これまで、2020年の国会で提出されている「全世帯型社会保障制度」の中間報告(案)についてご紹介しています。
→「年金分野」「労働分野」についてはこちらの記事で紹介しています。
共通して言えることは、高齢者のための対策はすでにほぼ固められており手厚いという印象だったことです。(それ以外の、例えばフリーランスなどの働き方などは、「情報がまとめられてから具体的な対策をこれから決めていく」という内容でした)
それでは、今回は『「全世帯型社会保障制度」の中間報告(案):医療分野』についてご紹介します。
医療分野の今後は?
(1)医療提供体制の改革
ここでは、地域医療の基盤の維持が示されています。
- 地域医療構想の推進
- 地域間・診療科間の更なる医師偏在対策
- 卒前・卒後の一貫した医師養成改定の整備
- 地域における看護職員をはじめとする医療関係人材の確保・育成
- 看護師・歯科衛生士等の復職支援・定着の推進
- 歯科・医師等の働き方改革
- 医療職種の役割分担の見直し
→地域差を伴う、「高齢化による需要増大」と「支え手減少」の進展といった環境変化に対応し、質の向上と効率改善を図り、地域で必要な医療を確保することが目的です。
他にも、安全で質の高い先端的医療の普及や、革新的な医薬品・医療機器等が生み出される環境整備など、「必要な医療を迅速に国民に届ける」という目標が掲げられています。
こういった目的と目標を見据えて、医療分野の改革は行われていくようです。
確かに、「国民に医療を迅速に届けることができる」ということは、地域格差もほとんどない状態だとイメージすることができます。
それでは、具体的にどういった改革が示されているのでしょうか?
(2)大きなリスクをしっかり支えられる公的保険制度の在り方
❶後期高齢者(75歳以上)の自己負担割合の在り方
- 後期高齢者(75歳以上。現役並み所得者は除く)であっても、一定所得以上の方については医療費の窓口負担割合を2割にする。(それ以外の人は1割)
- 高齢者の疾病・生活状況を踏まえて2割負担となる基準は検討されるが、2020年夏までには成案を経て速やかに措置を講じる。
とあります。
➋大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大
2022年に、段階の世代が75歳以上の高齢者となりますよね。
そして、「高齢者は慢性疾患により受診する人が多く、複数の疾病を抱えている」という特徴があります。
なにが言いたいかといえば、1つの大病院で治療が完結するいわゆる「病院完結型」の医療では病院が、パンクしてしまいます。
そのため、「それぞれの地域で完結できる「地域完結型」の医療にしていこう!」ということです。
たしかに、地域のかかりつけ医で病気が完治すれば言うことはありません。
それでは、具体的にどんな対策を実施するのでしょうか?
《1.他の医療機関から文書による紹介がない患者が大病院を外来受診した場合》
- 初診時:5,000円
- 再診時:2,500円以上
こういった定額負担を求める制度が、2016年の4月からすでに義務づけられています。つまり、紹介状のない人が大病院を受診してしまうと「特別料金」が課されます。
→今回の「全世帯型社会保障制度中間報告(案)」ではさらに、「患者の負担額を増し」・「対象となる病院もこれまでの病床数500床以上から200床以上の一般病院にまで拡大」される予定です。
《2.定額負担を徴収しない場合》
- 地域に他に当該診療科を標榜する保健医療機関がない場合
- 緊急その他やむをえない事情がある場合→おそらく、震災時なども例外に当たることになるでしょう。
さて、ここまで医療分野の報告について見てきましたが、少なくとも、私達の生活が楽になるとは思えませんでしたね・・・
負担が増えることは間違いない!
冒頭で紹介した、「(1)医療提供体制の改革」の内容をみると、確かに1つの病院ではパンクしてしまうことが目に見えているため、地域に根ざした医療が必要なことは理解できます。
特に、「かかりつけ医」との関係性は重要ですよね。
ただ、その具体的な方法が「後期高齢者からの負担」と「選ばれていない人(紹介状を持っていない人)が病院に受診したときの負担増し」です。
つまり、(1)でさまざまな問題点に対して解決するための「目的」や「目標」が掲げられていますが、まずは財源確保が先のようです。
繰り返しになりますが、その1つが後期高齢者からの負担の増大です。
確かに、本当のお金持ちなら多少の負担増しで、すぐに生活が困窮することはないでしょう。問題は、基準となった境目の人達です。
また、「高齢者の疾病や生活状況などを踏まえて生活等に与える影響を見極める」とありますが、「誰がどのように2割負担の免除対象になるのかを証明するのか?」が示されていません。
まさか、75歳以上のおじいさん・おばあさん自身に、証明させようとしているわけはないと信じたいですが・・・
→日本は申請主義が基本のため、ほとんどの場合、自分で申請しないと誰も動いてはくれません。(担当ケアマネがいれば、相談すればやってくれるかも)
最後に
医療分野については、さらなる私達への「負担増し」がメインとなっています。
負担増しの理由は、確かに書かれています。ただ、「だからお金ちょうだい」では政策と言えないでしょう。例えば、小さい企業なら、決められた予算で最大限の利益を得る方法を模索していきます。
また、個人であっても今や数億円を稼ぐ人がたくさんいますよね。
少なくとも、子どもでもない限り「お金が足りないからちょうだい!」は社会では通用しません。普通なら、お金を貸すだけのメリットを提示する必要があります。
「中間報告」とはいえ、今後どのような検討がなされ・法整備されているのか、人ごとではありません。気付いた時には、病院に受診できない環境になっているかもしれません。
なんて、今後についても少し考察してみました。
次回は、「予防・介護分野」についてご紹介します。
参考
全世代型社会保障検討会議中間報告(案)
→https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai5/siryou1.pdf
Hospitals File:紹介状について知りたい4つのこと
→https://hospitalsfile.doctorsfile.jp/reference_letter/
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