子育てサポート企業 ~国家主導の認定は本当に安全?~

 

女性の社会進出が進んでいますが、みなさんは子育て家庭を応援する「子育てサポート企業」を証明する認定制度があることをご存じでしょうか?

認められれば、「くるみん」と呼ばれる認定が国から企業に付与される制度です。

今回は、「くるみん認定」「プラチナくるみん認定」についてご紹介します。

 

「くるみん認定」ってなに?

くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づいておこなわれる、いわば国家認定制度です。そのため、認定されれば厚生労働大臣から「子育てサポート企業」としてお墨付きがもらえます。

→「くるみん」とは、赤ちゃんが大事に包まれる「おくるみ」・「社会ぐるみ、会社ぐるみ」で子どもの育成に取り組むという意味です。

 

次世代育成支援対策推進法

「子どもたちが健やかに生まれ育成される環境を整備するために、国・地方公共団体・企業・国民が担う責務を明らかにする」という目的で、2005年4月1日から施工されています。

→この法律は、2014年度末までの時限立法でしたが2025年3月31日まで延長されました。

~企業の役割~

次世代法により、企業は労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」というものを策定することになっています。

常時雇用する労働者が101人以上の企業は、行動計画を策定し都道府県労働局に届け出る義務があります。

(100人以下の企業は努力義務)

*常時雇用する労働者とは・・・

  • 「期間の定めなく雇用されている者」
  • 「過去1年以上の期間、引き続き雇用されている者」
  • 「雇入れのときから1年以上引き続き雇用されると見込まれる者」
  • 「一定期間を定めて雇用される者または、日々雇用される者で雇用期間が反復して更新され事実上、期間の定めなく雇用されている者」

つまり、雇用形態に関係なく実際の労働環境で判断されます。


そして、行動計画に定めた目標を達成するなどの一定の基準を満たした企業は厚生労働大臣の認定である「くるみん認定」を受けることができます。

さらに、認定を受けた企業がより高い水準の取り組みをおこない一定の基準を満たすと特例認定として「プラチナくるみん認定」を受けることができます。

 

一般事業主行動計画ってどんな計画なの?

労働者の「仕事と子育ての両立を図る」ために策定される計画のことをいいます。

~中身は?~

企業の責務として・・・

①雇用環境の整備

②労働条件の整備

といった行動計画の・・・

  1. 期間
  2. 目標
  3. 目標を達成するための対策の内容と実施時期

を101人以上の企業は定めなくてはいけません。

→また、その行動計画は一般への公表・労働者への周知が義務づけられています。

(100人以下の企業では、公表や周知も努力義務)

ただ、「机上の空論」「絵に描いた餅」では意味がありません。

そのなかでも、「結果をしっかり出している!」と認められた企業に対しておこなわれているのが、「くるみん認定」または、「プラチナくるみん認定」と呼ばれる認定です。

 

「くるみん認定」を受けるには?

10の認定基準

①雇用環境の整備について、行動計画策定指針(仕事と子育ての両立を図ること)に照らして適切な行動計画を立てている。

②行動計画の計画期間が2年以上5年以下。

③計画を実施して、目標を達成した。

④策定・変更した行動計画を公表および労働者への周知を適切におこなっている。

⑤次のいずれかを満たしている、

  • 計画期間において、男性労働者のうち育児休業等を取得した者の割合が7%以上。
  • 計画期間において、男性労働者のうち育児休業等を取得した者および企業独自の育児を目的とした休暇制度を利用した者の割合が、合わせて15%以上。かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いること。

⑥計画期間において、女性労働者の育児休業等取得率が75%以上。

⑦3歳~小学校就学前の子どもを育てる労働者に対して・・・

→育児休業に関する制度・所定外労働の制限に関する制度・所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に準ずる制度を講じていること。

⑧計画期間の終了日に属する事業年度において、以下のいずれも満たしている。

  • フルタイム労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満。
  • 月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいない。

⑨以下の措置について、成果に関する具体的な目標を定めて実施している。

  1. 所定外労働の削減のための措置
  2. 年次有給休暇の取得の促進のための措置
  3. 短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置。

⑩法および法に基づく命令その他、関係法令に違反する重大な事実がないこと。

このようにかなり細かく規定されています。

 

「プラチナくるみん認定」を受けるには?

「くるみん認定」を受けている企業しか申請することができません。

→くるみん認定よりも、さらに高い水準がもとめられるため。

また、12の項目があります。

~くるみん認定と違うのは・・・~

⑤の数値が変更されています。

  • 男性労働者の育児休業等を取得した割合が7%→13%以上に。
  • 計画期間において、男性労働者のうち育児休業等を取得した者および企業独自の育児を目的とした休暇制度を利用した者の割合が、合わせて15%→30%以上。かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いること。

⑨は、目標達成が必須条件になっています。

くるみん認定と同じ、以下の1~3の措置をすべて実施し、なおかつ1または2のいずれかは数値目標を実施し達成しないといけない。

  1. 所定外労働の削減のための措置
  2. 年次有給休暇の取得の促進のための措置
  3. 短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置。

⑩以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 出産した女性労働者のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職している割合が90%以上。
  • 出産した女性労働者および出産する予定であったが退職した女性労働者の合計数のうち、子どもが1歳誕生日まで継続して在職している者の割合が55%以上。

⑪育児休業等をし、または育児をおこなう女性労働者が就業を継続し、活躍できるような能力の向上。または、キャリア形成の支援のための取組にかかる計画を策定し、実施している。

⑫くるみん認定⑩の基準と同じ。

ということで、より実践的な基準になっているのが「プラチナくるみん認定」となります。

*認定について細かく説明した理由は後述でお伝えします。

 

認定を取得すると企業にとってどんないいことがあるの?

⑴くるみん認定・プラチナくるみん認定を受けると、厚生労働省のHPで企業名が掲載されます。

→くるみん認定    :平成30年12月末時点で3,032社
→プラチナくるみん認定:      〃      259社

10倍以上も差があります。

*認定企業一覧は、こちらの厚生労働省のHPで確認できます。

⑵認定マークを、商品・広告・求人広告などにつけることができ、子育てサポート企業であることが一目で分かります。

⑶公共調達の加点評価を受けることができます。

公共調達とは・・・

→税金を使っておこなわれる契約行為全般。
→国家戦略としておこなわれるべきもの。

ワーク・ライフ・バランス等を推進する企業を積極的に評価し、これらの企業の受注機会の増大を図る観点から、加点評価がおこなわれています。

 

くるみん認定・プラチナくるみん認定を取得している企業なら安心?

認定を取得するためには数多くのハードルがあります。

また、これだけしっかりしていれば働きやすい企業だと思えるかもしれません。

ただ、この認定だけで就職先を決めるのは避けた方がいいかもしれません。

  • あなたは会社で、「労災になるから軽い怪我では受診しないで」と上司からいわれたことはないですか?
  • あなたの会社で、育児休業などを取得しやすい人は決まっていませんか?
  • あなたの会社は、あなたに無理に帰るようにいってきませんか?
  • あなたの会社は、あなたに有給を無理にでもとるようにいってきませんか?

→あなたは、自分から進んで決めることができますか?

 

今回挙げられているのは、あくまで明確な数値目標です。

つまり、その数値にさえなればいいのです。

あなたは、その数値に入れない少数派になっていませんか?

 

くるみん認定を取得した企業で実際にあった事例

2015年、電通で働いていた新人女性社員が過重労働が原因で自殺したと労災認定されました。ですが、電通は3回連続で「くるみん認定」を受けており、2016年は辞退しました。

そして、くるみん認定は2017年に改正され今ではより厳しくなりました。企業のための認定取得であるなら、これからも過労死は続いていくかもしれません。

労働者からすれば、企業選びの参考には役立つとは思いますが、絶対ではないでしょう。とはいえ、労働者の働き方が少しでも守られるのならばいいことだと思います。

なにはともあれ、情報は自分で集めたほうがいいでしょう。そして、会社は所属しなくては分かりません。

 

女性の社会進出についての記事はこちらで紹介しています。

増加する「夫婦共働き」や「非正規雇用」 ~女性の社会進出はこれからも続く?~

 

まとめ

  • くるみん認定・プラチナくるみん認定は、次世代育成支援対策推進法に基づいた国家認定。
  • 常時雇用する労働者が101人以上の企業は一般事業主行動計画を策定しなくてはいけない。
  • 「重大な違反がない」といった項目もあるが、基本的には一般事業主行動計画の一定の基準を合格した企業が認定を取得することができ、企業にもさまざまなメリットがある。
  • 認定を受けていたとしても、過去に過労死の問題もあり絶対的に信じるのは注意が必要。

参考

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/999zentai.pdf

 

 

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