皆さんは、「ファクタリング」という言葉をご存じでしょうか?
コロナ禍が続き、今度は「第二波がすでに来ている」とも言われていますよね。ただ、残念ながらそもそも感染症の本番は冬です。
さて、すでに経済的にも疲弊してしまっている状況ですが、そういった隙を突いてくる人達が後を絶ちません。
今回は、「ヤミ金融業者の給与ファクタリング」についてご紹介します。
そもそも「ファクタリング」ってなに?
「ファクタリング」というのは、企業から「売掛債権」を買い取り、売掛債権の管理・回収を行う金融サービスのことです。
→売掛債権:企業の営業活動による商品・サービスの売上代金のうち、「まだ受け取れていない代金を請求できる権利」のこと。(入金待ちの請求書)
これは、企業の資金調達方法の1つです。企業からすれば、例えば「売掛債権の早期現金化が可能になる」といったメリットがあり、もちろん合法的な取引きでもあります。
→そもそも、通常、企業間の取引きでは後払いである信用取引が採用されており「前払い」や「現金取引」は一般的ではありません。
ただし、ファクタリングには手数料がかかります。
デメリットは?
ファクタリングは、賃金業法による規制がありません。
つまり、「利息」という決められたものではなく、あくまでも「手数料」の扱いとなるため手数料負担が高額になりやすい傾向にあります。
金融庁が、賃金業法について簡単にまとめています。それによると、以下のような内容になります。
ワンポイントアドバイス! ~賃金業法の基本~
❶借りることができる額の総額に制限を設けている!
これを、「総量規制」と呼びますが、借り過ぎ・貸し過ぎが防止されています。
- 借入残高が年収の1/3を越える場合は、新規の借り入れができない。
- 借り入れの際に、基本的には「年収を証明する書類」が必要。
*総量規制が適用されるのは、貸金業者から個人が借入れを行う場合。銀行からの借入れや法人名義での借入れは対象外。
➋上限金利の引き下げ
- 法律上の上限金利:29.2%
借入金額に応じて15~20%に引き下げられる。
❸賃金業者に対する規制の強化
- 法令遵守の助言・指導を行う国家資格のある者(賃金業務取扱主任者)を営業者に置くことが必要になる。
*貸金業を行うには、業者は、貸金業法に基づいて財務局長または都道府県知事の登録を受ける必要があり、無登録での営業は禁止されている。
→登録をせずに金銭の貸し付けを行った場合は、5年以下の懲役、または1,000万円(法人の場合には1億円)以下の罰金などが科せられる。
さて、この賃金業法に当てはまらないファクタリングを、「個人の給与に当てはめられたもの」として悪用されることがあるのが、給与ファクタリングです。
「給与ファクタリング」はそもそも合法?
例えば、国民生活センターでは給与ファクタリングとヤミ金についての注意喚起が示されています。
ここでいう「ファクタリング」つまり債権は、「給与」のことですよね。
→「給与の債権を売れば金銭を受け取れる!」といった宣伝がよく行われます。
給与ファンタリングの利用者からすれば・・・
例えば、コロナ禍で不安定な生活をすこしでも安定させるための「給与の前借り」として利用される場合があります。
実際、業者は「債権の買い取りなので金銭の貸し付けではない!」などとうたっているようですが、実際は賃金業であり、簡単に言えば「借金」をしていることと同じです。
普通なら、ファクタリングは、賃金業法が適応されないため上限はありませんし、また業者が登録する必要もありません。
ところが、このファクタリングのメリットを悪用して「給与ファンタリング」と称して実施している業者が存在しています。
ファクタリングを悪用!?
「給与ファクタリング」については、突っ込み所が満載ですがそもそも労働基準法の第24条をご存じでしょうか?
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
例外として、一定の条件の下で「通貨以外で支払われる場合」や「賃金の一部を控除して支払うこと」が認められてはいます。
ですが、第三者が労働者の給与を債権にすることは、基本的に認められていません。
このことについては、金融庁が2020年3月5日に報告した「金融庁における一般的な法令解釈に係る書面照会手続(回答書)」でも以下のように報告されています。
(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うこと。)においては、いかなる場合であっても賃金債権の譲受人が自ら使用者に対してその支払を求めることはできず、賃金債権の譲受人は、常に労働者に対してその支払を求めることとなる
とされています。
そして、給与ファクタリングは・・・
貸金業法(昭和 58 年法律第 32 号)第2条第1項の「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当すると考えられる。
と結論付けられています。
要するに、結局、業者は常に労働者に返済を求めることになるため、給与に対して企業のようなファクタリングは認められないこと。つまり、給与ファクタリングは賃金業法に抵触することが示されています。
→給与ファクタリングは賃金業に該当するため登録が必要!
*上記の金融庁の見解により、無登録業者の営業に関与した代表者・役員・従業員・弁護士等に対し、共同不法行為による刑事及び損害賠償請求等の訴訟が提起される可能性が高くなった。
それでは、どんな被害がすでに発生してしまっているのでしょうか?
給与ファクタリング被害とは?
国民生活センターでは、いくつも相談が上がっています。事例を1つ紹介します。
子どもの怪我で、高額が治療費が必要になったお父さん(40代)の場合
インターネットで、簡単にお金を用立てることができる「給与ファクタリング業者」に電話。7万円を手渡しで受け取り、次の給料日に12万円を銀行振り込みで返済する予定だったようです。
そして、期日の前日に業者から電話があり「明日の何時に振り込むか?」と聞かれたため、予定時刻を答えたにもかかわらず・・・
- すぐに事業者から勤務先や自宅に電話がかかってきて、勤務先と家族に知られて大騒ぎになった。
- 年利を計算すると700%以上になる。
こういった相談でした。
そもそも、金融庁のホームページを確認すると・・・
債務者と連絡が取れないなどの理由も無く、勤務先や夜9時以降に督促の電話をすることは法律で禁じられています。貸金業者にそうした督促を止めるよう伝え、それでもそうした督促が続くようであれば登録先の財務局や都道府県に相談してください。
賃金業法第42条
貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつて金銭を交付する契約を含む。)において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。)の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は、無効とする。
つまり、事例の年利700%は、年利109.5%の利息をはるかに超える契約となるため、そもそも契約自体が無効です。
さらに言えば、出資上の上限金利年利20%を越える金利は刑事罰の対象です。
そして、職場や家族が執拗に取り立てられるど、強引な取り立てが問題になっています。
最後に
そもそもの話しになりますが、無登録で給与ファクタリングを業として行っている人達はヤミ金です。
また、「利息でなく手数料」と説明していたとしても、実態は利息と同じです。
給与ファクタリングの危険な点は、こういった闇金業者により「3万円の振り込みで5万円の返済をさせるケース」や、「7万円の振り込みで12万円返済させるケース」などが、実際に2020年時点でも発生していることです。
いまだに、こういった昔のような取り立てが横行していることが現実です。
まずは、給与ファクタリングなど「簡単!即決!」をうたった怪しい(ヤミ金の可能性大!)に連絡して本当に取り返しが付かなくなる前に、消費者ホットライン(188番)等に相談することをお勧めします。
→「消費者ホットライン」については、こちらの記事で紹介しています。
コメントを残す