「空気感染」・「飛沫感染」、それから・・・「エアロゾル感染」!?

 

新型コロナウイルスの話しの中で、「エアロゾル感染」という言葉を多くの人が聞いたことがあるのではないでしょうか?

「空気感染」や「飛沫感染」みたいなことだと考えている人もいるかもしれませんね。

ですが、実は半分正解で半分間違いです。

今回は、「知っているようで知らないエアロゾル感染」についてご紹介します。

 

そもそも「エアロゾル」ってなに?

粒子(空気中に浮遊する微少な液体や固体など)+気体=エアロゾル。つまり、エアロゾルとは空気中に漂う微細な粒子のことです。

このエアロゾル粒子は、生成過程の違いから様々な呼ばれ方をします。

 

エアロゾルの生成過程の違いによる呼ばれ方

  • 粉塵
  • フューム(金属など固体を加熱して蒸発した時に発生する煙)
  • ミスト
  • ばいじん(物の燃焼により発生する「すす」や「灰」の一種)

など、これらもエアロゾルです。

ちなみに、気象学的には視程や色の違いなどから「霧」「もや」「煙霧」「スモッグ」などと呼ばれることもあり、エアロゾルは私達の身近な存在でもあります。

→こういった理由から、「エアロゾル」と言えば環境汚染や健康被害など悪いイメージがつきものでした。


ですが、最近では「高機能性材料の開発」「効果的な薬剤・農薬の開発」など、善いイメージをもったエアロゾルの研究も進められています。

そもそも、エアロゾルは医学・薬学・工学など、幅広い分野に関係してくるため研究目的によってイメージが変わるのは当然と言えば当然かもしれません。

さて、「エアロゾル」の説明はこれぐらいにして、それでは新型コロナウイルスとどういった関係性が考えられているのでしょうか?

 

新型コロナウイルスとエアロゾル感染?

まず、最初に断っておくことがあります。それは、「エアロゾル感染については、現状明確な基準がない」ということです。

冒頭でお伝えしたように、「エアロゾル」というのは空気中に漂う微細な粒子のことです。

つまり、エアロゾル感染は基本的には飛沫感染ですが、飛沫感染と違うところは「三密(密閉・密集・密接)の環境下で、空気感染に近いことが起こりえる」ということです。

さて、「飛沫感染」「空気感染」という言葉が出てきましたが「エアロゾル感染」とは結局なにが違うのでしょうか?

 

そもそも「飛沫感染」と「空気感染」の違いとは?

一見すると、「飛沫感染」も「空気感染」も同じように思いますよね?

  • 飛沫感染:咳などで出た飛沫を吸い込んだり、飛沫が目や鼻等の粘膜に付着することで感染します。
  • 空気感染:「飛沫核感染」と「塵埃(じんあい)感染」があります。

→飛沫核感染は、感染者から排泄された飛沫核を直接吸い込むことで感染します。(飛沫核は飛沫から水分が蒸発することでも形成される)

→塵埃感染は、病原体に汚染された土壌や床から舞い上がった埃を吸い込むことで感染します。

分かりやすく言えば、「飛沫感染」をする飛沫は、水分を含んでいるためそれなりの重さがあり下に落ちます。(空気中に浮遊しない)

ところが、その飛沫の水分が蒸発することで軽くなった飛沫核が空気中に漂うと、そのウイルスや細菌を吸い込むことで感染するため「空気感染」と呼ばれます。

 

~ワンポイントアドバイス! 「マスクと感染予防」~

ちなみに、「飛沫感染」の予防に効果がある一つの方法として「マスク」が挙げられます。

ところが、「空気感染」の場合は飛沫核の拡散を防止することが重要となるため、「屋内環境を減圧」「高機能のフィルターを用いて空気を清浄化」するなど、より高度な対応が必要になります。

こういった理由から、「そもそもマスクだけでは感染症対策が不十分」と言われます。

参考 昭和大学:飛沫(ひまつ)感染と空気感染の違いって何だろう?

それでは、エアロゾル感染とはどういった感染のことをいうのでしょうか?

 

エアロゾル感染となにが違うの?

最初に、「エアロゾル感染には基準がない」とお伝えしましたが、それには以下のような理由があります。

  • 飛沫感染を引き起こす「飛沫」は、水分を含み直径5μm以上の粒子ですぐに床面に落下する。
  • 空気感染を引き起こす「飛沫核」は、水分を含まない直径5μm未満の粒子で長期間空気中を浮遊する。

ところが、エアロゾルは先程紹介したように大きさは様々です。

❶例えば、約0.001μm(1nm)~約100μmまでがエアロゾルの対象(エアロゾル学会)になってしまうため、大きさだけで区分しようとすると「空気感染」「飛沫感染」のどちらにも当てはまることになります。

➋また、エアロゾルの特徴は水分を含んでいる点です。つまり、5μm以上のエアロゾルは飛沫感染となりますが、それ以上のエアロゾルは分類ができないことになります。

つまり、水分を含む様々な大きさのエアロゾルが確かに存在していますが、「飛沫感染」・「空気感染」だけでは区分しきれないため「エアロゾル感染」という言葉が出てきました。


ただ、繰り返しになりますがまだ基準がしっかりとできていない(医学会などでもエアロゾル感染について明確に示されていない)ことが現状のようです。

現時点で、この3つをあえて分類するなら・・・

  • 飛沫感染:水分で覆われている5μm以上の粒子
  • 空気感染:水分を含まない5μm未満の粒子
  • エアロゾル感染:水分を含む5μm未満の粒子

となります。

 

細かい水しぶきに注意!?

さて、そんなエアロゾル感染の注意すべき環境は、「人工呼吸器」や「加湿器」など細かい水しぶきが発生している環境です。

特に、超音波式加湿器の場合は雑菌がそのまま放出されるため注意が必要です。

そして、3密の状態は空気感染・飛沫感染・エアロゾル感染のどれもが発生しやすいため、厚生労働省でも避けることが「新しい生活様式」の中でも挙げられています。

 

最後に

  • 空気感染は、ウイルスや細菌が空気中に漂い続ける状態です。
  • 飛沫感染は、ウイルスや細菌が落下するため床や周囲の物に付着していきます。
  • エアロゾル感染は、水蒸気などにウイルスや細菌などが付着し、飛沫よりも長く遠くへ運ばれていきます。

そういう意味では、エアロゾル感染は、「空気感染」と「飛沫感染」の中間ということができるかもしれません。

ただ、確かに存在していますがどちらにも当てはまり・どちらにも当てはまらない点があります。

今後、エアロゾル感染について明確な定義ができるかは分かりませんが、研究は続けられていくでしょう。どのように定義されるにしても、エアロゾルの研究が進むことで私達の生活は変わっていくかもしれません。


参考

保健センター:感染の方法
http://www.hc.u-tokyo.ac.jp/covid-19/infection_route/

株式会社 WORKERS DOCTORS:エアロゾル感染(マイクロ飛沫感染)に注意を
https://www.workersdoctors.co.jp/column/316/

 

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