皆さんは、「VDT作業」というものをご存じでしょうか?
おそらく、仕事に限らずほとんどの人が毎日関わっています。
今回は、「VDT作業が心身に影響を与えることで健康被害がでるVDT症候群」についてご紹介します。
VDT作業は誰もがしている?
VDT作業は、1985年12月に当時の労働省が「VDT作業のための労働衛生上の指針について」を定め、行政指導をはじめなければならないほどの社会問題となりました。
そして、2002年4月には厚生労働省が「VDT作業のための労働衛生上の指針について」を全面的に改め「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が定められるまでになりました。
それでは、そもそもVDT作業とはどういった作業のことをいうのでしょう?
VDT作業って結局なに?
VDT作業
- Visual・・・視覚
- Display・・・表示
- Terminals・・・端末
の略です。
つまり、VDT作業というのは液晶等の画面表示機器とキーボード・マウス・タッチ画面等の入力機器による情報端末を使用する作業のことをいいます。
→パソコン・スマホ・タブレットなど、こういった情報端末を使った作業=VDT作業。
ちなみに、VDT作業のガイドラインはあくまでも労働者の働き方に対するルールが定められています。
- 連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設けること。
- 連続作業と連続作業の間に10~15分の作業休止を設けること。
- 1連続作業時間は1時間を越えないようにすること。
- 他の作業を組み込むか、また他の作業とのローテーションを実施することなどにより1日の連続VDT作業時間が短くなるように配慮すること。
こんなガイドラインがあることをほとんどの人が知らないでしょうし、知っていても仕事に追われて何時間もVDT作業をすることは常習化してしまっているのではないでしょうか?
ただ、VDT作業は仕事だけではありませんよね。ゲームやSNSの使用など、1日のうち仕事以外でもどれだけVDT作業をされているでしょうか?
こういった過度なVDT作業により健康被害が実際に起こっており、こうしたVDT作業が原因で引き起こされている健康被害のことをVDT症候群と呼ばれています。
VDT症候群にはどういった症状があるの?
VDT症候群による健康障害の症状は大きく3つに分けることができます。
- 目の症状・・・充血・眼精疲労・ドライアイ・目の痛み・視力低下などが挙げられます。また、前回の記事で紹介した「スマホ老眼」も悪影響の1つになります
- 身体の症状・・・首の痛み・肩こり・腰痛・身体のだるさ・腱鞘炎など
- 心の症状・・・イライラ・抑うつ・不安・食欲減退・睡眠障害など
→「スマホ老眼」については、こちらの記事で紹介しています。
少し古い調査ですが、厚生労働省が実施していた2008年調査を最後に終了している「技術革新と労働に関する実態調査」についてご紹介します。
技術革新と労働に関する実態調査
VDT作業に対する労働者の適応状況・職場環境・労働衛生管理の実態などを、1998年から2008年まで5年ごとに調査されていました。
全国で事務、販売などに従事する約16,000人を対象に行われ、2009年に最後の調査結果が発表されています。
《調査結果》
- VDT作業でストレスを感じる・・・34.6%
- VDT作業で身体的な疲労や症状がある・・・68.6%
《症状別》
- 目の疲れ・痛み・・・90.8%
- 首・肩こり・痛み・・・74.8%
- 腰の疲れ・痛み・・・26.9%
- 頭痛・・・23.3%
- 背中の疲れ・痛み・・・22.9%
《労働1日当たりの平均VDT作業時間》
身体的な疲労や症状を感じている人の割合
- 4時間以上6時間未満・・・81.7%
- 6時間以上・・・84.9%
VDT症候群は、長時間同じ姿勢で1つの画面を凝視し、身体の各部分に負担がかかり引き起こされると言われます。
さて、スマホがフィーチャーフォン(ガラケー)の普及率を上回ったのは、2013年からでした。ちなみに、初代iphonから始まったスマートフォンは2007年に発表されています。
つまり、この調査結果が発表された当時は「VDT作業」と言えば、パソコンが主流だったことになります。
それから10年以上の月日が流れ、誰もがスマホやタブレットを持っている時代になり「どこでもVDT作業」なんてこともできるようになりました。
それでは、VDT症候群を防ぐためにはどういった対処が必要なのでしょうか?
VDT症候群を防ぐには?
VDT症候群になる原因は、VDT作業をやり過ぎてしまうからです。どれくらいがやり過ぎに当たるかは、個人差もあるため一概には言えませんが・・・
とはいえ、理想的なVDT作業環境は示されています。
《理想的なVDT作業環境》
- 目の位置からディスプレイまでは40㎝以上離す。
- 画面は水平より下に視線が来るように設置。
- 肘の角度が90℃以上で、キーボードまで楽に手が届く。
- イスの座面は37~43㎝で調整できるものを選ぶ。
- ひざの裏と座面に指が入る程度のゆとりをもつ。
- 机は高さを60~72㎝で調整できるものを選び、調整できない場合は65~70㎝の高さのものを選ぶ。
- 足の裏全体が床に接するようにし、付かない場合は足代を利用する。
他にも、極端に明るい場所・暗い場所を避け、文字が無理なく読める程度の屋内の明るさにする必要があります。
また、乾燥を避けるために空調が目に直接当たらないようにするといった工夫も必要になります。
最後に
VDT作業は、生活の一部になりました。なぜなら、ただ一重に「とても便利だから」です。
ただ、政府統計「平成30年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」によると、このような結果になっています。
満10歳~満17歳の青少年の93.2%が「インターネットを利用している」と回答しています。
そのうち、63.2%がスマホから接続しています。
最近では、学習用タブレットの普及も進み、遊びだけでなく勉強にも利用されるようになりました。これは、国の政策としてICTを活用した学習カリキュラムが進められていることも関係しています。
*2020年度からは新学習指導要領が始まり、小学校段階でプログラミング学習が導入されるなど、ICTの活用がこれからどんどん進められていくことになります。
このように、VDT作業は今や大人だけでなく子どもも人ごとではありません。また、子どもへの影響は一生に関わる可能性もあるため特に注意が必要になるでしょう。
→低年齢化により、影響が心配されています。また、「依存症」といった問題もあります。
VDT症候群には、くれぐれもご注意下さい。
参考
厚生労働省:VDT作業
→https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo30_1.html
健康経営
→https://jinjibu.jp/kenko/keyword/detl/647/
宮原眼科医院:目の病気
→https://www.eyedoctors.jp/ecpmb/disease/d17.html
文部科学省:第3期教育振興基本計画を踏まえた,新学習指導要領実施に向けての学校のICT環境整備の推進について(通知)
→https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1407394.htm
コメントを残す