日本では虐待が社会問題化しています。
厚生労働省が平成29年度に発表した児童虐待対相談対応件数は、13万件を超えています。
この数値は過去最多で、統計を取り始めた1990年度から27年連続で増加しています。
日本では、このように深刻な状態に陥っています。
それでは、海外ではどのような取組みがおこなわれているのでしょうか?
今回は、「児童虐待に取り組んでいるフィンランドで実施されているネウボラ」ついてご紹介します。
そもそもフィンランドってどんな国?
- 人口:約550万人
- 面積:約33万8,000K㎡
日本の面積は、約37万㎢の大きさがあるため日本の約9割の面積を占めていることになります。
それにも関わらず、人口は日本の約4.6%しかないため日本とは違い人口密度がとても低い国でもあります。
つまり、日本のように「スペースをなんとか確保して!」という必要もなく、スペースに余裕を持って生活を営むことができます。
→子どもの貧困率の低い国:世界第2位
→子どもがいる世帯の所得格差が小さい国:第3位(日本は34位)
日本とは全く違います・・・
さて、そんなフィンランドは「福祉先進国」とも呼ばれます。
それでは、フィンランドで実施されている「ネウボラ」とはどういった取組みなのでしょうか?
「ネウボラ」ってになに?
「ネウボラ」とは、フィンランド語で助言の場という意味があります。
日本では、例えば保健師さんにより定期的な訪問がある場合もありますが、基本的にこちらから連絡を取ることはないですよね。
→つまり、日本では「気軽にできる助言の場」がうけにくく孤立しやすい環境にあります。
さて、このネウボラの役割は母親の妊娠初期から子どもの小学校入学まで、担当の保健師が子育てに関するあらゆる相談にワンストップ(一箇所でなんでも揃う)で応じる仕組みです。
つまり、日本のように複雑な区分分けがなされているわけではなく「この人に相談すればいい!」とういうことがはっきりしています。
日本でも相談する場として、保健師意外にも例えば小児科は頼りになりますが、日常の不安などは相談しにくいですよね・・・
さて、このネウボラでは妊娠中に約10回・産後に15回程度の定期検診や発達相談を受けます。これだけでも手厚いことが分かります。
そして、最大の特徴は父親やきょうだいが受けることも含まれていることです。
つまり、妊娠・出産でお母さんが孤立することはなく、そもそもお母さんの問題ではなく家族全体で取り組むこととして、当たり前のように受け入れられる仕組みが自然とできています。
「日本とは真逆!」といってもいいのではないでしょうか。
ネウボラはいつからあるの?
フィンランドでは、乳幼児や周産期妊婦の死亡率が高かった1920年代、小児科医や看護師らが始めたいわゆる「草の根活動」から始まりました。
1944年:法制化
今では、国民皆保険のサービスとして年齢層や社会的経済的地位に関係なく全家庭に無料で提供されています。
*日本では、2020年度までに妊娠から子育てまで一括して支援する「子育て世代包括支援センター」を全市町村に設置することを目指しています。
日本との大きな違い!
日本の場合は「困ったことがあったらいつでも相談に来て下さい!」ですよね・・・
こう言われて、相談したことがある人はどれくらいいるでしょうか?
ケアマネをしていた私の経験から断言しますが、困った時に本人から相談されることは基本的にありませんでした。
相談があるのは、問題が顕在化した本人からではなく、その家族や他の施設などの関係機関からがほとんどでした。
つまり・・・
- そもそも、自分から相談できない人にこそ支援が必要。
- そもそも、問題は習慣化しているため自分では気付けない。
- そもそも、職員の異動があるため対応する人が定期的に変わる。→「あなたは3人目・4人目の担当者」なんてザラでした。
このように、一貫したサービスが日本では難しいことが現状です。
日本でのネウボラ事業
三重県の名張市・埼玉県和光市・千葉県浦安市など、他にもネウボラ事業は少しずつ始められています。
ただ、研修や養成の必要性。個人情報や同意書の取り扱いなど、課題は山積みです。
そもそも、専門家や横との連携ができなくては話しになりません。
既存の制度をうまく活用できればいいですが、そもそも日本は縦割り行政が基本ですよね・・・
「ネウボラ」が縦割行政に組み込まれては意味がありません。
まずは、新しい取組みをおこなう前に、横と横など本当の意味で相互につながるシステム作りが最優先課題になりそうです。
最後に
日本とフィンランドでは、人口差がまったく違います。
そのため、そもそも日本で「ネウボラ」を取り入れようと思えば、専門職の数が膨大になります。
かといって、ケアマネのように一人で30人も40人もケースを抱えてしまっては本末転倒です。
まずは、サービスがサービスとして機能できる体制にする必要があります。
そして、「子育て」は親が主体ですが親だけがするものではありません。
いつでも気軽に相談できる人がいて、なおかつ家族全体で悩みを共有できている状態。確かに、この状況なら虐待数は大幅に減りそうですね。
この状態に持っていくことが、今後の日本の根本的な課題ではないでしょうか。
参考
子ども虐待防止 オレンジリボン
→http://www.orangeribbon.jp/info/npo/2018/09/29-3.php
朝日新聞GLOBE:全家庭が無料、フィンランドの子育て支援「ネウボラ」 日本にも広がる
→https://globe.asahi.com/article/12200351
フィンランド大使館
→https://www.jpa-web.org/dcms_media/other/20170610toyama%20slides_Tokiko.pdf
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