香川県は、2020年3月18日に全国初で「ゲーム依存症対策に関する条例」を可決しました。
ちなみに、WHOではゲーム依存は精神疾患として区分されています。
今回は、そんな「ネット・ゲーム依存症対策に関する条例」についてご紹介します。
*今回の記事は、ネット・ゲーム依存症対策条例の反対意見として書いています。(ネット・ゲーム依存症を軽く見ているわけではありません)
→WHOで指定された「ゲーム障害」については、こちらの記事で紹介しています。
そもそも「ネット・ゲーム依存症対策条例」ってなに?
この条例は、香川県議会で2020年1月10日に提出され、同年3月18日に可決されました。注目すべき点は、日本初のゲーム依存症対策に特化した条例であることです。
どんなゲームが対象になるの?
さて、ここで言う「ネット・ゲーム依存症」というのは、ネット・ゲームにのめりこむことで、日常生活または社会生活に支障が生じている状態を指します。
また、「ネット・ゲーム」はインターネット及びコンピューターゲームのことです。(コンピューターゲーム:スマホ・PC・ゲーム専用機などで動作するコンピューターを使用したゲーム全般)
つまり、画面を見ながら行う全てのゲームが条例の対象になっています。
3つの基本理念
- ネット・ゲーム依存症の発症、進行及び再発の各段階に応じた防止対策を適切に実施するとともに、ネット・ゲーム依存症である者等及びその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援する。
- ネット・ゲーム依存症対策を実施するに当たっては、ネット・ゲーム依存症が、睡眠障害・ひきこもり・注意力の低下等の問題に密接に関連することに鑑み、これらの問題に関する施策との有機的な連携が図れるよう、必要な配慮がなされる。
- ネット・ゲーム依存症対策は、予防から再発の防止まで幅広く対応する必要があることから、県・市長・学校等・保護者・ネット・ゲーム依存症に関連する業務に従事する者等が相互に連携を図りながら協力して社会全体として取り組む。
つまり、香川県の社会全体で一律、ネット・ゲームに対する規制をしていくことが可決されました。
18歳未満の子どもをネット・ゲーム依存症から守る?
この条例は香川県民の18歳未満のこども全てが対象になります。
つまり、高校生まではこの条例の対象になりますが、それ以降は対象外になることになります。また、罰則はないようですが、本格的に進められることになれば強制力がでてくる可能性があります。
なぜなら、県・学校等・保護者の責務がそれぞれ盛り込まれているためです。そして、県民・市長・事業者の役割まで示されています。
この条例は、2020年4月1日から施行されますが、県は子どものネット・ゲーム依存症対策を推進するために、この条例は施行後3年間は毎年。その後は、2年ごとに本県におけるネット・ゲーム依存の実態に関する調査が行われることになっています。
つまり、「現時点でどれくらいのネット・ゲーム依存症のこども達がいるのか?」そして、「ネット・ゲーム依存の子ども達がどれくらい増減したか?」を明らかにしていくことになります。
そもそも、どうやってネット・ゲーム依存症と判断するの?
依存症と言うことは、「病気」と言うことになります。ちなみに、WHOは精神疾患に分類しています。ただ、「病気だ!」と診断する方法は医師の診断しかありません。
つまり、厳密にやろうと思えば、親は自分の子どもを精神科に通わせて診断を下してもらう必要がでてきますが、現実問題として不可能でしょう。
となると、ネットなどでアンケート調査により「ゲームの使用状況」などを調査していくことが考えられます。他にも、学力の向上が見込めたかどうかといった調査内容も盛り込まれていくのかもしれません。
ただ、その調査結果がネット・ゲーム依存症とどのように関わっているのか、どうやって証明するのでしょうか?
また、この条例は「ネット・ゲーム依存症を防ぐための条例」として可決されました。
ただ、この条例を実施する以上は、ネット・ゲーム依存症の治療も含めることになります。なぜなら、この条例に盛り込まれているゲームの時間制限の目安などは、すべての子ども達に一律当てはめられるからです。
その一方で、結果的にネット・ゲーム依存症かどうか分からない子ども達まで一律に、「何時間以上ゲームをやっているから依存症だ!」・「夜遅くまでやっているから依存症だ!」ということで一括りにされる危険性もあります。
それでは最後に、この条例で定められている保護者の役割を紹介します。
《保護者の役割》
- 子どもの睡眠時間の確保
- 1日当たりのゲーム利用時間は60分(休みの日は90分)
- 義務教育の終了前の子どもは午後9時まで(それ以外の子どもは午後10時まで)
これが、目標(目安)となっています。
そして、当然ですがその第一義的責任(最も重要な責任)は、保護者であることが明記されています。つまり、保護者をバックアップしていくことがその他の者がおこなう責務という見方ができます。
虐待をはじめ、私達親は常に監視されているような状態です。子どもが後ろにこけて、頭に内出血が起これば、虐待案件として最悪親は逮捕されてしまう世の中です。
そして、ここにまた1つ保護者に、条例による制限がかけられることになりました。
→「揺さぶられっ子症候群」については、こちらの記事で紹介しています。
それにしても、なにを基準にどうやって毎年の統計を取っていくのでしょうか?
ネット・ゲーム依存症の治療はどのように進められていくのでしょうか?
課題は山積みだといえるでしょう。
最後に
ネット・ゲーム依存症対策条例では、パブリックコメントとして県民からの意見が集められ、以下のような結果となっています。
《香川県に住所を有する方》
- 個人:2,613人(賛成:2,268人/反対:333人/提言等:12)
- 団体:2(賛成:1/反対:1)
《第11条に規定する事業者》
- 71事業者(賛成:0/反対:67/提言等:4)
合計.2,686
(事業者の役割)
第 11 条 インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)に供する事業又はコンピュータゲームのソフトウエアの開発、製造、提供等の事業を行う者は、その事業活動を行うに当たっては、県民のネット・ゲーム依存症の予防等に配慮するとともに、県又は市町が実施する県民のネット・ゲーム依存症対策に協力するものとする。
2 前項の事業者は、その事業活動を行うに当たって、著しく性的感情を刺激し、甚だしく粗暴性を助長し、又は射幸性が高いオンラインゲームの課金システム等により依存症を進行させる等子どもの福祉を阻害するおそれがあるものについて自主的な規制に努めること等により、県民がネット・ゲーム依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする。
3 特定電気通信役務提供者(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成 13 年法律第 137 号)第2条第3号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。)及び端末設備の販売又は貸付けを業とする者は、その事業活動を行うに当たって、フィルタリングソフトウェアの活用その他適切な方法により、県民がネット・ゲーム依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする。
さて、パブリックコメントに寄せられた個人・団体・事業者を全て含めて提出者数は2,686件が集まりました。
しかも、賛成の合計が2,269(個人・団体)に対して、反対は401(個人・団体・事業者)でした。
*香川県のパブリックコメントとして集まった数としては、異常に多い。
→パブリックコメントについては、こちらの記事で紹介しています。
さらに言えば、この条例に賛成した事業者は1つもなく、残りの4事業者は賛成・反対もしない提言等をしています。
つまり、これから強力を得なくてはいけないパブリックコメントに答えてくれた事業者の意見は、全て無視されたかっこうになっています。
→「意見に関する考え方」が付け加えられていますが、成立ありきと考えられるような意見が付け加えられているだけなので、事業者が納得できるものではないでしょう。
ネット・ゲーム依存症対策条例は、2020年4月1日から香川県で施行されます。
来年、どういった報告がなされるのか皆さんも人ごとではありません。もしも、「成功した!」なんてことになれば他の都道府県でも導入されかねません。
なにをもって「成功」とするのかは不明ですが・・・
親は、できることを子どもにしていくしかありません。ただ、マンツーマンで子どもを見ることができませんよね。
となれば、あとは子どもの自主性に任せるしかない部分がどうしても出てきます。本来はそうしないといけませんが・・・
また、大人もそうですが注意されればされるほど、やってしまいますよね。
せめて大人は、「条例で定められているから」ではなく、なぜネット・ゲームの依存症が怖いのか子どもにその理由を説明できるようになれればいいですね。
子どもは、監視する対象ではなく育む対象です。くれぐれも、条令に振り回されないようにご注意下さい。
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