新型コロナウイルスが世界中で蔓延していますが、肺炎を引き起こす病気は必ずしも新型コロナウイルスだけではありません。
例えば、インフルエンザでも重症化すれば肺炎を引き起こすことがあります。
ただ、なかには1年中、感染の危険性がある感染症があります。
今回は、「子どもに多いマイコプラズマ肺炎」についてご紹介します。
「マイコプラズマ肺炎」ってなに?
マイコプラズマ肺炎は、生物学的には「細菌」に分類されますが、他の細菌とは異なり細胞壁を持っていません。そのため、顕微鏡で観察すると決まった形ではなくさまざまな形をしています。
そして、小児や若年成人が中心に流行する病気で、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することで引き起こされる呼吸器感染症です。
さらに、冬にやや増加する傾向はありますが1年を通じてみられます。
《マイコプラズマの大流行は周期的》
- 1984年
- 1988年
これまで、マイコプラズマ肺炎は4年周期で大きな大流行がありました。とはいえ、1990年代以降は大きな流行がみられていません。
ただ、2000年以降は徐々に定点辺りの患者報告数が増加傾向にあります。
→患者が増加している原因は分かっていない。
特徴は?
感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」ですが、新型コロナウイルスのように「濃厚接触が必要」と考えられています。
つまり、地域での感染拡大の速度は遅いと考えられており、感染拡大は閉鎖集団などではみられますが、学校など短時間の接触による感染拡大の可能性は高くなく、例えば友人間などでの濃厚接触の方が危険視されています。
- 潜伏期間:2~3週間
- 初期症状:発熱・全身倦怠・頭痛など
- 咳は、初発症状出現後3~5日から始まることが多く、当初は乾性の咳で経過に従い咳は徐々に強くなり、解熱後も3~4週間続く。
- 特に年長児や青年では、後期には湿性の咳になることが多く、鼻炎症状は幼児ではより頻繁にみられる。
- 嗄声(させい:かすれた声)・耳痛・咽頭痛・消化器症状、胸痛は約25%にみられる。
- 急性期になると、40%に喘鳴(ぜんめい)が認められる。
3年後の肺機能の評価では、対象に対して「有意に低下していた」という報告まであります。
*ちなみに、中耳炎・肝炎・心筋炎・関節炎などさまざまな合併症が引き起こされる可能性もある。
ただし、多くの人はマイコプラズマに感染しても気管支炎ですみ、軽い症状が続きます。あくまでも、一部の人(約3~5%)が肺炎にかかります。
*「小児の方が軽くすむ」と言われている。
新型コロナウイルスとは違う!
肺炎になることや、重症化することが一部の人に起こるなど、似ている部分は確かにありますが、そもそも「ウイルス」か「細菌」かという違いをはじめ、他にもさまざまな違いがあります。
- 細菌性の肺炎(マイコプラズマ肺炎など)・・・痰の色が「黄色」・「緑色」
- ウイルス性の肺炎(新型コロナウイルスなど)・・・痰の色が「白っぽい」・「透明」
例えば、こういった違いがあります。
そして、最も大きな違いは、「簡単な検査ができるかどうか」です。マイコプラズマ肺炎は、抗体迅速検査により患者さんの喉を綿棒で拭い、15分程で検査結果が得られます。
このように、感染症対策では感染拡大を防ぐために早期発見できることがなによりも重要になります。
さらに、一部ではありますが、マイコプラズマ肺炎に効果がある抗菌薬(抗生物質)もあります。(ただし、ワクチンはありません)
ただ、マイコプラズマは、一度治癒しても再感染することがあるため、油断はできません。
つまり、「簡易検査ができる」ことや「効果が分かっている抗生物質」も分かっており新型コロナウイルスとは大きな違いがあります。
《ポイント!》
マイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法の第三種の感染症に分類されています。
第三種の感染症による出席停止期間は、「病状による学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」となっています。
つまり、明確な出席停止期間は定められていませんが、解熱して2日ほどしてから咳で日常生活に支障がないレベルと考えられています。
→出席停止期間が設けられている、注意が必要な感染症であることは間違いない。
最後に
新型コロナウイルスが怖い理由は、端的に言えば「未知の部分が多いから」です。日本では結核や赤痢など「死の病」と呼ばれる感染症により多くの人が命を落としました。
海外では、「ペスト」や「エボラ」などさまざまな感染症がこれまで猛威をふるってきました。
人類の歴史は感染症との戦いとも言われますが、インフルエンザ一つとっても命に関わる感染症です。
ただ、「克服できた!」と思っていたら、耐性菌により例えば結核やインフルエンザの薬が効かなくなることが実際に起こっています。
新型コロナウイルスは確かに怖い感染症ですが、肺炎の症状が引き起こされる感染症は他にもあります。そして、感染症により注意すべき対象年齢も変わります。
そして、マイコプラズマ感染症の感染症予防は「手洗い」「うがい」「咳エチケット」「人混みを避ける」など、新型コロナウイルスと予防対策は同じです。
確かに新型コロナウイルスは、まだよく分かっていません。ニュースや厚生労働省の発表などをみていると、子どもには感染しにくい印象はありますが、実際のところははっきりしません。
仮に、子どもにはかかりにくいとしてもマイコプラズマ肺炎のように、逆に子どもがかかりやすい肺炎もあります。そのため、やはり予防対策は続けなくてはいけません。
以上、今回は「肺炎は新型コロナウイルスだけじゃない!」というお話しでした。
参考
デンカ生研株式会社:マイコプラズマQ&A
→http://denka-seiken.jp/jp/special/qa/myco_qa.html
厚生労働省:マイコプラズマ肺炎に関するQ&A 平成23年12月作成、平成24年10月改訂
→https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou30/index.html
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