「抗体検査キット」と「抗原検査キット」 厚生労働省が承認したのはどっち?

 

皆さんは、2020年5月13日に承認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断のために使用する「抗原迅速キット(製品名:エスプライン SARS-CoV-2、製造販売業者:富士レビオ株式会社)」について、ご存じでしょうか?

今回は、「厚生労働省が承認した抗原検査キット(新型コロナウイルスの感染の有無を調べる)」と「すでに普及している抗体検査キットの信頼性」についてご紹介します。

 

抗体検査については、こちらの記事でも紹介しています。

抗体検査でなにが変わる? 新型コロナウイルスの未知の部分とは?

 

厚生労働省が承認した「抗原検査キット」ってなに?

「SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」を厚生労働省が2020年5月13日に発表しています。

重要な部分ですので、抗原検査キットの特徴について少し触れておきます。

この抗原検査キットは、酵素免疫反応を測定原理とした「イムノクロマト法」と呼ばれる検査方法で、新型コロナウイルスの抗体の有無が診断されます。

なにより、PCR検査のように特別な検査機器が必要なく、誰もが簡単に短時間(約30分間)で検査結果を得ることができます。

『この抗原検査キットで「陽性」となった場合は、確定診断することができる』とガイドラインで明記もされています。

ただし、注意事項があります。

  1. 無症状者に対して、スクリーニング検査目的の使用
  2. 陰性確認等目的の使用

こういった場合は、そもそもPCR検査の検出時よりもウイルス量が必要なことから簡易検査には向きません。

そのため、あくまでも「医師が新型コロナウイルス感染症を疑う症状がある」と判断した者に対して、必要性を認めたときに使用することがこの抗原検査キットの用途となっています。

*陽性ならほぼ確定することができるが、陰性の場合は精度が低くPCR検査が必要。


仮に、全ての人に簡易抗原検査をしたとすれば、陽性の人まで陰性が出てしまういわゆる「偽陰性」の人達を大量に出してしまうことになります。

そもそも、例えばPCR検査の結果は診断直後までの結果でしかないため、検査した病院で感染してしまっている可能性も十分にあります。

以上が、厚生労働省が承認した抗原検査キット(新型コロナウイルスに、検査時点で感染しているかどうかを調べるための検査)についてです。

一方で、「抗体検査キット(新型コロナウイルスに、これまでに感染したことがあるかどうかを調べるための検査)」については、衝撃的な研究結果が出ています。

 

ワンポイントアドバイス! ~そもそも、「SARS-CoV-2」ってなに?~

少しややこしいですが、新型コロナウイルスの「感染症名」と「ウイルス名」は違います。

 

①感染症名:WHOが2020年2月11日に正式名称を「COVIT-19」にすると発表しています。

  • CO=corona
  • VI=virus(ウイルス)
  • D=disease(疾患)

 

②ウイルス名:国際分類ウイルス委員会が2020年2月7日までに「SARS-CoV-2」と名付けました。

→以前、流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こすウイルス(SARS-CoV)の姉妹種という意味で名付けられました。

*「COVIT-19」を引き起こすウイルスは、「SARS-CoV-2」ということになります。

 

抗体検査キットとは?

先程は、「抗原検査」ですので現時点で新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べるための検査です。(体内に新型コロナウイルスが存在してるかどうかを調べる検査)

一方、これから紹介するのは「抗体検査」です。

抗体検査というのは、「すでに新型コロナウイルスに感染したことがあり、その抗体を持っているかどうかを調べるための検査」のことです。

さて、すでに抗体検査も簡易に行うことができますが、東京大学アイソトープ総合センターでは、2020年5月31日に「新型コロナウィルス抗体測定協議会」においてこのような発表をしています。

そもそも、抗体検査には2種類があります。

 

2種類の抗体検査

①簡易検査(イムノクロマト法)

  • 1人1個
  • 感度はいいが定性的(「誰が見ても同じ認識・評価ができるものではない」という意味)
  • ノイズ(偽陰性が多い)

 

②化学発光(自動化血液検査機)

  • 1日最大500件(検診の残余血清でも検査できる)
  • 感度がよく定量的(状況・状態を数値化し客観的に認識できる)
  • ノイズが少ない
  • 偽陰性を判定できる。

以上の違いから、抗体検査は簡易キットよりも機械を使った精密検査の方が、より確実に抗体の有無を調べる検査であることは言うまでもありません。

さて、この「簡易抗体検査」と「検査機」とで検査結果の信頼性について検査されました。

 

福島の医療従事者680名が検査対象!

簡易キットを使った抗体検査では、「51名が陽性(7.5%)」となりました。

ところが、検査機を使用して抗体検査(定量精密測定)をしたところ「6名が陽性(0.88%)」という結果になりました。

つまり、「検査キットでは約13人中1人が陽性と判断」されましたが、「検査機では、113人中1人が陽性と判断」されたことになります。

当然、検査機の方が正確に診断が出るため、簡易キットは検査機の約9倍、偽陽性が出現してしまうことになります。

このように、簡易キットと一言でいっても「簡易抗原キット」と「簡易抗体キット」では、その用途も信頼性も変わってきます。

少なくとも、抗体検査は簡易キットではなく検査機を使用した方が信頼性が高いといえるでしょう。

 

最後に

記事によっては、「抗体検査」のことをいっているのか「抗原検査」のことをいっているのか分からなくなってしまうことがあります。

私の読解力が足りないのか・・・

今はその記事は消されていましたが、元の情報を確認すると、上記のように『抗体検査の「簡易抗体キット」と「検査機」では、結果が大きく変わる』という内容でした。

その情報が、「抗体検査についての説明か?」それとも、「抗原検査についての説明か?」解釈を間違えないようにご注意下さい。

そして、普及しつつある簡易検査キットの使い方を間違えないようにして下さいね。

 

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