加湿器で感染リスク? 「エアロゾル感染とレジオネラ」

 

前回、「エアロゾル感染」についてご紹介しました。

エアロゾルというのは、「細かい霧やしぶき」のことで、この水分に細菌やウイルスなどが含まれたエアロゾルが空気中に浮遊し、吸い込むことで感染することをエアロゾル感染と呼びます。

つまり、エアロゾル感染は「細かい水しぶきが発生する場所」で引き起こされます。

ただ、エアロゾル感染は入浴施設などだけではなく、例えば3密の環境でも引き起こされます。そして、多くの人が冬場になると使用する加湿器でも発生させてしまいます。

今回は、「私達が簡単にエアロゾルを発生させてしまう加湿器」についてご紹介します。

 

「エアロゾル感染」については、こちらの記事で紹介しています。

「空気感染」・「飛沫感染」、それから・・・「エアロゾル感染」!?

 

そもそも加湿器は、感染症対策になるのでは?

冬になると喉が乾燥してしまうため、多くのお家で加湿器を設置するのではないでしょうか?

これは、特に太平洋側では雪や雨がほとんど降らないために乾燥した日が続いてしまうためです。

例えば、日本の夏場は高温多湿で空気中に水分が放出されている状態のため、空気中の水分と結びつきその重さでウイルスは浮遊が難しくなります。

ところが、冬場は乾燥しているため飛沫を含んだウイルスは空気中に浮遊してしまうことになります。

→特に冬場は「空気感染」や「飛沫感染」が引き起こされやすくなる。


とはいえ、夏場はウイルスなどが浮遊しにくい環境とはいえ、床や物などには付着しているため感染のリスクがあります。

なにより、夏場は「暑さ」や「脱水」のため、免疫機能が低下することで夏風邪などを引き起こしすい状態が続くため、そういう意味では1年中体調管理は必須です。

例えば、2019年には9月にインフルエンザが流行し学級閉鎖になった学校がありました。これは、ワールドカップや海外旅行など外国人と触れる機会が増えたためと考えられています。

そもそも、インフルエンザは1年中世界のどこかで流行しています。(日本では11月~3月/南半球では4月~9月頃)

つまり、「国際化が進めば進むほどインフルエンザは1年中気をつけるべき感染症」ともいえるでしょう。

さて、そんな感染症対策の一つとして冬場に設置する加湿器ですが、なぜエアロゾル感染症が危惧されているのでしょうか?

 

加湿器とエアロゾル

そもそも、加湿器は本当に効果があるの?

「アイリス暮らし便利ナビ」で、こんな実験が紹介されています。

 

約8.5畳のワンルームで実験!

「加湿器使用前」と「加湿器使用後」の比較のために、加湿器使用から30分後の温度と湿度の測定実験がおこなわれました。

 

~結果~

使用前:温度20度 / 湿度38% ⇨ 30分後:温度19度 / 湿度50%

この実験結果では、たった30分加湿器を稼働しただけで湿度が12%もアップしていました。

それでは、そもそもそれぞれ広さが違う部屋の加湿は、どのように対策すればいいのでしょうか?

 

部屋の加湿を十分にするには?

例えば、お部屋が広ければ最大加湿量が多い加湿器を選択する必要がありますが、「和室」か「洋室」かでも必要な最大加湿量は違ってきます。

*ちなみに、最大加湿量というのは「室温20℃、湿度約50%(30%の場合もある)の屋内で1時間当たりに放出できる最大水量」のことです。

「最大加湿量:300ml/h」と表示があれば、1時間に約300mlの水を空気中に放出できるという意味。

最大加湿量 和室 洋室
200ml/h 3畳 6畳
300ml/h 5畳 8畳
400ml/h 7畳 11畳

このように、同じ加湿器でも洋室の方が和室よりもより広い部屋を加湿することができます。

部屋の広さよりも最大加湿量が高いものを選ぶと、さらにすばやく加湿できる。

さて、このように加湿器は確かに効果があることが分かりました。それでは、なぜそんな便利な加湿器がエアロゾル感染の温床になってしまうのでしょうか?

 

加湿器がエアロゾル感染の一因?

私達が快適に感じる湿度は、55~60%だと言われます。つまり、この適した湿度に調節するために加湿器を使うことになりますよね。

さて、冒頭でお伝えしたようにエアロゾル感染は「水しぶきが発生する場所」で引き起こされます。加湿器と言えば、当然「水」をいれますよね。

つまり、例えば「給水する水」や「加湿器本体」にウイルスや細菌などが付着していれば、水蒸気とともに部屋中にばらまかれてしまう可能性があります。

ちなみに、エアロゾル感染は水分を含む粒子により感染するため、水蒸気はまさにうってつけだといえるでしょう。

ただし、加湿器にもさまざまなタイプがありますよね。そんなエアロゾル感染として、特に注意が必要な加湿器が「超音波加湿器」です。

 

加湿器選びで感染症被害が拡大する危険性とは!?

加湿器は、大きく分けて4種類!

 

❶スチーム式(ヒータータイプ)

⇨タンクの水を湧かしてお湯にし、蒸気を放出することで加湿するタイプ。

  • お湯を沸かすため、そもそも殺菌しながら加湿している状態。
  • 吹き出し口が熱くなるため、小さいお子さんなどがいる場合は注意が必要。
  • 消費電力が高い。

*スチーム式は、火傷の心配と電気代がかかりますが、エアロゾル感染の危険性は小さい。

 

➋気化式

⇨フィルターが水を含み、そのフィルターに風邪を当てて湿った風を送り出すことで加湿するタイプ。

  • タンクの容量が大きく、こまめに水を足さなくてもいい。
  • 消費電力が少ない。
  • 冷たい風がでてくる。

*ただし、気化式はフィルターに雑菌が繁殖していれば、ファンの風によりエアロゾル感染の危険がある。

 

❸超音波式

⇨超音波で水を震わせ、水を細かい粒子にして放出して加湿するタイプ。

  • 値段が安くオシャレな物が多い。
  • 水に含まれる塩素なども全て放出していますため、手入れを怠ると雑菌が繁殖しやすい。

*フィルターもなければ、熱で殺菌できるわけでもないため、「水」や「加湿器本体」が汚染されていれば、汚染されたエアロゾルをそのまま放出することになる。

 

❹ハイブリッド式

⇨2つの機能を組み合わせた加湿器で、「気化式+ヒータータイプ」「超音波+ヒータータイプ」があります。

 

気化式+ヒータータイプ

→濡れたフィルターに温風を当て、効率よく水分を蒸発させる加湿するタイプ。

  • 気化式よりも早く加湿できる。
  • 消費電力が高く、音がうるさい機種もある。

 

超音波+ヒータータイプ

→ヒーターで加熱した水を霧状にして放出して加湿するタイプ

  • 水を加熱するため雑菌が繁殖しにくい。
  • 消費電力が高い。

このように、加湿器は大きく分けて4種類あり、エアロゾル感染症に注意するなら「加熱式」を選択した方がいいかもしれません。

ただ、どの加湿器を選ぶにしても「汚れ」や「ぬめり」があれば、それは細菌が繁殖している証拠です。

そのため、どんな加湿器を選択するにしても、日々の手入れは必要になります。

ちなみに、新型コロナウイルスのエアロゾル感染については、国立保健医療科学院によれば、「可能性が示唆されている段階でまだ確認されていない段階」です。

ただし、加湿器のエアロゾル感染で危険な細菌はすでに分かっています。それが、「レジオネラ属菌」です。

 

レジオネラ属菌ってなに?

厚生労働省では、「レジオネラ対策ページ」が開設されています。

レジオネラ属菌は、入浴施設などの水を使用する設備に付着する生物膜(バイオフィルム・ぬめり)に生息するアメーバなどの体内で大量に繁殖します。
人への感染は、これらの衛生管理の悪い設備から発生したエアロゾル(空中に浮遊している小さい粒子)にレジオネラ属菌が含まれ、これを吸入することによって起きることが知られています。
レジオネラ属菌は、人から人へは感染しません。

このように、厚生労働省でも注意喚起がなされています。

 

「国立感染研究所」が発表した事例

国立感染研究所の発表では、2017年12月に大分県国東市(くにさきし)の特別養護老人ホームで80歳代の男性が2人レジオネラ肺炎を発症。

そして、2018年1月には、ショートステイ利用の90歳代の男性が1名発症し、亡くなられています。

老人ホームの加湿器の水タンク内にぬめりが確認され、22万個/100mlのレジオネラ属菌が検出。

→このように、加湿器はエアロゾル感染症の原因となる危険性があるため、毎日のお手入れは必要不可欠。

 

最後に

今回は、「加湿器がエアロゾル感染の原因になる危険性がある」ことをお伝えしました。

レジオネラ属菌は、60度のお湯なら5分間で殺菌することができます。基本的に、毎日「加湿器の水を入れ替え」たり、「容器の洗浄」を欠かさないことが大切です。

もちろん、加熱式の加湿器であっても加湿器の「汚れ」や「ぬめり」はレジオネラ属菌が繁殖しやすい環境であることは間違いありません。

怖い感染症は、新型コロナウイルスだけではありません。くれぐれも、新型コロナウイルスだけに振り回されないようにご注意下さい。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です