「特定非常災害」 なんのための特別措置法? 

 

令和元年の台風19号の報道で「特定非常災害」という聞き慣れない言葉が出てきました。

今回は、「特定非常災害ってなに?」という紹介です。

 

特定非常災害の経緯

特定非常災害は、特定非常災害特別措置法(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律)に定められています。

→1996年(平成8年)6月7日に成立し同年6月14日に施工。

特定非常災害の指定は、今回の台風19号により6例目となりました。

  1. 阪神淡路大震災(1995年)
  2. 新潟中越地震(2004年)
  3. 東日本大震災(2011年)
  4. 熊本地震(2016年)
  5. 西日本豪雨(2018年)
  6. 台風19号(2019年)

このように、この法律ができてすでに20年以上が経過しており、初めて指定されたのは阪神淡路大震災が初めてでした。

これだけでも、阪神淡路大震災がどれだけ大きな震災だったのかが分かるのではないでしょうか。

それでは、特定非常災害に指定される災害には、どういった基準があるのでしょうか?

 

「特定非常災害」はなにを保証してくれるの?

法律の名前になっているように、「特別措置が必要な特定の災害」に指定されるということになります。

それでは、特定非常災害に指定されるとどういった特別措置がなされるのでしょうか?

 

特定非常災害特別措置法 第一条

第一条 この法律は、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るため、特定非常災害が発生した場合における行政上の権利利益に係る満了日の延長、履行されなかった義務に係る免責、法人の破産手続開始の決定の特例、相続の承認又は放棄をすべき期間の特例、民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)による調停の申立ての手数料の特例並びに建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)及び景観法(平成十六年法律第百十号)による応急仮設住宅の存続期間等の特例について定めるものとする。
(特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定)

とあります。

つまり、本来なら期間が過ぎれば罰則があるような事柄であっても、「猶予期間をあたえる」ということになります。

行政上の権利利益を守る役割!

 

免除・保留・延長の例

  • 運転免許のような許認可等の有効期間が延長
  • 事業報告署の提出などの法令上の義務を履行できない場合の免責期限の設定
  • 法人に係る破産手続き開始の決定が保留
  • 相続放棄等の熟慮期間が延長
  • 民事調停の申立手数料の免除

など、まさに行政上の権利利益の保全のための特別措置がこうじられることになります。


このことから、激甚災害指定のように金銭的な保証だけでは不十分であることが見てとれるのではないでしょうか。

激甚災害については、次回の記事で紹介します。

それでは、特定非常災害はどういった災害の時に指定されるのでしょうか?

 

特定非常災害の条件とは?

特定非常災害特別措置法 第二条

第二条 著しく異常かつ激甚な非常災害であって、当該非常災害の被害者の行政上の権利利益の保全等を図り、又は当該非常災害により債務超過となった法人の存立、当該非常災害により相続の承認若しくは放棄をすべきか否かの判断を的確に行うことが困難となった者の保護、当該非常災害に起因する民事に関する紛争の迅速かつ円滑な解決若しくは当該非常災害に係る応急仮設住宅の入居者の居住の安定に資するための措置を講ずることが特に必要と認められるものが発生した場合には、当該非常災害を特定非常災害として政令で指定するものとする。この場合において、当該政令には、当該特定非常災害が発生した日を特定非常災害発生日として定めるものとする。

とあります。

つまり、「著しく異常かつ激甚な非常災害」に認められるかどうかで決まります。

  • 死者・行方不明者・負傷者・避難者等の多数発生。
  • 住宅の倒壊等の多数発生。
  • 交通やライフラインの広範囲にわたる途絶。
  • 地域全体の日常業務や業務環境の破壊。

これらの諸要因を総合的に勘案し、「著しく異常かつ激甚な非常災害」と認められたときに特定非常災害発生日が指定されます。

Hermann / Pixabay

 

今回(令和元年)の台風19号は、なぜ特定非常災害に指定された?

  • 大雨特別警報が過去最多の13都道府県に発令
  • 死亡・負傷者等の人的被害
  • 住家被害の程度が多数
  • 多くの被災者が避難生活を余儀なくされている。
  • 被災地域全体の日常生活や業務環境に多大な支障が生じている。
  • 復旧・復興には時間を要することが見込まれる。

このように、特定非常災害に指定されるにはこういった要因が総合的に加味されています。

 

具体的には、どういった保証があるの?

さて、特別非常災害特別措置法は、行政上の権利利益の満了日の延長等に関する各種の特別措置を政令で定めることで災害時の措置を迅速に発動できるものです。

それでは、具体的にどれだけ猶予期間があるのでしょうか?

 

総務省が発表している報道資料より

◎行政上の権利利益の満了日の延長

免許証のような有効期限が付いた許認可等の行政上の権利利益について、更新等のために必要な手続きの有効期限。

令和2年3月31日まで延長することができる。

 

◎期限内に履行されなかった行政上の義務の履行の免責

履行期限のある法令上の義務

  • 事業所報告の提出
  • 薬局の休廃止等の届出

など。

令和2年1月31日までに履行されれば、行政上・刑事上の責任は問われない。

 

◎法人の破産手続開始の決定の特例

特定非常災害により債務超過となった法人に対しては、支払不能等の場合を除き・・・

令和3年10月9日まで破産手続開始の決定をすることができない。

 

◎相続の承認または放棄すべき期間の特例

台風19号による特定非常災害発生日(令和元年10月10日)において、災害救助法が適用された区域に住所を有していた相続人が対象。

相続の承認・放棄すべき期間を令和2年5月29日まで伸長。

 

◎民事調停法による調停の申立ての手数料の特例

特定非常災害発生日(令和元年10月10日)に災害救助法が適用された区域に住所を有していた者が、今般の災害に起因する民事に関する紛争について・・・

令和4年9月30日までの間に民事調停法による調停の申し立てをする場合は、申立手数料が不要。

 

最後に

毎年、想定外の災害が発生するようになってきました。

そもそも、今回の台風は年間降水量の3~4割程度をたったの2日間程で降ってしまいました。

災害が起こらないように、「ここまでは耐えられる!」という想定を仮定しながら対策を講じていくことになりますが、その根本から覆る雨量でした。

どこまで想定しないといけないのか、今回の災害ではその災害対策の根本的な想定が覆ったことはいうまでもありません。

今回の情報が、少しでもお役に立てれば幸いです。


参考

内閣府 防災情報のページ
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hourei/tokubetsu_houritsu.html

総務省報道資料
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyokan01_02000095.html

 

 

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