自転車の「傘差し運転」が違法なことは、すでに多くの人がご存じですよね。
2015年6月1日に施行された道路交通法の改正により、「ながら運転」をして交通事故を起こし安全運転義務違反として検挙されるなど、自転車の運転に関する危険行為を3年以内に2回以上行い、検挙された人は「自転車運転者講習」を受けることが義務付けられています。
この「ながら運転」にはスマホだけでなく、例えば傘を差しながら自転車を運転することも当てはまります。
こういった理由から、雨の日は「レインウェア」一択となりますが・・・
今回は、「レインウェアが引き起こす危険」についてご紹介します。
傘差し運転のおさらい
傘差し運転をやってしまう人のために、簡単におさらいします。
そもそも、雨の日に自転車に乗りながら傘を差す行為は、「道路交通法」と「都道府県条例」で禁止されています。
どういうことかというと、道路交通法第71条(運転者の遵守事項)の6項
道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項
として、都道府県公安員会が定める規制に委任されています。
つまり、道路交通法には「自転車の傘差し運転ダメ!絶対!」とは書かれていませんが、「都道府県条例に従ってね!」ということになっています。
例えば、京都府では京都府道路交通規則第 12 条第9号 により・・・
傘を差して大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車若しくは自転車を運転し、又は傘を差した者を乗車させて大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転しないこと。ただし、交通の極めて閑散な道路において自転車を運転する場合にあつては、この限りでない。
とあります。
この規定により、京都府警察では傘差し運転をした者に対して、基本的には5万円以下の罰金が科されることが注意喚起されています。
ちなみに、「さすべえ」などの自動傘立て装置も禁止されています。もちろん京都府だけでなく、多くの都道府県で禁止されています。
「罰金」と「自転車運転者講習」を避けたいのなら、自転車の傘差し運転はやめたほうがいいでしょう。
それでは、本題の交通ルールを守ってレインウェアを着ているのに、なぜ危険があるのでしょうか?
レインウェアが危険?
国民生活センターが、自転車用レインウェアの運転時の危険性について2016年にこんな報告をしています。
皆さんは、「レインウェア」と聞いてどんな物を思い浮かべますか?
- レインコート :上下一体型で、コートように着るタイプ
- レインスーツ :上下が分離していて、それぞれ着るタイプ
- ポンチョ :上下一体型で、フードに首を通してかぶるタイプ
- ロングポンチョ:ポンチョと構造は同じだが、前かごの荷物も覆う前側の丈が長いタイプ
さて、それではどんな危険があるのでしょうか?
結論から言ってしまえば「視界の悪さ」と「駆動部への巻き込まれ」の2つです。
視界の悪さ
もちろん、雨が降っているわけですから視界は悪く、地面が濡れているためブレーキが効きにくいため、そもそも視界が悪く反応が遅れる可能性は高いですよね。
ただ、今回の話しはあくまでもレインコートの危険性についてです。つまり、「レインコートが原因で視界が遮断される」ということです。
レインウェアで視界が遮断される!?
正しく使わなかった場合
例えば、ロングポンチョは前カゴに留め具を掛けて利用します。
ですが、逆に言えば「前カゴの荷物を雨から守れるくらい、前側の丈が長い」ということです。そのため、カゴの留め具が外れてしまうと頭部に覆い被さってくるため物理的に視界が遮断されます。
冗談のようですが、実際に起こった事例です。
*風の強い日は、ロングポンチョは使用を避ける!
レインウェアのフードが視界を遮る
実は、「フード」にもいくつかタイプがあります。
例えば、「透明部分が付いているフード」や「フードなどを絞る紐(ドローコード)付いているフード」、「ボタンや固定用テープ等が付いているフード」などがあります。
簡単に言ってしまえば「フード調整機能が付いているレインウェア」と「フードに透明部分が付いているレインウェア」があります。
フードの構造が視界にダイレクトに影響することは、誰もが経験済ですよね。
もしも、フードの調整機能を使わずにレインウェアを使用すれば、左右の視界はフードで遮られてしまいます。
それでも左右を確認しようと思えば、左右確認のたびに手でフードを押さえなければ、確認がほぼ不可能になります。
ちなみに、フードに透明部分があれば調整機能がなくても、例えば透明部分から右側10m先の車が見えることが紹介されています。ただ、後述しますが透明の部分があるフード使用者の事故事例があります。
つまり、「顔の動きにフードが付いてくるレインウェア」を選択する必要がより安全だといえます。
そして、もう一つの危険は「自転車にレインウェアが巻き込まれる」ことです。
レインウェアが自転車に巻き込まれる!?
「ポンチョ」や「ロングポンチョ」の場合
自転車にも、さまざまなタイプがありますよね。
例えば、私は以前折りたたみ自転車を使っていましたが、「前カゴ」はありましたが荷台はありませんでした。
それでは、そんな自転車に「ポンチョ」、「ロングポンチョ」を着て乗ったらどうなると思いますか?
残念ながら、これらのレインウェアの裾が車輪に接触し、そのまま巻き込まれる可能性があります。
ポイントは?
国民生活センターの報告によれば、「前かご」・「荷台」・「チェーンカバー」がある自転車は、前後輪ともレインウェアは接触しませんでした。
ところが、「前かご」・「荷台」・「チェーンカバー」がない自転車では以下のような実験結果が報告されています。
- ポンチョ:後輪と接触する
- ロングポンチョ:前輪と接触する
それでは、ポンチョタイプを選ばなければ安全なのでしょうか?
実は、そういうわけでもありません。
レインスーツの「ドローコード」が巻き込まれる!?
フードにも使われることがある、絞り機能がある紐「ドローコード」は、絞れば絞るほど紐が出てきてしまいますよね。
この、ドローコードが裾部分にも使用されていた場合、ペダルを漕いだときチェーンに巻き込まれる可能性があります。
また、「ドローコードが巻き込まれる事故」の盲点として、レインウェアの収納袋が挙げられています。
私もたまに見かけることがありますが、レインウェアの収納袋を自転車の前カゴに入れている人がいますよね。特に、梅雨時期はいつ雨が降るか分からないため必要になるでしょう。
ただ、収納袋のドローコードは絞った状態だと26㎝~80㎝になるものまであります。自転車の前カゴの多くは、格子状になっているためドローコードがカゴの隙間から前輪に接触することになります。
レインウェアの収納袋のドローコードが原因で、こんな事故まで発生しています。
事故事例
2015年6月:10代(男性)
自転車で登校中、ハンドルにぶら下げていた雨がっぱを入れた袋が前輪に絡まり転倒。一回転し、頭部からコンクリートの地面にたたきつけられ鼻骨を骨折した。
ヘタすれば、命に関わるような事故でした・・・
最後に
どのレインウェアを選ぶにしても、自転車対策はする必要があります。また、少しでも安全に走行できるレインウェアを選ぶ必要があります。
と言うのも、冒頭でもお伝えした「透明部分があるフード」でも、事故が起こっているためです。
事例
2012年10月:50代(女性)
自転車でレインジャケットを着用して走行中、自動車にはねられる事故がありました。
→女性が使用していたレインウェアは、フードの先端の数センチは透明になっているタイプでしたが、顔を横に向けてもフードは顔と一緒に動きにくいため、左右が確認しにくいことが指摘されています。
もしも、これまで雨の日に傘差し運転をしていたのならば、レインウェアには慣れていないでしょう。
また、「これまで大丈夫だったから!」という理由で、自転車とレインウェアの危険な組み合わせで雨の日に自転車に乗っている人もいるでしょう。
そうそう自転車が一回転することはないと思いますが、「レインウェア」や「ドローコード」が車輪などに巻き込まれれば、転倒は避けられないでしょう。
もしも、それが集団登校中や車が接近している時に引き起こされてしまったらどうでしょうか?
自転車の安全対策は、万全ですか?
参考
ウェザーニュース:自転車の傘差し運転は道交法違反? 雨の日の自転車で気をつけるポイント
→https://weathernews.jp/s/topics/201808/230145/
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