転換期に私たちは生きているということです。水道代が上がり続ければ、ひょっとしたら1家に1・2台ウォーターサーバーが当たり前になるかもしれませんね。
全ては、「企業努力」にかかっています。
参考
厚生労働省:水道改正法にむけて
→https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000179020.pdf
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