睡眠薬の使い方 ~間違っていませんか?~

 

前回、睡眠改善薬についてご紹介しました。

睡眠改善薬とは、一時的な不眠状態を改善するために短期間(2・3日程)だけ服用するお薬です。

→病院に受診しなくても(処方箋がなくても)、薬局などで簡単に手に入るお薬。

それでは、実際に病院で処方された「睡眠薬」の飲み方は間違っていないでしょうか?

今回は、「知らないと危険な睡眠薬の基礎知識」についてご紹介します。

 

→睡眠改善薬については、こちらの記事で紹介しています。

睡眠改善薬で不眠が解消!? 勘違いしていると大変なことに・・・

 

睡眠薬ってそもそもなに?

「睡眠薬」とひと言でいっても、さまざまな種類がありますよね。

睡眠薬は、作用時間の違い1つとっても、以下のように分けることができます。

 

睡眠薬の時間的な分類

超短時間型(*半減期が2~4時間)

  • 一過性に不眠を感じるときに服用。(なかなか寝付けない・寝付きが悪いなど)
  • 効果が短いため、寝始めの時に効果がある。
  • 特徴としては、3~4時間ぐらいで効果が和らぐため目覚めが良い。

 

短時間型(半減期が6~12時間)

  • 超短時間型と同じ。

 

中時間型(半減期が12~24時間)

  • 中途覚醒や、一度目が覚めるとなかなか寝付けないときに服用(早朝に目が覚める・寝付けないなど)
  • 効果が長めのため、短時間型を使って朝方に目覚めてしまう人などは、こちらに偏向することもある。

 

長時間型(半減期が24時間以上)

  • 中時間型と同じ。

*半減期というのは、薬成分が血中濃度から半減するまでの時間のことをいいます。半分以下になると、薬の効果がなくなっていきます。

→もちろん、半減期は個人差や環境などに影響されるため、あくまでも目安です。

Tumisu / Pixabay

 

このように、睡眠薬は効果時間によっても分類することができます。それでは、実際に睡眠薬にはどんな種類があるのでしょうか?

 

睡眠薬の4種類

❶ベンゾジアセビン系

脳の神経活動を全般的に抑えることで眠りやすくする薬です。(副作用が出やすく止めにくい。)

  • 日本では、50年程前から使われているため種類も多い。
  • 作用の短い薬から、長い薬まである。
  • 副作用(ふらつきなど)が出やすい。
  • 依存症になりやすい。

*ベンゾジアセビンは、向精神薬です。


ちなみに、「脳の神経活動を全般的に抑える」というのは、疲れ切って寝てしまうような状態にするということです。

  1. 医師の指示通り、1ヶ月連用すれば依存症に陥る。(麻薬や覚醒剤などよりは、「*離脱症状」は低い)
  2. 突然中止すると、不眠・不安・焦燥・頭痛・知覚異常といった離脱症状が引き起こされる。
  3. 量が多ければ少々の刺激でも覚醒せず、記憶まで飛ぶことも

よく効き、目覚めが良い睡眠薬を希望すれば処方してもらえるかもしれませんが、睡眠薬は効果が強いほど依存症になりやすいことは理解しておく必要があります。

本当に眠れないときの緊急避難的な薬!

*離脱症状とは、いわゆる「禁断症状」のことです。

以下の➋~❹の薬は、副作用がでにくく・いつでもやめやすい睡眠薬になります。

 

➋非ベンゾジアゼピン系

  • 不眠の改善作用に特化
  • 筋肉を緩めるような作用も少ないため、ふらつきや転倒の危険性が緩和されている。

 

❸メラトニン受容体作動薬

  • 体内時計を調整作用に関係している「メラトニン(ホルモン)」と同じような作用がある。

→つまり、夜型や睡眠時間のズレが治らない場合に効果が期待されています。

*体内時計を調整する睡眠薬

 

❹オレキシン受容体拮抗薬

  • 目覚めを促す働きのある「オレキシン(ホルモン)」の作用を遮断し、眠れるようにする睡眠薬。
  • 2014年に世界に先駆けて日本で使われ始めた最も新しい睡眠薬です。

 

~番外編! (バルビツール酸系)~

以前は、睡眠薬といえば「バルビツール酸系」と呼ばれる睡眠薬が主流でした。

この睡眠薬は、「脳全体を麻痺させて眠らせる」という薬で、効果が強力な反面、服用量を間違えれば命を落とす危険もありました。

昔のドラマで、「睡眠薬を多量に飲んで自殺を図る・・・」なんてシーンに登場するぐらい社会問題になっていました。

現在では、ほとんどの製品が生産中止になっています。

→そもそも、現在の睡眠薬の安全性は向上しています。

 

~睡眠薬の作用別分類~

◎脳の機能を低下させる睡眠薬◎

  • バルビツール酸系
  • ベンゾジアゼビン系
  • 非ベンゾジアゼビン系

 

◎自然な眠気を強くする睡眠薬◎

  • メラトニン受容体作動薬
  • オレキシン受容体拮抗薬

*「眠らせる」という結果は同じですが経過(作用)が違う。

ChaminaGallery / Pixabay

睡眠薬には、このように作用の仕方がさまざまあるため、それぞれの状態にあった薬を選ぶ必要があります。それでは、睡眠薬を服用する際の注意点はどんなものがあるのでしょうか?

 

睡眠薬と上手に付き合うには?

そもそも睡眠薬は、生活習慣の改善など非薬物療法に効果がない。または他の病気を合併している場合などで、不眠により日常生活に大きな支障をきたしている時に使用されるお薬です。

これが大前提です。

それでは、どういったことに気をつければいいのでしょうか?

 

飲み方のポイントは?

  • 中途半端に量を控えない(依存症の原因になる)
  • 勝手に服用をやめない。
  • 服用により何かあれば医師へすぐ相談する。

睡眠薬の飲み方は、医師の指示に従うことが基本です。

というのも、睡眠薬を減らせばだれでも眠りにくい状態に陥ります。これは、正常な反応です。

 

薬のへらしかた

  • 一般的には、2~4週間に一度、4分の1錠~2分の1錠ずつ減らしていきます。
  • 複数の種類を飲んでいる場合は、薬の作用時間が短い薬から減らしていく場合が多くあります。

→ただ、睡眠薬を増やすにしろ減らすにしろ、具体的な方法は医師の指示に従う必要があります。

 

ウソのようなホントの話し!

人は、年齢を重ねるごとに睡眠時間が短くなっていきます。

  • 10代:約8時間
  • 20代:約7時間
  • 30・40代:約6.5時間
  • 60代:約6時間

ちなみに私は30代ですが、8時間寝ないと辛いためこのように個人差はあります。


例えば、6時間睡眠で十分なAさんが「8時間寝ないといけない!」と思い込んでいて、朝の8時に起きようと0時に就寝したとします。

すると、実際は6時間で目覚めるため、朝の6時に目が覚めることになります。

本来、Aさんは不眠でもなんでもないのに「8時間眠れない!」という理由から、病院で睡眠薬を処方してもらうことにしました。

しかし、もともとAさんは不眠ではないため、睡眠薬を服用しても改善することはなく、どんどん薬が増えていくことになりました。

*こういった場合は、自分に必要な睡眠時間を探ることから始める必要があります。

 

最後に

睡眠薬は、原因が改善されれば服用をやめる必要があります。

  • 入院などの環境変化で服用を始めたのなら、退院したら服薬をやめる。
  • 一時的な痒みや痛みが原因で飲み始めたのなら、それらが治れば服薬もやめる。
  • ストレスや心配事などで始めたのなら、改善されたら服薬はやめる。

→睡眠薬は、意味もなく飲み続けるものではありません。(医師に相談)

以前に比べると、睡眠薬は安全に使えるようになりましたが、薬である以上は副作用があります。用法用量を守って医師に相談しながら服用して下さいね。

そして、即効性がある睡眠薬ではなく、あなたの症状にあった睡眠薬を処方してもらって下さいね。


参考

杉浦こころのクリニック
https://sugiura-kokoro.com/clinic/yakubutsu-ryouhou04-2.html

川本眼科
https://www.kawamotoganka.com/tayori/3218/

NHK健康チャンネル:睡眠薬が効かないのはなぜ?睡眠薬の効果について
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_318.html

元住吉こころみクリニック:睡眠薬(睡眠導入剤)
https://cocoromi-cl.jp/knowledge/psychiatry-medicine/sleeping-drug/about-sleeping-drug/

PRESIDENT Online:「睡眠薬」と「睡眠改善薬」は全く別物だ
https://president.jp/articles/-/27012

 

 

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