パブリックコメント制度って結局なに?おかしなことをするとすぐにバレる!?

 

先日、香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」がパブリックコメントで意見が募集されていたことをお伝えしました。

それでは、そもそもこの「パブリックコメント」とはどういったものかご存じでしょうか?

今回は、「パブリックコメント制度の役割とは?」についてご紹介します。

 

「香川県で可決されたネット・ゲーム条例」についてはこちらの記事で紹介しています。

ネット・ゲーム依存症対策が条例になった!?香川県が施行する条例とは?

 

パブリックコメントってそもそもなに?

「パブリックコメント」というのは、1999年から全省庁に適用されている制度で、行政機関が規制の設定や改廃(制度の改正や廃止)をするときに、その原案を公表し国民の意見を求めそれを考慮して決定する制度のことです。

  • パブリック:広く公に
  • コメント:意見・情報・改善案など

つまり、広く国民に意見を求める手続きのことです。

さて、この制度は2005年6月に行政手続法の改正により新設された手続きで、日本ではパプリックコメント制度(意見公募手続制度)として運用されています。

*新設されるまでは、「規制の設置または改廃に係る意見提出手続き(平成11年閣議決定)」に基づいて意見提出手続き(パブリックコメント手続き)が行われていた。

→改正行政手続法に引き継がれたため、廃止された。

それでは、どんなものでもパブリックコメントの対象になるのでしょうか?

 

パブリックコメント制度が適用される対象は?

  1. 政令・・・憲法及び法律の規定を実施するために内閣が制定する命令
  2. 府省令・・・各府省の大臣が、主任の行政事務について制定する命令
  3. 処分の要件を定める告示・・・国の行政機関が決定した事項等を広く一般に知らせるためのもののうち、処分の要件を定めるもの
  4. 審査基準・・・申請に対して許可等をするかどうかを法令の規定に従って判断するために必要な具体的な基準
  5. 処分基準・・・不利益処分をするかどうか、どのような不利益処分とするかについて法令の規定に従って判断するために必要な具体的な基準
  6. 行政指導指針・・・同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとする際に各行政指導に共通する内容

このように、パブリックコメント制度が実施される対象は決まっています。

それでは、行政手続法ではどのように規定されているのでしょうか?

 

行政手続法とは?

行政手続法は、39条「命令等を定めようとするときにそれを定める前に公示し、意見の提出および一定の意見提出期間を定めて、その間に広く一般に意見を求めなければならい」と定めています。

つまり、法的義務があるため法律に定められている適用除外に当たらない限りは必ずパブリックコメント制度を実施しなくてはいけません。

 

《行政手続法の適用除外》

3条2項

一 法律の施行期日について定める政令
二 恩赦に関する命令
三 命令又は規則を定める行為が処分に該当する場合における当該命令又は規則
四 法律の規定に基づき施設、区間、地域その他これらに類するものを指定する命令又は規則
五 公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件について定める命令等
六 審査基準、処分基準又は行政指導指針であって、法令の規定により若しくは慣行として、又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のもの

さらに、行政手続法が適用される場合であっても意見公募の手続きの適用除外になる場合もあります。

 

《意見公募手続き除外》

39条4項

一 公益上、緊急に命令等を定める必要があるため、第一項の規定による手続(以下「意見公募手続」という。)を実施することが困難であるとき。
二 納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法についての命令等その他当該法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき。
三 予算の定めるところにより金銭の給付決定を行うために必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法その他の事項を定める命令等を定めようとするとき。
四 法律の規定により、内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する委員会又は内閣府設置法第三十七条若しくは第五十四条若しくは国家行政組織法第八条に規定する機関(以下「委員会等」という。)の議を経て定めることとされている命令等であって、相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として、法律又は政令の規定により、これらの者及び公益をそれぞれ代表する委員をもって組織される委員会等において審議を行うこととされているものとして政令で定める命令等を定めようとするとき。
五 他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一の命令等を定めようとするとき。
六 法律の規定に基づき法令の規定の適用又は準用について必要な技術的読替えを定める命令等を定めようとするとき。
七 命令等を定める根拠となる法令の規定の削除に伴い当然必要とされる当該命令等の廃止をしようとするとき。
八 他の法令の制定又は改廃に伴い当然必要とされる規定の整理その他の意見公募手続を実施することを要しない軽微な変更として政令で定めるものを内容とする命令等を定めようとするとき。

このように、「行政手続きから除外される場合」と行政手続きが必要でも、「意見公募手続きが除外される場合」があります。

それでは、地方自治体ではこういった行政手続法は適応されるのでしょうか?

 

そもそも地方公共団体(都道府県や市町村)には適用されない!?

実は、「行政続き法の規定」は地方公共団体に対しては適用されません。

ですが、総務省は3年に1度地方公共団体における意見公募手続き制度の制定状況等を調査しています。

2015年1月5日時点の調査結果ではこのようになっています。

  • 都道府県46団体(97.9%)
  • 政令指定都市20団体(100%)
  • 中核市43団体(100%)
  • 特例市39団体(97.5%)
  • その他の市区町村854団体(52.1%)

つまり、その他の市区町村ではほぼ半分に留まっていますが、それ以外はほぼ100%が意見公募手続き制度は制定済みになっています。

それでは、香川県を例にパブリックコメント制度についてご紹介します。

 

香川県でのパブリックコメント制度

「香川県パブリック・コメント手続実施要綱」が策定され、2002年6月1日から施行されました。

目的は、このようになっています。

(目的)
第1条 この要綱は、県が計画等を立案する過程において、県民に対して当該立案の内容その他必要な事項を公表し、これらについて提出された県民の意見等を考慮して計画等の決定を行う手続に関し必要な事項を定めることにより、県民の多様な意見等を県政に反映させる機会を確保するとともに、県の政策形成過程における公正の確保と透明性の向上を図り、もって県民との協働による県政の推進に資することを目的とする。

ただし、パブリックコメントに条例の可否といった影響はありません。

とはいえ、「反対」や「提言」をくみ取っていくことに意味があります。

なぜなら、なにも意見がなければそのまま条例は通過するため、そもそも基本的に「賛成だけ」を入れる必要(意味)がないからです。

ちなみに、意見等の提出期間は第4条でこのようになっています。

第4条 実施機関は、意見等の提出期間(計画等の案の公表の日以後原則として1月以上の期間で実施機関が定めるものとする。以下同じ。)及び提出方法を計画等の案を公表する時に明示するものとする。

ただ、「ネット・ゲーム依存症対策条例」の意見公募は1月下旬から約2週間しか期間がなかったため、かなり短い間で応募が締め切られたことが分かります。

 

最後に

パブリックコメントは、直接条例などに影響はありません。

また、そもそも素案が固まってあとは通すだけの段階の場合もあります。つまり、通過ありきで公募されることもあるため、「反対」や「意見」が大切になります。

必ずしも、取り入れられるわけではないとはいえ、反対意見があまりにも多い条例などを通過させることは難しいでしょう。

そういう意味では、香川県での「ネット・ゲーム依存症対策条例」の賛成数の異常な多さは目だってしまうことは言うまでもないでしょう。

そもそも、反対が300件を越えていることも異常事態だと言うべきでしょう。

*ゲーム条例を除いた香川県のHPで確認できた過去に実施したパブリックコメント(53件)を確認すると、それぞれの提出者数は0件や1件が目立ち、多くても29件(「第3次かがわ男女共同参画プラン(仮称)」)でした。

→ですが、今回の条例に寄せられたパブリックコメントの意見数ではなく提出者数は2,600件を越えていた。


参考

香川県:パブリック・コメントの概要
https://www.pref.kagawa.lg.jp/content/kocho/comment/wlma2o150317143614.shtml

総務省:意見公募手続の概要
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/iken_koubo.html

 

 

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