町中にあふれるようになった防犯カメラ。
最近の事件でもなにかと「防犯カメラの映像により・・・」なんてよく聞くようになりました。
そして、2018年12月に警察庁は通学路に捜査用のカメラを「全国で配備」と発表しました。
今回は、「捜査用のカメラは子どもを守る砦になるのか?」
通学路における犯罪推移から捜査用カメラのメリット・デメリットについて紹介します。
そもそも子ども達が犯罪にどれくらい巻き込まれているの?
図1では、13歳未満全体での子どもたちの犯罪被害件数を表わしています。
図1
そもそも、13歳未満の子ども達が被害にあった全体の件数は、H19~28年の10年間で3万人以上→2万人をきり減少傾向にあります。
それでは、殺人や今回のテーマである防犯カメラの効果が期待されている誘拐件数はどうなっているのでしょうか?
図2
図2では、殺人の件数が平成20年がもっとも高く他の年次はほぼ横ばいに推移しています。
そして、略知誘拐は平成26年・28年は100件を超えむしろ増加しています。
このことから、
- 13歳未満の子どもの全体的な被害件数はH19年~28年(10年間)で1万人以上減少している。
- 略取誘拐は、増加傾向にある。
- 子どもが殺人事件に巻き込まれる件数はほぼ横ばい。
になっていることが分かります。
13歳未満の子どもたちが登下校中、犯罪に巻き込まれている!?
登下校中の通学路で子ども達が犯罪に巻き込まれた件数はH29年で全国で644件もありました。単純に計算しても、毎日1件以上なにかしらの被害にあっていることが分かります。
また、平成30年に発生した新潟県の7歳の児童が犠牲になった事件から平成30年6月に「登下校防犯プラン」が閣議決定されました。その一環として通学路に捜査用カメラが運用されることとなりました。
登下校防犯プランとは?
- 地域における連携の強化
- 通学路の合同点検の徹底及び環境の整備・改善
- 不審者情報等の共有及び迅速な対応
- 多様な担い手による見守りの活性化
- 子共の危機回避に関する対策の促進
という5つの柱から構成されています。
今回の防犯カメラについては、「2.通学路の合同点検の徹底及び環境の整備・改善」に掲げられています。
また、政府の「登下校防犯ポータルサイト」による取組の支援がはじまりました。
*新設されたポータルサイトで、関係省庁の施策等の情報を集約・発信し、地域の取組支援がおこなわれています。
これらのことから、捜査用カメラありきの政策ではなくこれまでの対策をさらに強化した上での対策だという内容になっています。
捜査用カメラはどのように運用されるの?
新宿区の例
①通学路にカメラを設置。(民家は映さず通学路のみ)
②モニターする人を置かない。(そもそもモニターがない)
③記録期間は、約1週間ごとに上書きされていく。
④警察の公文書による請求があった場合等に限定して画像の外部提供をおこなう。
⑤記録装置は施錠管理する。
市によりカメラの台数や記録の書き換え周期など捜査用カメラの取り扱いは少しずつ異なります。
*ちなみに、東京都では5年計画で1校あたり5台。計6500台を設置する予定になっています。
他にも、大阪府箕面市の場合は異例の発表をしています。
全小学校の通学路に70m毎に防犯カメラ(750台)を設置。
→費用は1.5億円かかるとされています。
捜査用カメラのデメリット
メリットとしては、
①犯罪抑止につながる。
②事件があった場合、有力な手がかりとなる。
など、効果はざまざまなことが考えられます。
捜査用カメラは有効性が認められているからこそ取り付けることが決まったので当然でしょう。
それでは、デメリットにはどういったことがあるのでしょうか?
デメリット
①捜査用カメラの維持・管理・修繕費用。
・どんなものにも対応年数が存在します。つまり、いつかは捜査用カメラも全て取り替える必要がでてきます。
・また、20年・30年もつといわれているLED電球も1ヶ月と持たないこともよくあります。同じように、定期的に捜査用カメラの状態を把握する必要がでてきます。
・いつ・誰が・どのように点検・修理・取り替えをおこなうか決める必要があります。
・ただ、今回のように大量の捜査用カメラを設置するとなると個人では限界があります。
②対策をしていない場所に犯罪が一極集中していく可能性。
・「通学路の設置」ということなので、死角になる場所が必ずでてきます。そういった隙間を狙われる可能性が高くなります。
・また、今回の通学路の防犯カメラ設置によりさらにカメラがない範囲が狭められることになります。つまり、通りを外れたらなにが起こるか分からないという海外のようなことが、特定の地域に集中する可能性があります。
③個人情報が侵害される危険性
・個人でも簡単に防犯カメラを外部から見ることができるアプリなどがあります。そういった外部からの操作をおこなえないようにしてあるかがポイントになります。
④設置してあるだけなので、事件が起こった後でしか役に立たない。
例えば、突発的な犯行なら防ぐ術がありません。カメラを気にしない犯人の場合も同様です。つまり、事件が起こってからしか使えません。
*防犯カメラは安心感につながりますが、過信してはいけないことが理解できたかと思います。
結局、子ども達を守るのは機械ではなく「人」です。
これからも、見守り活動や危険な場所の把握など子ども達を守るための取り組みや強化が必要とされています。
まとめ
- 子どもが巻き込まれる犯罪は減少しているものの、殺人はほぼ横ばい。略取誘拐は、増加傾向にある。
- 捜査用カメラ(防犯カメラ)は、犯罪抑止につながるがそれ以外の場所では増加する可能性がある。
- 捜査用カメラを過信しすぎない。(現場を映すことしかできない)
- 捜査用カメラの修繕・維持・管理も視野に入れる必要がある。
参考
警察庁:第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動
→https://www.npa.go.jp/hakusyo/h29/honbun/html/t2320000.html
通学路に捜査用カメラ 全国で配備へ→https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181223/k10011757401000.html
産経WEST
→https://www.sankei.com/west/news/140831/wst1408310006-n1.html
新宿区
→http://www.city.shinjuku.lg.jp/kodomo/kyoseisaku03_002020_01.html
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