新型コロナウイルスによる外出自粛が緩和され始めました。
そんな中、日本政府が開発に取り組んでいる「システム」についてご存じでしょうか?
位置情報の確認と言えば、例えば韓国の場合は防犯カメラと住民登録票に紐付けにより、感染者の足取りが全て分かるシステムが組まれています。
韓国では、感染が分かった時点で、以下のような感染者の個人情報が公開されることになります。
例えば、「感染者は○○地区、○氏(○○歳・女)。2月9日と16日に新天地教会の集会に参加した彼氏と会った」なんて情報だけではありません。
さらに、「勤め先」や「数日間の間にどこのスーパーに行ったか?」など、日本では考えられないような個人情報が公開されることになります。
これは、韓国に住む16歳以上の国民が全員もつ「住民登録証」が新型コロナウイルスの防疫に利用されているためです。
それでは、日本の政府が開発しているシステムはどこまでプライバシーが守られるのでしょうか?
今回は、日本政府が開発中の『「接触確認アプリ」と「新型コロナウイルス感染者等把握・管理支援システム」』についてご紹介します。
基本的人権は尊重されている!
まず、最初に伝えて起きたいことは、まだ開発中のため「案」の段階ですが、少なくとも「個人を特定してさらす」という性質のものではないようです。
さて、2020年5月8日に新型コロナウイルス感染症対策テックチーム事務局が「接触確認アプリの導入に向けた取組について(案)」を発表しています。
そもそもどんな目的でするの?
スマートフォンを活用することで・・・
- 自らの行動変容の確認
- 自分が感染者と分かったときに、システムを使って健康観察への円滑な移行
が期待されています。
そして、厚生労働省が構築予定のシステムのことを、仮称ですが「新型コロナウイルス感染者等把握・管理支援システム」(以下、「管理支援システム」とする)と呼ばれています。
この「管理支援システム」と「接触確認アプリ」を組み合わせることで、感染者やその疑いのある人を管理していくことができます。
ただし、運営に当たってはそもそも「プライバシー保護」と「本人の同意」が大前提となっています。
そして今後は、このシステムにより正確な陽性者の状況把握や統計調査等がなされていく予定のようです。
それでは、まずは「接触確認アプリ」の概要についてみていきましょう。
接触確認アプリとは?
そもそも、ユーザーとなるのは「日本国内居住者」や「滞在者」ということになります。そして、あくまでもウイルス陽性判定がでるまでがこのアプリを利用するタイミングとなります。
→陽性が判定されれば、「入院」や「宿泊療養」、「自宅療養」となるため、そもそも基本的には自由に外出しないことになります。
このことは、2020年4月2日に厚生労働省が発表している「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」で示されています。
以下の者については、必ずしも入院勧告の対象とならず、都道府県が用意する宿泊施設等での安静・療養を行うことができる。
・無症状病原体保有者及び軽症患者(軽症者等)で、感染防止にかかる留意点が遵守できる者であって、
・原則①から④までのいずれにも該当せず、帰国者・接触者外来又は現在入院中の医療機関の医師が、症状や病床の状況等から必ずしも入院が必要な状態ではないと判断した者※
① 高齢者
② 基礎疾患がある者(糖尿病、心疾患又は呼吸器疾患を有する者、透析加
療中の者等)
③ 免疫抑制状態である者(免疫抑制剤や抗がん剤を用いている者)
④ 妊娠している者
※ 発熱、呼吸器症状、呼吸数、胸部レントゲン、酸素飽和度 SpO2 等の
症状や診察、検査所見等を踏まえ、医師が総合的に判断する。
つまり、陽性判定がでた時点で、そもそもアプリを使う意味がなくなります。
そして、接触確認アプリの気になる主な機能は以下の2点です。
- 他者との接触状況の端末上での記録
- 陽性者との接触確認の通知
となります。
このことから、「このアプリを利用しているユーザー同士でしか使えない」という欠点があります。
→あくまでも、アプリを使っている人同士のネットワーク。
このアプリの中身を知らないと、警戒してせっかくのシステムが頓挫してしまう可能性まであるため、どんな仕組みになる予定か見ていきましょう。
接触確認アプリの役割は?
通常時(新型コロナウイルスに感染するまで)
- 他者との接触について、アプリの端末に相手の識別子(個人に紐つかない)が記録。
- 識別子の記録は、一定期間経過後に順次削除
通常時の、接触確認アプリの役割はここまでです。
それでは、実際に陽性が確認された場合どうなるのでしょうか?
陽性が確認されたら?
- まずは、保健所で管理システムに陽性者が登録されます。
- システムに登録された陽性者は、保健所の通知を受けて「自分が陽性者である」ことをアプリ上で入力。
- 接触確認アプリを利用しているユーザーの中で、陽性者との接触歴があるユーザーに「接触者アラート」が通知。
- 「接触者アラート」を確認した接触歴のあるユーザーは、管理支援システムに登録する。
こういった流れになります。
一連の流れをまとめると、このようになります。
- 医療機関に受診して、新型コロナウイルスに感染しているか検査
- 保健所で管理支援システムに登録
- 陽性の人に対して、「接触確認アプリ」に陽性者として登録されたことを通知
- スマホで「保健所からの通知を確認した」ことを自分で入力
- 陽性者と接触した識別子があるユーザーに対して、「接触者アラート」を通知
- ユーザーは、「接触者アラート」を確認
- ユーザーが「接触者アラート」を確認後、保健所で登録
このような流れになります。
つまり、「接触確認アプリを使用することでその他の感染の疑いのある人を見つけ出し、管理支援システムにより陽性者と疑いのある人を確実に管理する」という2段階のシステムです。
それでは、個人情報はどのようになっているのでしょうか?
他国との比較
最初に断っておきますが、他国と比較することも大事ですが、そもそもそれぞれの国で文化も法律も大きく違います。
そのため、「他国と同じだから大丈夫!」ということではありません。むしろ、同じにしたことで危険な方が多いかもしれません。以下の比較は、その危険性がわかる比較でもあります。
そもそも、「接触確認アプリ」のようなシステムは、各国がすでに実施しています。そして類型としては、大きく2つに別れています。
位置情報型
インドやイスラエルなどが実施。
→位置情報を用いて、感染者と接触があったアプリユーザーを当局が特定。
Bluetooth型
個人特定型(中央サーバー処理型)
シンガポールやオーストラリアが実施。
→電話番号等の個人情報により、当局が接触者を特定し連絡可能。
匿名型(中央サーバー処理型)
(検討中)イギリスやフランス
→各ユーザーの接触者データは、当局が保有するサーバーで管理。
匿名型(スマホ端末処理型)
(検討中)ドイツ・スイス・エストニア等
→各ユーザーの接触者データは、各ユーザーの端末で管理される。日本でも、この匿名型(スマホ端末処理型)が準備されています。
他の3つのタイプと大きく違う点は、個人情報を扱うのは当局(政府)ではなく本人だと言う点です。そして、あくまでも個人や端末が特定されることもありません。
このシステムは、2020年5月中旬頃には運用されていく予定になっています。
最後に
「接触確認アプリと運営管理システム」について見ていきましたが、できればもう少し早く運用できれば効果を発揮できたかもしれません。
ただ、今後も様々な感染症が発生することは容易に想像できるため、期待できるシステムだと言えるでしょう。
冒頭でお伝えした韓国の防疫対策はある意味、接触確認アプリの位置情報型を越える、究極の個人情報公開により実現している対策だと言えます。
多くの人が、どこまで個人情報の公開を許容できるのかは分かりません。
ただ、個人情報の公開により個人が特定されれば、陽性者と接触した感染疑いのある周囲まで巻き込んで、「私刑」が行われる危険性があります。
すでに日本でも、「自粛警察」なんて呼ばれる勝手に制裁を加える人がいるようです。
そうなれば、感染が判明した時点で、社会的に死んでしまう可能性も高くなるため、「なんとしてでも感染したことを隠そう!」とする人が増えるかもしれません。
あなたは、どこまで個人情報の公開に耐えられますか?
どの国の対策がいいですか?
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