50代以上が特に危険! ダニ媒介感染症の1つ「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」?

 

前回、マダニについての記事を紹介しました。実は、このマダニに吸血されたことで死者がでています。

そして、マダニは日本中に分布しており屋内の場合、1年中活動しています。

今回は、ダニが媒介者となる危険な感染症「SFTS」についてご紹介します。

 

マダニついては、こちらの記事で紹介しています。

マダニは身近な存在!? 除去方法や対応を間違えると危険! 

 

ダニが媒介する感染症?

そもそも主な「ダニ媒介感染症」といえば・・

  1. 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)→治療方法はない。
  2. クリミア・コンゴ出血熱       →治療方法はない。
  3. ダニ媒介脳炎            →ワクチンはあるが、国内では未承認。
  4. 回帰熱               →抗生物質による治療。
  5. 日本紅斑熱             →抗生物質による治療。
  6. ツツガムシ病            →抗生物質による治療。
  7. ライム病              →抗生物質による治療。

などがあります。

そして、上記のように治療が確立していない感染症があります。このために、ダニ媒介感染症による死亡者まで出しています。

*ちなみに、ツツガムシもダニの仲間です。参考までに下記にダニの分類を載せておきます。

 

《ダニの分類》

このように、ダニは昆虫ではなくクモなどの仲間ということになります。

また、「ダニ」とひと言でいっても「マダニ」・「ツツガムシ」・「ヒゼンダニ」など、厳密にはそれぞれ違いますが同じダニの仲間ということになります。

それでは、「SFTS」の危険性についてご紹介します。

 

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

severe fever with thrombocytopenia syndrome=SFTS

  • severe ・・・厳しい
  • fever・・・熱
  • with・・・~による
  •  thrombocytopenia ・・血小板減少
  • syndrome・・・症候群

 

どんな病気?

2011年に中国で感染症として流行していることが報告された病気です。(日本・中国・韓国で患者発生が確認されている)

ちなみに、中国や韓国から最近日本に入ってきたものではなく、もともと日本国内に存在していました。

→というのも、患者から分離したウイルスの分析結果から、日本で見つかったSFTSウイルスの特徴が中国の流行地域で見つかったSFTSウイルスとは、異なっていることが分かっているためです。

*日本では、2013年1月にSFTSの患者(2012年の秋に死亡)が確認されて以降、毎年60名前後の患者が報告されています。

 

症状

6日~2週間の潜伏期間を経て・・・

  • 発熱
  • 全身倦怠感
  • 頭痛・筋肉痛
  • 消化器症状(食欲低下・嘔気・嘔吐・下痢・腹痛)
  • 神経症状(意識障害・失語)
  • 出血症状(皮下出血・下血)
  • 重症化すると死亡することもある。

こういった、さまざまな症状が現れます。

 

この感染症のなにがそんなに怖いの?

重症化すると死亡することもある感染症ですので、もちろんそれだけで怖いのですが・・・

冒頭でお伝えしたように有効な薬剤やワクチンがなく対処療法(熱が上がったら下げるなど)しかありません。

また、マダニだけでなくヒトからヒトへの感染(血液等の患者体液との接触による)も報告されています。

 

《まだ確定はしていませんが・・・》

犬や猫など、一般的に動物がSFTSに感染しても発症することはまれです。ですが・・・

①ヒトのSFTSで認められる症状を呈していたネコに咬まれた人が、SFTSを発症し亡くなられた事例が確認されています。

→ネコに咬まれたことが原因で発症したかどうかは、明らかにはなっていない。

 

②他にも、SFTSウイルスに感染し発症している、動物の血液などの体液に直接触れた場合、SFTSに感染するかどうかもまだ否定されていません。

*ちなみに、SFTSウイルスはシカ・イノシシ等の野生動物(アライグマ・アナグマ・イタチ・ニホンザル・ウサギなど)や狩猟犬でSFTSの抗体が見つかっています。


このように、自然界では特に珍しい病気ではないのかもしれませんね・・・

→抗体があるということは、「過去にSFTSウイルスを保有するマダニに吸血され、感染したことがある」ということです。

 

どれくらいの症例があるの?

国立感染症研究所によると、2019年5月29日現在で421人の患者が報告されています。

  • 男女比は1:1
  • 年齢中央値は74歳
  • 発症は、5月~8月が多い(2016・2018年は、10月まで報告数が多かった)
  • 今の所、死亡例は50歳以上のみ。(感染はどの年代でも見られる)

こういった特徴があります。

それでは、感染状況についてもう少し詳しくグラフでご紹介していきます。

 

発症状況

*国立感染症研究所で発表されている2019年5月29日時点の発症数をそれぞれグラフ化しています。

 

《図1 男女別の患者状況》

図1から、「生存例」と「死亡例」の合計

  • 男性総数・・・208人
  • 女性総数・・・213人

発症数は男女別でみると、ほとんど差がないことが分かります。そして、死亡例についても男女とも30人を少し上回りますが、ほとんど差がありません。

男女別では、致死率は約18%です。(約10人に2人は亡くなるため、決して低い数字ではありません)

ただし、年齢別にみると感染がある年齢に集中していることが分かります。先程、「死亡例は50歳以上のみ」とお伝えしましたが・・・

 

《図2 年代別の患者状況》

図2から年代別に患者数を確認。

50代から感染者が増え始め、60代~80代が爆発的に感染している。(20代~40代の約10倍)

 

50代以降の年代別の致死率

  • 50代 ・・・患者数:27人(死者:3人)  →致死率:約11.1%
  • 60代 ・・・患者数:106人(死者:11人)→致死率:約10.3%
  • 70代 ・・・患者数:128人(死者:18人)→致死率:約14%
  • 80代 ・・・患者数:117人(死者:29人)→致死率:約24.7%
  • 90代~・・・患者数:20人(死者:5人)  →致死率:約25%

80代と90代が約25%ともっとも多く亡くなられていることが分かります。ですが、重要なポイントがあります。

 

《ポイント!》

確かに、致死率は決して低い数値ではありません。ですが、そもそも病原体の種類によって差があるとはいえ、感染症の病原体は人の体内にすぐに進入するわけではありません。

→例えば、ライム病なら約48時間かかります。(そもそも、全てのマダニが感染源になるわけではありません)

つまり、いかに早くマダニを正しく除去できるかが‘’カギ‘’になります。(できれば皮膚科で除去してもらって下さい)

マダニについては、こちらの記事で紹介しています。

マダニは身近な存在!? 除去方法や対応を間違えると危険! 

それでは最後に、SFTSの都道府県別の届出数を確認してみましょう。

 

都道府県別の発生状況

2019年5月19日時点で24の地域でSFTSの届出がされています。

 

《図3 都道府県別の症例数》

図3から、鹿児島での症例数が群を抜いて多いことが分かります。そして、関西地域の多くで発生していることが分かります。

もちろん、報告として上がっているだけですので、地域や総数はもっと多いでしょう。特に関西に住んでいる場合は注意が必要です。とはいえ、旅行やキャンプで他県に行くこともあるかもしれません。

また、そもそも気温の上昇によりマダニの生息域は今後も広がっていくことが予想されます。

 

最後に

「SFTSは怖い感染症・・・」であることは間違いありません。ただ、放置せずにしっかり対処ができれば症状が大きく変わります。

何度もお伝えしますが、そもそも全てのマダニが感染源をもっているわけではありません。

 

《マダニは視認できるので、チェックが可能!》

  1. 外出先から帰ったら衣類のチェック(子どもは特に念入りに)
  2. 入浴時に全身のチェック
  3. マダニに咬まれていたら、ピンセットでマダニの頭部のできる限り皮膚に近い部分をつまんで、ゆっくり引き抜く。
  4. 皮膚科受診(引き抜いたマダニも容器にいれて、一緒に持っていく)

特に、50代を過ぎたら注意が必要です。犬の散歩など外出後は、くれぐれもご注意下さい!


参考

感染症TODAY
http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-180214.pdf

厚生労働省:ダニ媒介感染症
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164495.html

感染症予防接種ナビ:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A 一般向け
http://kansensho.jp/pc/article.html?id=QA16072502#ln01

NIID 国立感染症研究所:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/sa/sfts.html

 

 

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