前回、「老後資金2000万円問題」についてご紹介しました。
ただ、その根拠とされた金融庁の報告書はあくまでも、「現状の状況や課題から今ある制度や、これから作られていくであろう制度を理解・運用できるように金融リテラシーを皆で向上させていこう!」という、その基本となる大事なデータが盛り込まれた報告書でした。
→「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理」
この報告所の中身を読まずに、「この報告書は、老後資金2000万円問題が書かれた報告書だ!」と決めつけている時点で、金融リテラシーが低い証明ともいえるでしょう。
そして、最近では老後資金2000万円問題の不安からか、「リバースモーゲージ」と呼ばれる自宅を生活資金に変える手法が話題になっています。
今回は、「親の借金を子どもが支払うことになる!?かもしれないリバースモーゲージという融資とは?」についてご紹介します。
*デメリットを紹介しているので、メリットを銀行などで聞く前に参考にしていただければ幸いです。
→「2000万円問題」については、こちらの記事で紹介しています。
「リバースモーゲージ」ってなに?
横文字だらけで嫌になりますが、少しお付き合い下さい。
リバースモーゲージは、英語で`Reverse mortgage`と書きます。
- Reverse・・・逆
- mortgage・・・抵当・抵当権
という意味になり、直訳すると「逆抵当」ということになりますが、これだけではよく分かりませんよね・・・
それでは、どういったサービスなのかと言うと、簡単に言えば「自宅を抵当(担保)にした融資制度の1つ」です。
それでは、なにが「逆」なのでしょうか?
「逆」の意味とは?
普通なら、住宅ローンは一括で受け取った融資額を月々返済していき、借入残高がなくなる(支払い終了する)ことが一般的ですよね。
ところが、リバースモーゲージは毎月または一括で借り入れた分の残高を最後にまとめて返済する仕組み
になっています。
つまり、借金を毎月少しずつ返すのではなく、最後に一気に返す方法となるため返済の仕方が普通とは違うことから、「逆」という意味のリバースが使われています。
→「高齢者向けの貸付け制度」
といえるでしょう。
それでは、なぜ今注目を集めているのでしょうか?
老後資金の考え方の1つとして脚光を浴びている!
そもそも、最大のメリットは「自宅に住み続けられる」ことだと言えるでしょう。
というのも、リバースモーゲージは自宅を担保にしているにも関わらず、売却しなくても融資が受けられるからです。
まさに、リバース(逆)ですね。
例えば、老後資金が少なくても自宅が担保なので、まとまった融資が受けられるため生活が楽になり、夢の海外旅行に行けるようになるかもしれませんね・・・
まさに、「悠々自適の老後生活を手にすることができる!」かもです・・・
さらに言えば、自宅を担保にしているため自身が死ぬまで借金を返す必要はありません。そもそも、死ぬまで住み続けられるためそうなりますよね・・・
まさに、高齢者にとって至れり尽くせりな制度に見えますね・・・
「・・・」と歯切れ悪く書いているのは、デメリットを被ってしまった場合、その破壊力が凄まじいからです。
その理由の1つは、生きている間に返済する義務がない
ことがその理由になります。
「生きている間に返済する必要がない?」ということは・・・
それでは、親の借金を誰が返済することになるのでしょうか?
リバースモーゲージにもデメリットがいろいろとありますが、そもそも推定相続人全員からの同意がなければ利用できません。(「同意」が必要ない場合もある)
簡単に言ってしまえば、保証人がいるわけです。
それでは、なぜ自宅が担保なのにも関わらず、相続人から同意をとる必要があるのでしょうか?
単純に考えれば、「自宅を売り払う時は相続人がすることになるから、その手続きのため?」と思いますよね。
確かに、リバースモーゲージがうまくいった場合は、予定通り自宅を担保に返済完了し、子どもからしても、「親が余裕をもって余生を過ごせてよかった!」と終わるかもしれません。
また、自宅を売ったときに生活資金との差額があれば、相続人が受け取ることもできます。
それでは、なにが問題なのでしょうか?
本当に担保にした家は売れるの?
リバースモーゲージの根底から覆すような話しですが・・・
そもそも、リバースモーゲージにより融資を受けてから実際に一括完済するまでの期間は、人生100年時代とはいえ、平均すれば20年~30年程でしょうか?
つまり、実際に自宅が売却されるのは数十年後になります。この長い期間が、問題になってきます。
❶金利は一定ではない!
例えば、リバースモーゲージの金利は定期的に見直され変動していきます。悪材料を上げるなら、現在の日本は超低金利(歴史的低水準)のため借りやすい時代となっています。
つまり、これ以上低くなることは考えにくいです。
それでは、金利の変動にはどういった問題があるのでしょうか?
「利息原価方式」の場合
もしも、金利が上昇すれば死亡時に元金と利息を一括返済する「利息元加方式」だった場合、融資金額が大きければ大きいほど、自宅を売却しても返却できないほど金利が膨れ上がる可能性があります。
→相続人(子ども達)に負担がのしかかる。
「利息利払方式」の場合
逆に、利息を毎月返済する「利息利払方式」では、金利が上昇すると月々の支払いが家計を圧迫することになります。
→自分たち(高齢者夫婦)に負担がのしかかる。
もしも金利が上がると・・・
大前提として、「融資」となるため生きている間は金利がずっとかかり続けるため、雪だるま式に膨らみます・・・
もしも、リバースモーゲージで1000万円借りられた場合、3%の金利なら30年で2,357万円の借金となります。
- もしも、10年後に金利が4%になれば2,831万円
- もしも、10年後に金利が5%になれば3,396万円
こんなことが、実際に引き起こさる可能性があります。
つまり、長生きすればするほど金利は増えていき、そもそもその金利が上昇するリスクもあるため注意が必要になります。
➋融資額は一定じゃない!?
そもそも、土地代は変化しますよね。
駅が近くにできたことで土地代が上がったり、逆に高速道路が新しくできたことで衰退していく街もあります。
実際、2022年には生産緑地(都市部に残っている農地)が宅地に解禁されることになります。
「生産緑地」と言えば、固定資産税が安い特典がありましたが、その優遇期間も2022年に切れることになります。
国土交通省 都市計画区域、市街化区域、地域地区の決定状況を確認すると、リバースモーゲージが使えるエリアと生産緑地の多くあるエリアは重複しているようです。
特に、駅から離れた郊外はすでに土地価格の上昇が進んでいないことが指摘されています。そんな状況で、宅地が増えれば、さらに土地代は下がることが予想できますよね。
つまり、20~30年後は不動産が売るに売れない「負動産」になっている可能性を考慮する必要があります。
他にも、例えば将来的に公共施設が統廃合されてしまう地域だった場合、その土地に価値を見いだす人がどれだけいるでしょうか?
ワンポイントアドバイス! ~リバースモーゲージの融資額は査定額の50~70%?~
それでは、そもそもリーバースモーゲージでどれくらいの融資額が受けられるかご存じでしょうか?
基本知識として、不動産が実際に売買される価格を「実勢価格」と言いますが、自宅の評価額は実勢価格の70%程になります。
つまり、一般的には「実勢価格✕0.7=評価額」となります。
そして、リバースモーゲージで融資される金額は、評価額の50~70%ほどになります。
つまり、そもそも自宅の評価額を知らなければ話しになりません。
もしも、自宅の評価額をあらかじめ調べておかなければ、安く買いたたかれる可能性まであります。そうなれば、リバースモーゲージによる融資額も激減するでしょう。
仮に、2000万円の実勢価格の自宅があったとします。
評価額:2000万円✕0.7=1,400万円
リバースモーゲージで融資を受けられるのは一般的に評価額の50~70%となるため・・・
→700万円~980万円程ということになります。
融資額が、評価額の半分以下になりましたね・・・
ちなみに、この融資額内であれば何度でも融資を受けることができます。
もちろん、さまざまな商品があるためメリットデメリットはそれぞれ違いますが、評価額を低く見積もられてしまえば、融資額も減少し家自体の価値も安くなってしまうため、老後や子ども達が大変なことになることは、分かっていただけたのではないでしょうか?
まずは、自分で自宅の評価額を知る所から始めましょう。
→こちらのリビンマッチで無料で査定を受けることができるようです。
最後に
リバースモーゲージのメリットは、銀行などに行けばこちらから聞かなくても教えてくれるでしょう。
ですが、メリットがあればデメリットもあります。
契約しようとしているリバースモーゲージの契約内容をしっかり確認しないと、仮に自分たちの生活は安泰だったとしても、子ども達が不幸な目にあう可能性があります。
- 金利の返済の仕方は?
- 自宅を売ることが前提の契約?
- 融資額はいくら?
- 将来、土地代が下がる要因はない?
など、他にも確認することはたくさんあります。そもそも、全ての人が利用できるわけではありませんが・・・(例えば、一般的には55歳~80歳までといった年齢制限などがあります)
評価額の半分ぐらいしか融資が受けられない上に、毎月金利がかさむことになるのなら、可能であれば自宅を売却した方が有利になるかもしれません。
→もちろん、3000万円の自宅を担保に2000万円の融資を受けて生活資金に充てた場合、死亡後は差額の1000万円は相続人に渡ります。
そして、リバースモーゲージをするならさまざまなタイプがあるため、自分にあったプランを探す必要があります。
まずは、自宅の評価額を知ってから、利用の有無を見当した方がいいでしょう。
確かに、親の自宅なので親の好きなように運用すればいいのですが、最悪、相続人である子ども(自分たち)が借金を背負う可能性を理解しておく必要があります。
ちなみに、リバースモーゲージの融資機関は国・自治体・金融機関などです。
そして、冒頭でお伝えした「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理」では、こういった金融リテラシーの向上やアドバイザーの拡充が求められていることも指摘されています。
まだまだ日本では、その人に会った本当の意味でのライフプランに沿った提案をしてくれるプロが少ないのかもしれませんね。
参考
イエ&ライフ:リバースモーゲージの「3つのリスク」を詳しく解説|なぜ多くの人が銀行員の説明で諦めてしまうのか?
→https://ie-and-life.com/category/reverse-mortgage/
保険チャンネル:あなたはリバースモーゲージに向いている?利用する前にメリットとリスクを知ろう
→https://hokench.com/article/retirement/361/
URILABO:リバースモーゲージを利用する条件とは?基礎知識と活用時のポイント
→https://sell.starmica.co.jp/urilabo/reverse-mortgage-20180727/
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