皆さんはすでに、新型コロナウイルスの治療薬として注目を浴びている薬があることをご存じかもしれませんね。
ただ、どんな薬にも副作用があります。
今回は、「新型コロナウイルス感染症対策本部が進めている治療薬候補」についてご紹介します。
新型コロナウイルス対策本部ってなに?
新型コロナウイルス感染症対策本部(以下、対策本部)は、「中華人民共和国で感染が拡大している新型コロナウイルス感染症について、感染が拡大している現下の状況に鑑み、政府としての対策を総合的かつ強力に推進するために、内閣に設置された対策本部」のことです。
ちなみに、構成員はこのようになっています。
- 本部長:内閣総理大臣
- 副本部長:内閣官房長官・厚生労働大臣
- 本部員:他の全ての国務大臣
となっています。まさに、国のトップで構成されています。
*この対策本部は、2020年1月30日に設置されている。
さて、この対策本部で、厚生労働省は一部の医療機関においてある治療薬の研究を始めたことを2月23日発表しました。
それでは、どういった治療薬の研究が進められているのでしょうか?
新型コロナウイルスに対する治療薬の候補とは?
新型コロナウイルスの治療薬候補は実は3種類あります。
現在、観察研究されているのは以下の3種類です。
→観察研究というのは、医療機関内の倫理委員会等の手続きを経て、患者の同意を得た上で本来の適応とは異なる投与等を行った治療について、治療結果等を集積し分析する一連の研究のことです。
つまり、候補の3種類の薬はもともとは別の対象疾患のための薬です。
❶アビガン(主成分:ファビピラビル)
国内でも承認されている薬で、本来の対象疾患はインフルエンザです。
この薬の禁忌(してはいけないこと)は、このようになっています。
- 妊婦または、妊娠している可能性のある婦人
- 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある人
さらに、この薬にはそもそも使用制限があります。
《アビガンの使用制限》
- 他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果が不十分な「新型」または「再興型(長期間経過した後、再び蔓延した)インフルエンザ感染症」が発生。
- 当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合のみ。
《重大な副作用》
- 異常行動(頻度不明)
因果関係は不明ですが、インフルエンザインフルエンザ罹患時には「急に走り出す・徘徊する」など、転落などに陥る異常行動が現れることがあります。
- 他の抗インフルエンザウイルス薬で、以下の重大な副作用が報告されているため十分に注意する。
- ショック、アナフィラキシー
- 肺炎
- 急性腎障害
- 出血性大腸炎
など。
その他の副作用として、「代謝異常」や「肝臓の数値」・「下痢」などこういった症状お引き起こされることがあります。
ちなみに、小児等への投与経験はありません。
➋カレトラ(主成分:ロピナビル)
国内で承認されている薬で、本来の対象疾患はHIVです。
配合薬として、リトナビルが配合されていますが主成分のロピナビルの効力を増強・維持することが目的です。
さて、この薬にも副作用があります。
《注意が必要なケース》
- 肝臓病(B型・C型肝炎等)
- 血友病
- 心臓病
- 高齢の人
例えば、肝臓の悪い人は薬の代謝が遅れがちになったり、血友病の人は出血の増加に注意する必要があったりと副作用が見られます。
さらに、様々な薬と相互作用が引き起こされやすいため、飲み合わせにより薬の副作用が強く出たり逆に効果がよくなったりと、様々です。
《様々な副作用》
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢・腹痛などの胃腸症状
- 長期に服用すると高脂血症や*リポジストロフィーなどの脂質代謝異常
→滅多にないですが、高血糖や糖尿病、不整脈、皮膚障害といった報告もある。
*リポジストロフィーとは、手足や顔が痩せ、胸や肩・腹部が太ってくるなど体脂肪の分布異常のこと。
❸レムデシビル
国内だけでなく、海外でも承認されていない(未承認)の薬で、本来の対象疾患はエボラ出血熱です。
→現在は、他の薬が効果があることが分かりエボラ出血熱への投与は中止されています。(N Engl J Med. 2019 Dec 12;381(24):2293-2303)
この薬についての詳しい副作用などは分かりませんでしたが、すでに国内でも投与されており一定の効果があったことが国立国際医療研究センターのセンター長より報告があります。
ただ、治療薬としての有効性はまだよく分かっていないようです。
最後に
新しい感染症が発生すると、治療薬の研究が始まります。
ただ、本当に効果があるのか?
副作用には、どのようなものがあるのか?
慎重に調査を続ける必要があります。そもそも、特効薬ができたとしても全ての人が服用できるわけではありませんし、全ての人が服用しなくてはいけないものでもありません。
必要な人に、必要な分だけ服薬させることが大前提です。
特に、今回の新型コロナウイルスはほとんどの人が重症化していませんよね。
また、薬剤耐性菌のように必要もないのに適当な服薬をしてしまい薬が効かなくなる可能性もあるかもしれません。
医師の指示に従うことで、自己判断で服用しないようにして下さいね!
もしも、治療薬として処方されるようになったとしても、別の人にその薬を渡すようなことをしてはいけません。最悪、持病や薬の飲み合わせによっては命に関わる場合があります。
参考
首相官邸:政策会議
→https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/taisaku_honbu.html
アビガン錠200mg
→http://fftc.fujifilm.co.jp/med/abigan/pack/pdf/abigan_package_01.pdf
おくすり110番:カレトラ
→http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se62/se6250101.html
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