前回、「ポビドンヨードが含むうがい薬がコロナに効果があるかもしれない」ということで大阪府知事が紹介していた根拠やヨウ素の危険性についてご紹介しました。
ただ、この件がきっかけですでに薬局などからイソジンなどのうがい薬が無くなり、メルカリなどのフリマアプリなどで高額で転売されています。
ただ、医薬品の転売はそもそも違法です。
今回は、「法律的にも倫理的にもアウトな医薬品の転売」についてご紹介します。
→「ポビドンヨードの注意点」についてはこちらの記事で紹介しています。
医薬品の転売は禁止されている!
そもそも、私達の身近にある消毒剤は「医薬品」です。
おそらく、このことは分かっているけど、理解できていない人達が多すぎるのでしょう。例えば、「医薬品」と一言でいってもたくさんの種類があります。
東京都福祉保健局より
医薬品の種類
- 病院・薬局で処方箋により購入した医薬品
- 要指導医薬品・・・、販売・購入の際に処方せんは不要だが、薬剤師が対面で情報提供や指導の義務付け・インターネット販売ができない医薬品
- 第1類医薬品・・・薬剤師による情報提供が義務づけられている特に注意が必要な薬
- 第二類医薬品・・・薬剤師・登録販売者から購入でき、販売者からの情報提供は努力義務
- 第三類医薬品・・・薬剤師・登録販売者から購入でき、購入者から希望がない限り、情報提供は不要
- 体外診断用医薬品・・・体に直接使用する医薬品ではなく、血液・唾液など検査に使われる試薬。
このように、さまざまな医薬品があります。
それでは、どういった法律で規制されているのでしょうか?
医薬品医療機器等法
正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。
薬機法とも呼ばれますが、この法律は「保健衛生の向上」が主たる目的となっています。
そもそも、医薬品は第24条で許可無く販売することは禁止されています。
第二十四条 薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。以下同じ。)してはならない。
さらに言えば、以下のような行為を一度でもすれば違反する恐れがあります。
違反する行為とは?
- 許可無く医薬品をフリマアプリ等で販売
- 許可・届出なく医療機器(一般器量機器除く)をフリマアプリ等で販売
- 個人輸入した化粧品(海外製化粧品)等をフリマアプリ等で販売
- 国内で医薬品に指定されている成分を含む海外製のサプリメントの出品
- 製造番号(ロット番号)・成分表示などの法定表示事項の一部または全部が変更、削除された化粧品等の販売
こういった行為は、そもそも法律違反になります。
例えば、「医療機関で処方された医薬品のあまりを出品したり」、「ドラックストアで購入し、家で保管していた医薬品を出品したり」してはいけません。
あくまでも、出品していいのは「医薬部外品」
です。
~ワンポイントアドバイス! 「医薬部外品」ってなに?~
「医薬部外品」は、薬機法で定められた医薬品と化粧品の中間の製品です。
というのも、人体の改善効果は持っているが効果が弱く、副作用の危険性が無いことが条件になっているためです。
つまり、「保健衛生の向上」に影響がないため、医薬「部外品」になっています。
例えば、薬局だけでなくスーパーやコンビニなど、薬剤師がいない場所でも販売できます。それでは、早速転売されているポビドンヨードは医薬品ではないのでしょうか?
ポビドンヨードは医薬品?
そもそもの話しになりますが、うがい薬=医薬品ではありません。
例えば、「うがい薬」と一言でいっても指定医薬部外品があります。
「指定医薬部外品」ってなに?
簡単に言えば、最初は医薬品であった物が、医薬部外品へ移行した品目のことです。
つまり、医薬部外品と扱うことができるようになった「元医薬品」です。
そのため、薬局・薬店でしか販売できない医薬品とは異なり、医薬部外品と同じようにコンビニやスーパーでも販売できます。
ただ、「指定医薬部外品」がない時代は、薬局が閉まってしまえば購入できませんし、売り側としても薬局以外の場所でも販売ができることが希望されていました。
そういった経緯があり、1994年から規制緩和を求める動きが始まりました。その結果、効果が穏やかな医薬品を中心に医薬部外品として移行していきました。
さて、それでは本題のポビドンヨードは、医薬部外品なのでしょうか?
ボビドンヨードは「ヨウ素剤」
ボビドンヨードは、日本薬局方にも収載されている医薬品です。
ちなみに、ポビドンヨードはうがい薬としてだけではなく・・・
- 外科手術時の消毒
- 皮膚粘膜の創傷部位の消毒
- 熱傷皮膚面の消毒
- 感染皮膚面の消毒
などなど、広範囲にわたって使用されています。
さて、ポビドンヨードが含まれるうがい薬と言えば、「イソジン」
を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
例えば、イソジンうがい薬にはボビドンヨードが含有されていて、第三類医薬品に指定されています。つまり、転売してはいけません。
一方、「イソジンクリアうがい薬」と呼ばれるうがい薬には、ポビドンヨードは含まれていません。また、指定医薬部外品であるため、医薬品ではありません。
もっと言えば、「イソジンクリアうがい薬」は、スーパーやコンビニでも購入することができます。
*そもそも、外箱に「医薬品」なのか「医薬部外品」なのかは記載がされている。
最後に
そもそも、スーパーやコンビニなどで売られている医薬部外品であっても、転売目的などどんな理由があるにせよ、買占めは論外です。
また、店舗を回って買占めていれば目立って仕方がありません。そして、さらに悪質なのは日本だけでなく海外でも買占め後の返品が問題になっていることです。
買占めた人達のせいで品薄が続き、今度は「余ったから!」と自分勝手に返品を求めてくる。
店員さんからすれば、その人達のせいで毎日のようにお客さんから「いつ入荷してくるの!?」なんて責められていたことでしょう。
そんな人達が、「やっぱり必要なかったから!(転売できなかったから!)」と返品しにくる。
店員さんも人間です。そんな自分勝手な人達の顔は、覚えているでしょう。
「買占め」には、さまざまな理由があるのかもしれません。ただ、買占めで店側に迷惑をかけ、さらに返品でも迷惑をかけることは、営業妨害のなにものでもないでしょう。
ちなみに、例えばメルカリでは合法な医薬部外品の出品についても、市場価格と著しく異なる高額商品は、削除などの対応が検討されています。
迷惑行為は、改善するために新たなルール(規制)が作られ、これまで使えたサービスをどんどん萎縮していくことになります。
倫理違反は、繰り返されると放置できなくなり自由度がどんどん失われ、既存の型に当てはめられていってしまいます。
すでに手遅れかもしれませんが、これ以上厳しくなる前に、ルールと倫理観は守っていきたいですね・・・
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