危険な生物について、これまでいくつか紹介してきました。
と言うのも、無防備な子どもがもっとも危険だと考えているからです。
野草やキノコも食べられる物もあれば、よく似た食べられない危険な物までたくさんあります。
今回ご紹介するのは、子ども達の多くが大好きな「クワガタそっくり?」な危険な昆虫のお話しです。
クワガタそっくり?
私も子どもの頃には、神社にいってクワガタを捕りに行ったことがあります。
ところが、最近は「幻のクワガタ」ではなく、クワガタそっくりな真っ赤な昆虫が話題になっています。
この昆虫は、地域によっては準絶滅危惧種に指定されている珍しい昆虫です。
正直、大人からすれば色が色なのでクワガタに間違えることはないと思うのですが、初めて見た子どもにとっては「珍しいクワガタ!」に見えるようです。
さて、この昆虫の名前は、ヒラガゲンナイ(平賀源内)ではなく、ヨネズゲンシ(米津玄師)でもなく・・・「ヒラズゲンセイ」と呼ばれます。
ヒラズゲンセイについて紹介する前に簡単に、勘違いしやすい絶滅危惧種について説明しておきます。
準絶滅危惧種ってなに?
準絶滅危惧種・・・現時点での絶滅危険度は小さいが、生物条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種。
そもそも、絶滅危惧種にはレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)と呼ばれるカテゴリー分類があります。
*国内では「環境相レッドリスト」・世界では「国際保護自然保護連合会(IUCN)レッドリスト」があります。
→ちなみに、日本では都道府県等レッドリスト(自治体)もあります。
このように、「生息状況」とひと言で言っても、世界・国内・地方自治体と見るエリアが違えば、世界全体で見ればまだまだたくさんいても、地域でみると「絶滅した・・・」なんてこともあります。
そのため、レッドリストはそれぞれ独自の基準で評価されています。
また、「絶滅危惧種」といっても絶滅の危険性が高い順に4つのカテゴリー(①絶滅危惧Ⅰ類 ②絶滅危惧ⅠA類 ③絶滅危惧ⅠB類 ④絶滅危惧Ⅱ類)に分類されています。
なにが言いたいかと言えば、「絶滅危惧種」という言葉は便利な言葉ですが・・・
- どのエリア単位で絶滅の危険性があるのか?
- 絶滅危惧種であったとしても、4つのカテゴリーのうちどの分類なのか?
ということでもまったく意味合いが違ってきます。
とはいえ、特定外来生物など危険な生物として指定されている場合などを除いて、むやみに生物を駆除していいわけではありません。(素人の場合、手痛いしっぺ返しをくらうかも・・・)
*そもそも、「絶滅危惧種」だけでなく「準絶滅危惧種」の場合であっても、条例などにより罰則がある場合があるため、勝手に駆除しない方がいいでしょう。
今はなくても、将来的に禁止されるかもしれません。
例えば、新潟県魚沼市では準絶滅危惧種に指定された「ギフチョウ(希少な蝶)」の捕獲・採取を禁止しています。(罰則あり)
→特定外来生物については、こちらの記事で紹介しています。
それでは、「ヒラズゲンセイ」と呼ばれる昆虫はなぜ危険なのでしょうか?
ヒラズゲンセイの有毒性
ヒラズゲンセイは、漢字で「平頭芫青」と書きます。
「芫青」とは、ツチハンミョウ科の昆虫のことです。つまり、頭が平らなツチハンミョウという意味です。
体調は20~30㎜前後で、クワガタのように大顎をもつ甲虫のため、これで色が黒なら一見すると確かに多くの人がクワガタと間違えるかもしれません。(実際、「赤いクワガタムシ」と呼ばれることもあります)
さて、そんなヒラズゲンセイは毒を持っています。(そもそも、ツチハンミョウ科の昆虫に毒がある)
毒性
ヒラズゲンセイの体液には、「カンタリジン」と呼ばれる有毒物質が含まれています。
カンタリジンは、皮膚に触れると「水ぶくれ」や「かぶれ」などの症状が現れます。
FNN PRIMEで、大阪市立自然史博物館の学芸員のお話が紹介されていました。
要約すると・・・
- ヒラズゲンセイは、毒を飛ばすわけではなく節々から滲み出ている。
- 触らなければ危険はない。
- 触れたとしても毒は基本的に水で洗い流せる。
- そもそも、実際にかぶれることは少なく、その場合はスゴイ臭いがある。
不安な方は皮膚科を受診した方がいいかもしれませんが、それほど怖がる昆虫ではなさそうです。
ちなみに、カンタリジンは致死量がわずか30㎎の猛毒として知られ、古来から毒薬としても使われきました。触っただけで、皮膚に異常をきたすのも納得してしまいますね。
さすがに、口に入れる人はいないとおいますが、イタズラで投げつけたりしないで下さいね・・・
直接皮膚に触れれば、お互いイタズラでは済まないかもしれません。
最後に
そもそも、毒をもつ生物は至る所に存在します。ある意味、殺虫剤など道具を使う人間が一番怖いかもしれませんが・・・
子どもは虫を触る可能性が一番高いため、特に注意が必要です。とはいえ、危険なことを繰り返して私達も大人になりました。あまり、安全対策をやり過ぎるのもどうかとは思います。
ただ、ネットが普及し簡単に調べることができるため、つい調べてしまいますよね。
ちなみに、ヒラズゲンセイはもともと四国など温暖な地域で見られました。ところが、1976年に和歌山・2009年以降に京都・滋賀と近畿地方でも見られるようになりました。
つまり、生息域が北上していることが分かります。
こういったことを考えると、私が子どもだった頃とはそもそも大きく環境が変わってきているのかもしれません。もしそうなら、新しい対策が必要なのかもしれませんね。
体験して学ぶことも必要ですが、少なくとも親は子どもが失敗した体験に、すぐに対処できるようにしておきたいものですね。
参考
環境省
→https://www.env.go.jp/press/106383.html
魚沼市
→https://www.city.uonuma.niigata.jp/docs/2017050100077/
自然と森の文化協会
→http://morikyoukai.sblo.jp/article/183504478.html
公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会
→https://www.jataff.jp/konchu/hanasi/h14.htm
京都新聞
→https://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20190711000027
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