●この記事では、「携帯電話を圏外にする機器とそれを利用した対策」について説明しています。
コロナ禍で、持続化給付金などを利用した還付金詐欺が横行しています。
そんな中、2020年に銀行ATMに警察が初めて「携帯電話を圏外にする機器を設置」したことが発表されていました。
今回は、「携帯電話を圏外にする機器と詐欺対応」について紹介します。
なぜ、ATMで携帯が使えないと詐欺の対策になるの?
警察庁のホームページを確認すると「還付金詐欺」についてこのように説明されています。
・ 還付金詐欺
1 「還付金」をATMで返還することは絶対にありません。
「携帯電話を持ってATMへ行け」は詐欺です! 2 特に、ATMの操作に不慣れな高齢者を対象として被害が多く発生しています。
携帯電話をかけながらATMを操作しているご高齢の方を見かけたら、詐欺の被害を疑い、一声掛けていただくようお願いします。
警察庁が指摘しているように、「携帯電話をかけながらATMを操作している高齢者」。
これが、還付金詐欺を受けている人の特徴として説明されています。
つまり、「そもそも携帯電話を圏外にしてしまえば犯人が連絡が取れないためATMを操作できなくなる=犯罪を防げる」という考え方からなされた対策のようです。
それでは、そもそも「携帯電話を圏外にする機器」とはなんなのでしょうか?
「携帯電話を圏外する機器」には厳しいルールがある!?
まず、この「携帯電話を圏外にする機器」というのは、通信抑止装置(ジャマー等)のことで総務省が設置の許認可をしています。
ただし、設置出来る場所は・・・
- 劇場・コンサートホール
- 医療施設内(ICU・CCU・検査室)
- データセンター
- 銀行ATMコーナー
- 試験場(教室)
これらに限られています。
つまり、銀行ATMに通信抑止装置が設置出来るのは、総務省が認可しているためです。
とはいえ、もしも通信抑止装置を無線局の免許を受けずに設置し、運用した場合は・・・
→1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される場合があります。(電波法110条第1項)
さらに、無線設備の機能に障害を与えて無線通信を妨害した者は、 5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処される場合もあります。(電波法第108条第2項)
このように、電波法により厳しく定められています。
*通信抑止装置の設置場所は総務省が認可している場所に限られ、さらに免許がなければ法律違反となる。
ところで、「警察が初めて設置した」とありますよね。
これは、どういう意味なのでしょうか?
警察は初めてでも、以前から設置は進められていた!?
令和2年4月21日 総務省「無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準等の一部を改正する省令案について」より。
2020年4月1日時点で、実験試験局として開設されている携帯電話等抑止装置の無線局数はこのようになっています。
- コンサートホール:198
- 銀行 :10
- 運転免許試験場 :14
合計:222局数
そもそも、平成10年から実験試験局として携帯電話等の着信音による迷惑防止を目的に実施されてきました。
geralt / Pixabay
ただし、以下の要件がなければ免許が付与されることはありません。
① 携帯電話等の利用を制限することがコンサートホール等公共の福祉の利益に必要と認められる場所であって、やむを得ないと判断される場合
② 第三者の通信を妨害しないよう、抑止装置の電波がむやみに外部へ漏れないよう対策を講じていること
③ 設置場所で携帯電話等の利用が制限されていることを利用者に周知などの対策を講じていること
このように、許可されている施設なら必ずしも設置してもいいわけではありません。
設置する合理的な理由があり、必要な場所以外にまで通信妨害が引き起こされないように対策されていることや、そもそも利用制限がかかっていることを周知していることが大前提となっています。
警視庁は、東京都内の5箇所に初めて無人ATMに「携帯電話を圏外にする機器」を設置しました。
今後も、導入が進められていくようです。
これまで、通信防止装置は携帯電話による迷惑防止が主な目的でしたが、今後は犯罪対策としても活用されていきます。
ちなみに、例えば常陽銀行ATMでは「携帯電話電波検知ソリューション」が導入されています。
これは、対象となるATMで携帯電話を利用しながら振り込み操作を行った場合、画面上に警告メッセージを出した後、振り込み操作を強制的に遮断する仕組みになっています。
このように、銀行も対策を講じています。
最後に
携帯電話等通信抑止装置は、携帯電話と同じ基地局の電波を発射することで、近傍にある携帯電話等が基地局と通信できない状態にするものです。
分かりやすく言えば、携帯電話を「圏外」にすることで通信不能にする装置です。
今後は、この通信不能にした状況を逆手にとった犯罪がでてくるかもしれません。そうなれば、また少し遅れて新しい対策が講じられることになるでしょう。
ちなみに、携帯電話等通信抑止装置は1998年から導入されているため、すでに20年以上が経過しています。
今後は、さらに対策(制限)が進められていくことになるかもしれませんね。
ルールを守らないことで、さらに強固な制限が生まれていきます。これからもイタチゴッコが終わることはないでしょう。
参考
株式会社 テレ・ポーズ
→https://tele-pause.co.jp/needs/#needs_hole
総務省:通信抑⽌装置の在り⽅について
→https://www.soumu.go.jp/main_content/000536743.pdf
朝日新聞デジタル:怪しい電話、ATMで絶つ 還付金詐欺防止、携帯圏外に 警視庁が機器
→https://www.asahi.com/articles/DA3S14695947.html
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