先日、乾電池のプラス部分を歯で分離した息子の話を紹介しました。電池内の液がまともに口に入りすぐに病院に駆け込みましたが幸い大事には至りませんでした。
その時の様子は、こちらの記事で紹介しています。
さて、息子は幸い電池部分は飲み込んでいませんでした。しかし、もし電池を間違って飲み込んでいたらどうなっていたのか?
今回は、「なぜ電池の誤飲が怖いのか?」について紹介します。
乾電池だから飲み込まない?
単3~単5電池
そもそも、「小さいボタン電池ならともかく乾電池は大きいので誤飲しない!」と思っていませんか?
さすがに単1とか単2電池は本当に大きいので飲み込むことはないと思いますが・・・
ただ、例えば息子が乾電池の液をあびることになった電池は、もともとテレビのリモコンにはめていた単4電池でした。他にも、エアコンのリモコンやおもちゃの電池など、子どもの身の回りには以外とたくさんの単3・単4電池が使われています。
*一番小さい単5電池というものもありますが、個人的には家電量販店以外ではほとんどみたことがありません。
この、単3・4電池の飲み込み事故や液漏れをなめてしまう事故が発生しています。(電池の大きさからすれば単5電池の方が危険です)
「電池」と「電池が使われているリモコンなどの電化製品」を、子どもの手の届く所には置かないで下さいね。
さて、そんな乾電池を飲み込むとどうなると思いますか?
乾電池を飲み込むと・・・
❶ほぼ無症状で40~72時間後に排便される。→問題なし!
➋電池が1ヶ所に留まり破損→潰瘍や消化管穿孔を起こす可能性がある。(消化管のどこかに穴が開く)
❸食道内に留まる→組織が圧迫されて腐食を起こす可能性がある。
❹さいあく、死に至る。
→一刻も早く病院へ!!
乾電池の液漏れを舐めると・・・
- 悪心(おしん):吐き気のこと
- 嘔吐
- 頭痛
- 口から喉の焼けるような痛みがある
といった症状が出ることがあります。冷たい牛乳・水を飲ませ異常があれば受診が必要になります。
*目や皮膚に付いた場合は皮膚炎を起こすため、流水で洗ったあとは様子をみる必要がある。
そして、乾電池の種類によっては失明の危険性があります。
【電池の種類】
電池種類 | 電解液 | 性質 | 人体への影響 |
マンガン乾電池 | 塩化亜鉛を主体とする水溶液 | 弱酸性 →金属を腐食する |
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アルカリ乾電池 | 水酸化カリウムを主体とする水溶液 | 強アルカリ性 →皮膚・金属を侵す |
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ニッケル系乾電池 | 水酸化カリウムを主体とする水溶液 | 強アルカリ性 →皮膚・金属を侵す |
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つまり、受診するさいは「どの乾電池を飲み込んだか?」または「どの種類の電池の液をなめたのか?」「目に入ったのか?」について医師に伝える必要があります。(受診時に、飲み込んだ物と同じ電池を持っていくと伝わりやすい)
上記の表をみると、マンガン乾電池の方が危険度が低いように見受けられますが皮膚炎は起こします。飲み込んだ場合は、必ず受診が必要です。
→問題があるのに、「自然に排泄されるだろう」と放っておくとどうなるかは前述した通りです。くれぐれもご注意下さい・・・
それでは、ボタン電池の場合はどうでしょうか?
ボタン電池の誤飲
電池の誤飲事故といえば、ボタン電池を想像する人も多いのではないでしょうか?
実は、ボタン電池も乾電池と同じように種類があります。しかも、乾電池よりもたくさんの種類があります。
- アルカリマンガン電池
- 水銀電池
- 酸化銀電池
- リチウム電池
などさまざまな種類があります。
ボタン電池を飲み込むと・・・
❶食道に詰まらなければ、たいていは排便として排出される→問題なし!
➋ボタン電池が1ヶ所に長時間留まると放電が起こり・・・
- 食道・胃の粘膜を腐食(火傷のような状態)
- 胃の中で壊れると胃に穴が開く。
→水銀電池が壊れると水銀中毒を起こすこともあります。
❸まれに、嘔吐・胸の痛み・咳・腹痛・下痢が起こることもある。
❹さいあく、死に至ります。
ボタン電池の記号と種類は、このように分類されています。
【ボタン電池の記号と種類】
記号 | 種類 |
SR | 酸化銀電池 |
LR | アルカリマンガン電池 |
MR,NR1 | 水銀電池 |
BR、CR、GR、CL | リチウム電池 |
ボタン電池を買うときは、この記号を見ながら買うことになります。特に、子どものおもちゃにはボタン電池がたくさん使われているので、100円ショップなどに買いにいった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
*もし、ボタン電池を誤飲した場合は飲み込んだ物と同じタイプの電池を受診時に持っていくと、症状の説明など、スムーズに話しが進むかもしれません。
ボタン電池の危険性!
例えば、鶏肉の上にボタン電池を置くと20分程でくぼみができるほどの「化学やけど」が発生します。これだけ短時間でやけどが発生し、しかもリチウム電池の方が影響もかなり強くなります。
電気分解(放電)により漏れ出すまでにかかる時間は・・・
- 水銀電池→4時間
- アルカリマンガン電池・酸化銀電池→8時間
つまり、どこかに引っかかっていた場合、時間が経つほど深刻な状態になり水銀電池の場合はボタン電池を取り出すための猶予が4時間程しかありません。
*鶏肉の実験でも分かるように、ボタン電池に20分接触していた部分はくぼみができるほどのやけどが発生しています。ボタン電池が詰まった場合、どんなに急いで処置をしたとしても、やけどは免れないでしょう・・・
電池全般に言えることですが・・・
- 誤飲したら、一刻も早く病院へ!
- 電池の液漏れを誤飲した場合は、しっかり洗い流してから冷たい牛乳や水を飲み体調が悪ければ病院へ!
緊急時の連絡先
かかりつけ医への相談が一番ですが、もし休診などで利用できなかった場合・・・
《食中毒情報センター》
- 大阪中毒110番(24時間対応)→072-727-2499
- つくば中毒110番(9時~21時対応)→029-852-9999
《小児救急電話相談》
- 電話番号→#8000
- 対象地域→全国
《救急安心センター》
- 電話番号→#7119
- 対象地域→東京・北海道・愛知・奈良・大阪(24時間年中無休)
《救急:119》
- 緊急事態ですので、救急車も考慮する必要があります。
最後に
子どもはなにをするか分かりません。
《小児の電池誤飲報告数》
- 平成25年:20件(誤飲事故の3.8%)→誤飲事故の総数:531件
- 平成26年:21件( 〃 5.9%)→ 〃 :357件
- 平成27年:18件( 〃 6.3%)→ 〃 :286件
*もっとも多い小児の誤飲は、平成25~27年の3年間で毎年「タバコ」が最多です。
さて、事故件数の総数は格段に減少していますが残念ながら電池による誤飲件数は少し減少していますが、全体の割合でみると増加しています・・・
電池の誤飲は命に関わります。いつでも小児科のかかりつけ医と連絡がとれる状態だと安心ですが、実際にはそういうわけにもいきません。いざというときは、救急車を読んで下さいね。
参考
乾電池使用機器の電池室・端子
→http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/denchi/pdf/anzen-guide090430.pdf
日本中毒情報センター
→https://www.j-poison-ic.jp/110serviece/
厚生労働省:家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告
→https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11123000-Iyakushokuhinkyoku-Shinsakanrika/0000168871.pdf
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