これまで、「全世帯型社会保障制度」の中間報告(案)についてご紹介してきました。
この中間報告書には、「年金」「労働」「医療」「予防・介護」という4つの分野について、今後の改革について報告されています。
全世帯型社会保障制度は、2020年の国会に提出されることになっています。
つまり、人ごとではないので皆さんも一度目を通しておくことをオススメします。
それでは、今回は最後の『「予防・介護」がどのように改革されていくのか』についてご紹介します。
「予防・介護」はこれからどうなっていくの?
これまで紹介してきた3分野についてまとめると・・・
- 「年金」:厚生年金の対象を拡大することで、年金制度を維持。→高齢者のための「手厚い改革」という政策。
- 「労働」: 〃
- 「医療」:病院完結型ではなく、地域完結型の医療へ。→「高齢者からも負担」+「一般病院にも紹介状が必要」になる。
それぞれ、このような内容でした。
それでは、「予防・介護」は今後どのような改革(案)がなされていくのでしょうか?
予防・介護の目標は?
「私達、国民一人一人がより長く健康に活躍することを応援すること」が目的です。
安倍政権の掲げる政策といえば、「1億総活躍社会」ですよね。それでは、具体的に見ていきましょう。
(1)保険者努力支援制度の抜本強化
そもそも、「保険者努力支援制度」というのは、保険者(都道府県と市町村)における医旅費適正化や保険事業等に対する取組みを評価し、基準を達成した「保険者に対して」国庫補助金を交付する制度のことです。
《国の予算規模》
- 県分:約500億円
- 市町村分:約500億円
→合計約1,000億円
そして、2020年も保険者努力支援制度のための予算は、約1,000億円となっています。
つまり、この制度を強化することが報告されています。
《具体的には・・・》
- 生活習慣病の重症化予防や個人へのインセンティブ付与、歯科検診やがん検診等の受診率の向上等については、配点割合を高める。
- 予防・健康づくりの成果に応じて配点割合を高める。
このように、「配分基準を明確にすることで強化していくこと」とされています。
保険者努力支援制度については、次回ご紹介します。
(2)介護インセンティブ交付金の抜本強化
また、知らない言葉が出てきましたね・・・
「インセンティブ」というのは、「やる気を起こさせる刺激や奨励金」のことです。ただし、介護費用の増加を抑える効果があるとして、「自立支援」や「介護要望」に力を入れる方針を打ち出したことがきっかけです。
つまり、「介護費用削減」が前提です。これを強化するということは・・・
そして、同時に今後は下記のような「介護予防等に資する取組み」が評価されることになります。
- 介護予防について、運動など高齢者の心身の活性化につながる民間サービスを活用し、地域の高齢者が集まり交流する通いの場の拡大・充実、ポイントの活用。
- 高齢者就労・活躍促進について、高齢者の介護助手への参加人数、ボランティアや介護助手へのポイント付与。
このように、交付金の配分基準にメリハリを実効的に強化することになります。
(3)エビデンスに基づく改革の促進
「エビデンス」という言葉をよく耳にしますよね。エビデンスというのは、「証拠」「根拠」という意味です。日本での発表なので、日本語で書いて欲しいのですが・・・
例えば、「レガシー:良く悪くも過去から受け継いだもの(遺産)」という言葉もありますよね。「国民に分かりやすく説明する義務」があると思うのですが、最近はこういう言葉であふれています。
さて、話しがそれましたが「根拠に基づく改革の促進」ですので、先程紹介した(1)(2)の改革を進め、疾病・介護予防に資する取組みを促進するに当たって、根拠に基づいて評価を取組みに反映していくことが促進されていきます。
- データ等を活用した予防・健康づくりの健康増進効果等を確認するため、エビデンスを確認・蓄積するための実証事業が行われる。
- 統計学的な正確性を確保するため、国が実証事業の対象分野・実証手法等の基本的な方向性を定める。
- その結果を踏まえて保険等に対して適切な予防健康事業の実施。
こういった、取組みが行われていきます。
(4)持続可能性の高い介護提供体制の構築
介護分野と言えば、私の専門ですが人材不足が深刻なことは皆さんご存じですよね。また、今後の介護サービス需要の伸びに対応するために、このような取組みがおこなわれていきます。
- 介護予防
- 「共生」・「予防」を柱とした認知症施策の推進
- 介護現場におけるロボット・ICT(情報通信技術)の導入加速化
- ペーパーレス化・効率化(簡素化・標準化・ICT活用)
- 自立支援に向けた介護事業者へのインセンティブ強化
- 介護サービスと保険外サービスの組合わせに関するルールの明確化
- 科学的なエビデンスの構築等による標準的な介護サービス水準に関する社会的な合意形成の促進等やそれらに基づく介護報酬
- 人員基準の見直し
→効果的・効率的・健全で持続可能性の高い介護提供体制の構築を進めるために実施されていきます。
一見、高齢者のための政策に見えますが、問題点はどこにあるのでしょうか?
本当に「元気な高齢者」を増やす政策!?
そもそも経費削減が目的
「予防・介護分野」を一言でいえば、「元気な高齢者を増やすための政策」ですよね・・・
しかも、その目的は「みんなで協力していい日本に!」ではなく、「費用を削減するために合理的に進めよう!」という意味合いが強いように感じます。
平たく言えば、「お金(経費削減)ですね・・・」
政府が考える政策をすることで、より多くの補助金をもらえることができるようになるため、それ以外の非効率とされた取組みはなくなるかもしれません。
エビデンスの根拠は?
もう一つ気になったのは、「エビデンス」です。
例えば、「根拠とする数字」はどこから持ってくるのでしょうか?
その1つとして、「保険者努力支援制度」による配点です。政府が定める制度を実施することで配点がもらえ、交付金がもらえる制度です。
最近、「健康マイレージ」という制度が始まりましたが、これも保険者努力支援制度により保険者は国から配点がもらえます。
保険者努力支援制度については、別の記事で紹介します。
すでに、不正統計問題で政府が出す数字の信用性は不透明な状態になっていますが、新しい指標を使えば過去の統計はおかしくても特に影響がない?
ちなみに、先日厚生労働省から「統計調査に関するお詫び」とした、雇用保険の追加給付に関するお知らせとお願いが私の自宅に届きました。
内容を確認すると、雇用保険を利用して各種給付した人に対して、「統計を計算し直して足りない分を補填するため口座を教えて下さい」ということでした。
詳しくは、別の記事でご紹介します。
最後に
「予防・介護分野」は、まさしく高齢者への政策でしたね。
さて、4分野について見てきましたが基本的に「高齢者に対する改革」と「お金の問題」が中心だったような・・・
「予防・介護分野」に対していうなら、すでに重度の高齢者はどうするつもりなのでしょうか?
人に限ったことではないですが、生き物は老化しその後、悲しいことですが「死の準備」に入ります。その1つが例えば認知症だと言われることもあります。
そもそも、体力が落ちることで「老衰」により亡くなります。
これは、「人権問題」とか「差別」とかではなく自然の摂理ですのでどうにもなりません。また、どうにかするものでもないでしょう。
高齢者介護をする中で、これまで人の死に接してきた経験から、個人的には「ピンピンコロリで死にたい」と思っています。これは、そもそも多くの人がそうではないでしょうか?
ここに、もう1つの疑問があります。
「介護予防」は確かに素晴らしい考え方ですが、はたしてどこまで「強要」するのでしょうか?
介護予防の対象を年齢で区切ることもできませんし、病気で区切ることもできません。そして、「元気な高齢者」は、無理をして作るものでもありません。
さて、今回の中間報告は「全世代」とありますが、その多くは「高齢者のため?」の政策であり、よくも悪くも「合理的な政策案」ではないでしょうか?あなたは、どう思いましたか?
参考
全世代型社会保障検討会議中間報告(案)
→https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai5/siryou1.pdf
ケア資格ナビ
→https://www.careshikaku.com/yobo_guide/incentive
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