強要はできない職務質問 「簡単に断れる」という意味ではない!?

 

皆さんは、職務質問を受けたことがあるでしょうか?

一部では緩和されてきているとは言え、新型コロナウイルスにより外出自粛がまだ求められていいますよね。

実際、東京などでは警察のパトロールが強化されているようですが、「外出している!」という理由だけでは職務質問は基本的にできないようです。

それではどういった時にできるのでしょうか?

例えば、私の場合は大学生の頃に1度だけ「その服が犯人の服装に似ている!」と言われて、駅前で2人組みの私服警官?に声を掛けられたことがあります。

職務質問では、大学名を聞かれたりしましが数分で解放されました。

さて、そんないつどこでされるか分からない職務質問ですが、どこまで許されているかご存じでしょうか?

今回は、「現実的には拒否が難しい職務質問」についてご紹介します。

 

そもそも法律ではどうなっているの?

職務質問は、警察官の職務の1つですから、当然その意味や内容などについては、法律によって定められています。

その法律というのが、警察官職務執行法です。

第二条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

これが、私達一般市民に対して警察官が職務質問できる根拠となります。

つまり・・・

  • 異常な挙動(不審者)
  • 合理的な判断で犯罪または犯罪を犯そうと疑われる者
  • 犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者

こういった者に限って、職務質問をすることが許されています。そして、そう判断されれば停止させて質問することができます。


ただ、「疑われる者」となると警察官の主観のみで片っ端からだれかれ構わず、職務質問ができることになってしまいます。

そうなれば、人権もなにもあったものではありません。そのため、「合理的な判断」が必要となります。

  • 警察の姿をみて逃げ出したら怪しいですよね。
  • マンションの前をウロウロしている人は怪しいですよね。
  • 真冬なのに大量の汗をかいている。(薬物の影響かもしれない)

あげればきりがないですが、このように「不審者」や「おかしい人」と合理的に判断できる場合ということです。

そもそも、犯罪者を取り締まるプロである警察官の判断基準が、私達一般市民が気付く部分ばかりではないことは、容易に想像がつくでしょう。

そう意味では、結果的に合理的な判断基準は警察官の主観になってしまうのかもしれませんが・・・

それでは、職務質問のために合理的な理由に基づいて相手を停止させた後、警察官はなにができるのでしょうか?

 

職務質問でできること

2 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。
3 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
4 警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。
(保護)

つまり、条件付きではありますが警察署や派出所、駐在所に動向を求めることができます。ただし、基本的に強要することはできません。

所持品検査はあくまでも、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者に対して、凶器を持っているかといった検査ができることになります。

このように、職務質問には「強要されることはない」という面があるため「強要されない=任意=簡単に断れる!」となりがちです。

それでは質問です。

職務質問がティッシュ配りのようにティッシュをもらってくれる人。つまり、職務質問に応じてくれる人だけにした場合、どうなるでしょうか?

正直、職務質問が「警察官のパフォーマンス」と言われても仕方がないのではないでしょうか?

つまり、警察官は職務質問を断ったとしても、説得しながら相手に執拗に許可を取りながら職務質問をするしかありません。

そして、様々なやり方が過去の判例で「適法」として認められています。

 

職務質問で「適法」とされた行為

  1. 肩に手を掛ける行為
  2. 手首を掴む行為
  3. 自転車の荷台を抑える行為
  4. 胸元をつかんで歩道に押し上げる行為
  5. 足を踏み入れてホテルの客室のドアが閉まるのを防ぐ行為

などなど・・・

一見すると「拘束」としか見てとれない行為も、状況によっては裁判所の判決により合法とされています。つまり、このような物理的な行為が「有形力の行使」として認められなかった事例です。

ただし、私達が警察官に触れたりすれば、公務執行妨害が成立する可能性があります。

職務質問とはなんなのか?

考えさせられる事例でもあります。ただ、今は外出しているだけで「職務質問のような声かけ」がなされています。

 

職務質問ではない声かけ?

新型コロナウイルスにより、外出自粛が要請されていますよね。

さて、そんな中、警察のパトロールが強化されています。例えば、都市部の繁華街では警察官が必要に応じて街ゆく人々に声を掛けて「外出自粛」を伝える取組が実施されています。

本当なら、氏名や年齢を聞くなどして職務質問をした方が早いかもしれませんが、冒頭からお伝えしてきたように、職務質問は「天下の宝刀」ではありません。

外出しているだけで、職務質問することは合理的な判断ではないため法律上許されません。

確かに、警察官の倫理観便りの所はあるかもしれませんが、今は総監視社会です。ドライブレコーダーなども含めて誰に録音・録画されているか分からないですよね。

特に、「法律を守るべき警察官」という職務上、そういった可能性はさらに高くなるでしょう。

また、「外出自粛のためのパトロール強化が人権侵害に当たる」という指摘があるかもしれません。


ただ、現実問題として例えば、子どもと空き巣が鉢合わせするなど、空き巣被害が広がっているためパトロール強化は仕方がないのではないでしょうか。

そもそも、パトロールの目的は外出自粛の呼びかけだけではなく、どちらかというと治安維持だと考えた方が自然だと考えられます。

個人的には、新型コロナウイルスの危険性を感じながら、真面目な多くの警察官が職務のために途切れることなく、1日中パトロールを続けてくれていることは賞賛されるべきだと考えています。

 

最後に

職務質問は、されたくはありませんがされたのであれば素直に応じた方が早くすみます。

ただし、カバンや財布の中身を勝手にみたり、強制的に交番やパトカー内に連行しようとすればそれは基本的に違法行為となります。

→ちなみに、例えば薬物を所持していると疑われている場合は、承諾がなくても所持品検査が許される場合があるため一概に「ない」とはいえません。

このように、職務質問は強要できませんが相手が許可するまで「お願い」することはできてしまいます。また、疑われている罪状によっては対応が変わってきます。

中には、「何時間も粘られた!」なんてこともあるため、素直に対応した方が得策といえるでしょう。

ただ、なにが違法な職務質問なのかは、専門家でなければなかなか分かりません。そのため、不安な場合は職務質問の様子をスマホなどで録画・録音をしておく必要があるでしょう。


参考

新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態における警察の対応に係る留意事
項等について(通達)
https://www.npa.go.jp/laws/notification/keibi/keibi2/keibi2_20210212_1.pdf

渋谷青山刑事法律事務所:覚せい剤事件における職務質問・所持品検査
https://www.sa-criminal-defense2.jp/shokumusitumon

 

 

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