皆さんは、金融庁の審議会が作成した指針案についてはもうご存じでしょうか?
金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第23回)議事次第で「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案) というものです。(令和元年5月22日)
今回は、この報告書にある資産形成(考えられる対応)についてご紹介します。
そもそも、どんな報告書だったの?
そもそも、「金融審議会」とは内閣総理大臣の諮問(一定の機関や有識者に意見を訪ねて求める)に応じて、金融制度の改善など国内金融の重要事項について調査・審議をおこなう組織のことです。
今回の報告では、『「人口動態の特徴」と「収入・支出」などを参考に、今後の100年時代に備えましょう!』といった内容です。
→具体的には、「高齢社会における金融サービスのあり方」などが議題に上がっています。
こんな内容がまとめられています・・・
人口動態
1.長寿化
- 令和元年の平均寿命:男性約81歳・女性約87歳
- *健康寿命 :男性約72歳・女性約75歳
*健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限なく生活できる期間」のこと。
この、健康寿命と平均寿命の差を縮めることが課題と示されています。
2.少子化・晩婚化による単身世帯の増加
→60歳未満の持ち家比率も著しく低下している。
3.認知症の増加
- 2012年の65歳以上の認知症高齢者→約462万人(7人に1人)
- 2025年の 〃 →約700万人前後(5人に1人)と予想されている。
*ちなみに、認知症になると預貯金の引き出しが認められなくなることも指摘されています。
つまり、平均寿命は伸びましたが健康寿命との差が大きいにも関わらず、認知症や一人世帯が増え続けており、個人ではどうにもならないことが問題点としてみてとれます。
さらに、次は金銭面の問題が挙げられています。
収入と支出の変化
支出がほぼ収入と連動
- 30代半ば~50代・・・支出の低下が顕著。
- 65歳以上 ・・・横ばい。
また、私のようなフリーランスや自営業・転職組などは「退職金が見込めない」または「少ししかもらえない」人達に対する問題も指摘されています。
ただ、仮に会社員だったとしても・・・
- 収入減+退職金の減少
- 終身雇用の崩壊
- 保険料の増加
- 精神疾患
など、挙げればきりがありませんが会社員にとっても生きにくい社会であることは間違いないでしょう。
こうした中、年齢別の老後不安のアンケートが同じ報告内でも示されています。
- 20代~50代で共通している老後の不安はズバリ「お金」です!
- 60代~70代は、「健康」でした。
つまり、「現役世代は、すでに老後に金銭的な不安があることをすでに自覚している」ことを、政府としても理解していると言うことが分かります。
どんな方針を出したの?
さて、ここからが本題です。
そもそも、認知症になった時点で生活が厳しくなるのですが・・・
仮に認知症にならなかったとしても、一人暮らしの場合はその人の健康寿命が終われば、病院に通いながら大変な身体を引きずって生活をしなくてはいけません。
かといって、移動手段となる車も取り上げられているかもしれません。そうなれば、「タクシー?バス?ヘルパー?」の費用は捻出できるの?
ということで、とにかくお金の心配が一番にきます。そこで、対策についてこんな報告がなされています。
資産寿命を延ばす
簡単に言えば、「消費」ではなく「投資」という考え方です。
「ボーナスがでたから外食!」ではなく、少しでも長期の積立をしていく必要があると言うことです。
- 「消費」→使って終わり。
- 「投資」→消費に使わずに、お金が増える可能性のあるものに使うこと。
具体的には、「分散投資でリスクを分散して、20年以上保有すればプラスリターンも見込める・・・」
なんて、はっきりいって多くの日本人はチンプンカンプンではないでしょうか・・・
そもそも、お金の勉強を多くの人がしない日本で「投資の話しを薦める人」は、危険視される風潮までありますよね・・・
投資のリスク
しかし、政府が「投資の話しを薦める人」になりました。言っていることは正しいとは思いますが、もちろん元本割れするリスクはあります。
では、「投資」ときいてまず銀行に行きませんか?
ハッキリ言えば、銀行の手数料は高く、またよく分からない商品を薦められて言葉は悪いですが、「カモられる」ことが多いようです。(実際この報告書内では、それぞれの投資タイミングの「顧客に対する対応の方向性」まで示されています)
*ネット銀行(楽天銀行やSBI銀行など)で証券口座を開いて投資をする方が、手数料が安い。
なにがいいたいかといえば、いきなり「投資」と言われても素人には難しいということです。また、そもそも20年以上の積立投資となればまさに若い人だけの特権となります。
少なくとも、20年以上の積立というなら40代で始めた方がいいですよね・・・
→一般的には、「積立NISAや企業型確定拠出年金・個人型確定拠出年金」がこれに当たります。もちろん、個人で株式投資や金投資などもあり、「投資」とひと言でいっても様々なものがあります。
企業型年金は、すでに多くの会社で始められているため、よく分からず投資先を選んでほったらかしの方も多いのではないでしょうか・・・
私の場合は、個人事業主のため誰からも雇われていないので「個人型確定拠出年金」に加入しています。
今回の報告のなにが問題だったの?
ニュースの報道を受けて、ツイッターなどネット上ではかなりの批判が飛び交いました。
- 今の現状では老後が安心して過ごすことができない(多くの人がすでに知っていた)ことをデータを元に改めて算出した。
- お金の勉強をしたことがない人達が多いことによる混乱。
- 年金制度の崩壊を示唆しているが、制度を止めるとはいっていない。
など、理由はいろいろと考えられます。それでは、この報告書ではどんなことが具体的に示されているのでしょうか?
現役世代
私達、現役世代からすれば『「厚生年金」や「国民年金」を、そのまま自分のための確定拠出年金に当てたい!』と思うことが自然でしょう。
ですが、これからは「自分の年金(確定拠出年金)」と「今の高齢者の生活にかかる費用(厚生・国民年金)」の2つが必要だということを意味しています。
つまり、多額の保険料を納めて残った少ない給料から、私達は自身の年金を捻出しなくてはいけません。
それでは、「リタイア期前後」という表現がなされていますがこの時期の人達はどうすればいいのでしょう?
リタイヤ前後期
今回の報告では、この時期の人達は「マネープランを見直して」「再雇用は収入が下がる」ことを考慮して、「信頼できるアドバイザーに相談することが有効」と書かれています。
→「今さらいわれても!」と思う人が多いかもしれません・・・
少なくとも、ネットで情報を得ている人ならすでに分かっていた人もいるかもしれませんが、「裏切られた!」と感じた人もいたでしょう。
すでにリタイヤした高齢期
「資産の計画的な取り崩しを実行し、認知・判断能力の低下や喪失に備えて行動する時期」とあります。
さて、金融審議会 市場ワーキング・グループ「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)の一部を抜粋します。
老後の収入の重要な柱であり続ける公的年金については、少子高齢化という社会構造上、その給付水準は中長期的に低下していく見込みである。加えて、低金利環境が長く続く中、資産運用による資産形成の可能性を閉ざしてしまうことは、豊かな生活のための有力な選択肢の一つを放棄してしまうことになるのではないだろうか。長期・積立・分散投資ならば、金融の先端知識や手間はほとんど必要ない。人生 100 年時代というかつてない高齢社会においては、これまでの考え方から踏み出して、資産運用の可能性を国民の一人一人が考えていくことが重要ではないだろうか。
つまり、「自分で考えて資産運用をしないと老後が難しくなる」ことを示唆しています。また、「生活を補填できない公的年金を取りやめる予定がない」ことも示唆しています。
最後に
個人的な見解としては、「よくこの報告書を出せたな・・・」と思ってしまいました。現状を知ることは大事ですが、少なくとも現役世代の多くの人がすでに知っている内容ではないでしょうか?
また、解決策は基本的に長期投資しか示されていません・・・
かといって、公的年金を見直すのかどうかも示唆されず現状維持?
つまり国民に、「現状を政府は理解しているけど、自分でなんとかしてね!」と言っているようなものです。これでは確かに「国民をバカにしている!」と批判が殺到してもおかしくないでしょう・・・
雇用形態の多様化・公的年金の負担増・高齢者の医療負担など、これまで国の政策として推し進められてきました。ですが、今回の報告をニュースで聞いた人は「今の現状をまるで人ごと!?」のように感じとった人が多いのではないでしょうか?
ほぼ間違いなく、これから投資関係の詐欺がこれまで以上に増えるでしょう・・・
問題は、だまされた人がだまされたと気付かないことです。
子ども達が大人になった頃には、どうなっているのか?
不安はつきませんが、確定拠出年金は手数料の少ない投資先を優先して慎重に選んで下さいね。今後の思案が政府からだされるといいのですが、どちらにしろ老後の資産は自分でなんとかするしかないようです・・・
参考
金融庁:金融審議会市場ワーキング・グループ「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)
→https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20190522.html
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