先日、蚊が大量発生しないための「薬剤を使う以外の対処」について紹介しました。

特に、子どもがいるご家庭では子どもが刺された部分を掻きむしってしまうこともあるため、注意が必要です。

なぜなら、蚊に限ったことではないですが、虫に刺された箇所を掻きむしる「かき壊し」をしてしまうためです。

大人でも激しく掻きむしってしまうことがあるため、子どもならなおさら痒くてかきむしってしまいます。

今回は、そんな「かき壊し」についてご紹介します。

 

蚊の発生を防ぐための普段からできるチェックポイントはこちらの記事で紹介しています。

蚊が大量発生!? 屋外に放置すると大変なことに・・・

 

「かき壊し」ってなに?

なんらかの原因で、痒い患部を掻きむしって爪で皮膚に傷を作ることで「かき壊し」が起こります。

  • 虫刺され
  • 乾燥
  • 皮膚炎
  • かぶれ
  • アレルギー
  • アトピー
  • ストレス

などなど痒くなる原因は様々ですが、ひと言でいえば「皮膚トラブル」です。

そして、「掻く」ということは、当然皮膚を傷つけることになります。

それでは、そんな皮膚にはどんな働きがあるかご存じですか?

 

皮膚の仕組み

人の身体全体を覆う皮膚は、なんと畳1枚分(成人:約1.6㎡)もあります。

そして、実は「人体で最大の臓器」と呼ばれることもあります。

皮膚があることで、紫外線や感染症など外部からの様々な刺激・衝撃から私達の身体を守ってくれています。また、発汗などによる体温調節をしてくれています。

まさに、生命維持のためになくてはならない機能を皮膚は担っています。

 

皮膚の3種構造

①表皮:厚さが約0.2㎜しかないとても薄い膜

表皮は内側から・・・

  1. 基底層(きていそう)
  2. 有棘層(ゆうきょくそう)
  3. 顆粒層(かりゅうそう)
  4. 角層(かくそう)

たった0.2㎜の中で、4種類の層からできています。


さて、そんな表皮にある角層は角質細胞がレンガ状に積み重なっています。

角層は・・・

  • 体内の細胞が外界に失われていくことを防ぐ。
  • 外界からの刺激をブロックする。

といった機能があります。

ところが、こういった表皮のバリア機能に異常があれば当然、外からの刺激は浸入してきます。そして、浸入されてしまえば、炎症などを引き起こしやすくなります。

 

②真皮

触った・熱い・冷たい・痛い(痒い)などの刺激に対するセンサーが付いています。

また、真皮には血管が走っています。

  • 汗をかくことで体温を下げる・寒いと立毛筋を収縮させて毛を立たせることで寒さを防ぐ。
  • 表皮への酸素や栄養の補給
  • 皮脂や汗を分泌し、皮膚表面に皮脂膜(保護膜)を作る。

 

③皮下組織

外部刺激(衝撃を和らげる)機能があります。

  • クッションの役割
  • 断熱・蓄熱といった保温機能(体温維持)
  • エネルギーを脂肪のかたちで蓄える

このように、皮膚には外部刺激からのバリア機能や体温維持機能など生命維持の要として、様々な役割を担っています。

ところが、今回の記事で紹介している「かき壊す」という行為は、こういった皮膚の機能をまさに自ら壊す行為になります。

chezbeate / Pixabay

 

「掻く」となにが起こるの?

実は、痒みが起きる詳しいメカニズムはまだよく分かっていません。

ただ、原因の1つとして「皮膚に存在する、肥満細胞から分泌されるヒスタミンが痒みを引き起こす」という、重要な役割を果たしていることが知られています。

 

掻いてしまうと・・・

  1. ヒスタミンが痛みや痒みを知覚する「知覚神経」に作用。
  2. その刺激が痒みとして脳に伝えられる。
  3. 刺激は神経の末端にも伝えられ、神経ペプチドと呼ばれる神経伝達物質を放出。
  4. 神経ペプチドは肥満細胞を刺激し、さらにヒスタミンを分泌させる。

つまり、「掻くことで痒みが増幅されどんどん痒みが拡がっていく」という悪循環に陥ります。

 

掻いてはいけない理由

  • 皮膚を傷つける
  • 皮膚症状(皮膚炎)の悪化
  • 痒みを増長させる

このように、痒みに負けて掻き壊した場合ひどくなっていきます。

3D_Maennchen / Pixabay

それでは、具体的にどんなことが起こるのでしょうか?

 

「掻き壊し」をするとどうなるの?

掻き壊しをするということは、自ら皮膚のバリア機能などを破壊することですので、様々な影響があります。

掻き壊すことで・・・

  • びらん(表面が少しあれている状態)
  • 浸出液
  • カサブタ(痂皮)

といった状態になり、湿疹病変に進行してしまう場合があります。


痒みを伴う場合は繰り返してしまうため、「なかなか治りにくい」という特徴があることは多くの方が実体験としてもっていることだと思います。

ほかにも、「とびひ(伝染性膿痂疹:でんせんせいのうかしん)」と呼ばれる特定の細菌による皮膚の感染症により、名前の通り掻くことで一気に拡がる感染症になる可能性もあります。

 

「とびひ」については、こちらの記事で紹介しています。

特に夏場は要注意! 伝染病「とびひ」により子ども達の皮膚が危ない!?

 

痒み対策はどうすればいいの?

①保湿対策

  • 保湿剤
  • 白色ワセリン
  • ボディークリーム
  • ボディ乳液

など、自身にあった物を使う必要があります。

私の場合は、尿素系のハンドクリームなどを付けると、逆に痒みが激しくなったことがあるため、それぞれにあったものを選ぶ必要があります。

 

②汗をかいたらすぐに流す

汗をかくことじたいは皮膚の保湿機能を高めるため、むしろ痒み防止になります。

ところが、汗をかいたまま放置してしまうと痒みが出やすくなってしまいます。

→洗い流すか、タオルで拭く。

 

③刺激の少ない素材の衣服を着用

化学繊維(ポリエステルなど)で出来た衣服は、皮膚への刺激が強い。

→冬に着ることが多い吸湿発熱素材(ヒートテックなど)を使った肌着は温かいですが、皮膚を乾燥させ痒みを助長する恐れがあります。

→天然素材(リネンやコットンなど)で出来た衣服がベスト!

 

④入浴時のナイロンタオル

ナイロンタオルで洗うと摩擦が大きいため気持ちいいかもしれません。

ですが、頻繁に使用していると皮膚を傷つけるため、皮膚のバリア機能が低下していきます。

→天然素材のタオルがオススメですが、それでも刺激を感じるときは手で優しく洗います。

 

⑤垢すり

入浴中など、皮膚表面を過剰にこする「垢すり」は皮膚にダメージーを与えてしまいます。また、乾燥させる原因にもなるため、皮膚トラブルがあるときは垢すりは止めた方がいいでしょう。


このように、皮膚トラブルがある場合はとにかく痒みがある患部への刺激は絶対NGとなります。

とはいえ、悪化すると分かっていても、つい触ってしまいますよね・・・

そうならないために、かき壊す前に皮膚科へ受診した方がいいでしょう。(子どもなら小児科)

病院で抗ヒスタミン剤(服用)軟膏を処方してもらうことができます。

また、痒みを抑える手段として「患部の冷却」という方法もあります。

ただし、冷やしすぎにはご注意下さい!

 

最後に

皮膚の痒みには、必ず原因があります。

そして、「触らない(掻かない)」ことが基本的な対処法です。

そして、掻きむしることで皮膚が損傷し炎症を起きた後にシミとなって残る色素沈着を起こす場合もあります。

当然、シミが増えれば老けてみられるなど、外見を変えてしまう原因の1つになります。

「掻き壊し」は、百害あって一利なしですので、子どもが掻きむしるような様子があれば、まずは小児科へ受診してあげてくださいね。


参考

maruho
https://www.maruho.co.jp/kanja/hifukiso/kouzou/mv/

かゆみナビ
https://www.kyowakirin.co.jp/kayumi/about/construction.html

eo健康
https://eonet.jp/health/article/_4102296.html#anchor02

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です