皆さんは、「自爆営業」という言葉をご存じでしょうか?
残念ながら、当たり前のように行なわれています。ただ、このように書くと会社側だけが一方的に悪い印象があるかしれません。
今回は、「自爆営業はどちらも加害者になりえる!?」についてご紹介します。
そもそも「自爆営業」ってなに?
自爆営業というのは、「企業の営業活動において、従業員が自己負担で商品を購入する行為」
のことで、営業成績のために身銭を切る行為から「自爆」と揶揄されています。
→自爆して、会社の営業利益を上げる行為。
「お金が全て」とは言いませんが、なんのために働いているのか分からなくなりますよね・・・
さて、そんな「自爆営業」という言葉は、もともと日本郵便の会社組織内で呼ばれるようになった言葉でした。
というのも、郵便局員が大量に購入した落とし玉年賀はがきを、金券ショップに毎年売りに行くことが社員の慣例になっていたためです。
ここまでくると、もはや「誰特」なのか分かりませんが・・・
そんな日本郵便は、2019年にノルマの廃止を打ち出していましたが2020年2月のANNニュースで「日本郵政社長が、まだ一部の現場で自爆営業が続いていることをあきらかにした」と報道されていました。
このように、自爆営業が無くなることは難しいのかもしれません。
ですが、そもそも自爆営業は違法性が極めて高い行為であることを知っておく必要があります。
自爆営業の違法性とは?
自爆営業は、強制的にやらされればもちろん会社側に違法性がありますが、従業員自らが行なった場合は訴えられる可能性があります。
それでは、まずは会社側の違法性(自爆営業)から見ていきましょう。
ノルマ達成のために買わされた?
自爆営業のパターンは1つではありません。
- 会社が強制的に購入させるパターン
- 従業員が過剰なノルマを達成できずに自主的に購入するパターン
- ノルマ未達成のペナルティとして給与から商品代金を天引きするパターン
一番悪質なのは、「2.自主的に購入するパターン」ではないでしょうか。正確には、無言の圧力があると思いますが・・・
それでは、1・3について先に見ていきましょう。
ノルマがあるのは当たり前ですが・・・
そもそも、会社が社員に対してノルマを設定することは自然のことですよね。
「ノルマ」とは、本来「目標値」のことですので、ノルマがなければそもそも仕事の成果を評価できなくなってしまいますよね。
また、ノルマがなければ会社の方針も立てられなくなってしまいます。
ただし、ノルマはあくまでも期待値であり、絶対的な約束ではありません。もっと言えば、ノルマを守ることが労働者としての契約条件ではありません。
労働者は、労働基準法により守られていることをこれまでも紹介してきました。
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
(賃金の支払)第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
つまり、第16条により「1.会社が強制的に購入させるパターン」。つまり、損害賠償を予定する契約はそもそも違反になるため、労働者にノルマが達成できていないことを理由に金銭的要求はできません。
また、「3.ノルマ未達成のペナルティとして給与から商品代金を天引きするパターン」は、第24条にあるように、例外を除いて賃金は全額を支払わないといけないため、天引きはそもそも違法行為となります。
さて、私が悪質だと指摘した「2.従業員が過剰なノルマを達成できずに自主的に購入するパターン」は、どこが悪質だと思いますか?
「自主的に購入するパターン」は違法にはならない?
例えば、購入(自爆営業)するように脅されたことにより強要罪が成立すれば、相手は3年以下の懲役なる可能性まであります。(刑法第223条)
ところが、「自主的に購入するパターン」はどうでしょうか?
「自主的に」ということは、上司等の指示もなく、自らの判断でノルマ達成のために勝手に商品等を購入することになるため、実は会社にとって違法性はありません。
*ただし、自爆営業が慣習になっている場合は指示と認められる可能性がある。
このように、会社としては会社のことを1番に考えてくれる従順な社員(イエスマン)ほど扱いやすくなることが分かります。
このように、自爆営業は必ずしも会社がやらせているとは限りません。
さらに、今度は逆に自爆営業をした社員が会社から訴えられる危険性をはらんでいます。
自己保身のための自爆営業
先程は、会社の違法性についてのお話でしたが、それでは従業員の場合はどうでしょうか?
そもそも、自爆営業が必ずしも社員にとって不利益になるとは限りません。「ノルマがある」ということは、達成したときの報酬がある場合もあるのではないでしょうか?
オトナンサー:自社商品を強制購入させる「自爆営業」、なぜなくならない? 法的問題は?より
例えば、営業成績で月1000万円の売り上げを達成すれば、50万円の歩合給が上乗せで支給される条件で、自身の当月の売り上げが980万円だとします。あと20万円を自己負担で賄えば売り上げが1000万円となるため歩合給がもらえます。
このケースでは会社側から見ると、歩合給(50万円)から社員の自己負担分(20万円)を引いた30万円の損害があったと考えることができます。そのため、民事上、会社側から歩合給分を返還するよう請求されることもあり得ます。
つまり、ノルマを達成することでこういった歩合給などが発生する場合は、従業員は会社を騙したことになるため「詐欺罪」に該当する恐れがあります。
ただし、仮に歩合給が無かったとしても、自己保身のために自爆営業をした場合こういった可能性がPRESIDENT Online:ノルマ目的の「自爆営業」は詐欺罪になるで紹介されています。
事例:営業がノルマ達成のため自腹で商品を購入した。
刑事:会社に損害を与えていないため問題なし。だがノルマ達成が報酬につながっている場合は詐欺罪になりえる。
懲戒:会社の風紀を乱した等、理由がある場合は懲戒の対象になりえる。
このように、しっかりした会社であればあるほど、違法性のある行為をした従業員には厳しく対応される可能性があります。
本来、従業員であれば「ブラックな会社よりも、ホワイトな会社で働きたい!」と考えるものですが、ブラック企業で働くことが当たり前になってしまった人からすれば、簡単に基本的なルールまで違反をしてしまうかもしれませんね・・・
最後に
自爆営業は、本来なら売れなかったはずの商品を従業員に買わせているだけですので、将来性を考えるとかなり厳しいのではないでしょうか?
また、従業員としてもどこからが犯罪行為なのか分からなくなり、もし転職できたとしても「前の会社でやっていたから!」と、簡単にグレーゾーンに手を染める危険性があります。
最終的には、日本郵政のような大きな事件に発展する可能性がありますし、そもそもそれまでに倒産する可能性もあります。
と、言いつつ私自身、今年も郵便局で働いている親戚から2021年のお年玉年賀はがきの購入に協力することになるでしょう・・・
→毎年年賀状は送っているため、あくまでも必要な枚数しか買っていません。
個人的には、「買いに行く手間が省けてラッキー」ぐらいにしか思っていませんが、はたして違法なノルマになっていないか気になる所です。
*ちなみに、当然ですが「自分が欲しい!」と思って、勤めている会社の商品を購入した場合は自爆営業ではありません。
さて、自爆営業は郵便局だけではありません。アパレル・金融機関・コンビニなど、あらゆる職種で横行しています。
必要もない物を購入させられそうになったら、あなたならどうしますか?
コメントを残す