マスクをしても酸素飽和度は下がらない? 分娩とマスクとWHO

 

最近では、「分娩時にもマスクを着用する」ということが産婦人科の主流な考え方になってきているようです。

正直、私も最初は耳を疑いましたが調べて見ると、確かに「分娩時にもマスク着用を依頼している産婦人科」をいくつも見つけました。

それでは、本当に分娩時にマスクを装着しても問題ないのでしょうか?

今回は、「マスクと息苦しさ」についてご紹介します。

 

マスクを装着すると酸素飽和度は下がる?

マスクを装着することで、すでに多くの人が息苦しさを感じていることと思います。

中国では、マスクを付けて運動した中学生の突然死が相次いだことが、ニュースにもなっていました。原因は不明ですが、「マスクが呼吸を妨げた」と考えられています。

このことから、少なくとも運動時にマスクの着用は危険なことが分かります。

それでは、酸素飽和度はどのように変化するのでしょうか?

*酸素飽和度は、パルスオキシメーターで簡単に測ることができます。

→酸素飽和度(SpO2)とは、心臓から全身に運ばれる血液(動脈血)の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%に酸素が結合しているか、皮膚を通して(経皮的に)調べた値です。

  • 一般的に96~99%が標準値
  • 90%以下は呼吸不全の可能性がある
  • 普段の値から3~4%低下すれば注意が必要

*例外としては、例えばSpO2が標準値だったとしても「呼吸数が10回と20回」では、意味合いが変わる。

→低酸素血症を引き起こす基礎疾患などがあれば、呼吸数を増やすことで正常な酸素飽和度を維持しようとするため。

それでは、マスクで酸素飽和度は本当に変わるのでしょうか?

 

マスクと酸素飽和度の関係は?

米国サウスカロライナ州のコンウエイ医療センターで働く小児科医:コンウエイ医療センターのMegan Hall医師が、フェイスブックにこんな投稿をしていたことが紹介されています。

「マスクをした状態」と「していない状態」で、血中酸素飽和度(血中酸素量)を計測した実験を、この小児科医自身が行った結果の紹介です。

  • マスクを付けていない状態       ・・・Spo2=98%(1分間の心拍数/脈拍数:64)
  • 5分間サージカルマスクを付けた状態   ・・・Spo2=98%(1分間の心拍数/脈拍数:68)
  • 5分間N95マスクを付けた状態     ・・・Spo2=99%(1分間の心拍数/脈拍数:69)

結論としては、たとえN95マスクを装着したとしても「酸素飽和度」と「脈拍」に影響はないことが結論付けられています。

ただ、これはあくまでも安静時に測定されています。このことは、ほとんど変化していない脈拍をみれば一目瞭然です。

また、そもそも日常生活で、マスクを装着する場合は5分以上ですよね・・・

つまり、「少なくとも健康な人は安静時に5分程度はマスクを付けても問題がない」という、あくまでも簡単な証明にはなるかもしれません。

ただ、「マスクを付けても酸素飽和度に影響がない!」とは言えません。

というわけで、さらに調べてみました。

 

本当に、マスクで酸欠状態に陥らないの?

清野 充典:鍼灸師が、マスクと酸欠について紹介している記事(2020年5月1日付け)を見つけました。

この記事の中で、マスクの影響について紹介されています。

 

マスクをして生活している人が訴える症状

  • 頭痛
  • めまい
  • 視力低下
  • 集中力低下

さて、こいった症状はすでに多くの人が実体験として経験しているのではないでしょうか?

だからこそ、「マスクをしても酸素飽和度は低下しない!」と言われても、どうしても信じることができませんよね・・・

だからこそ、まさか「分娩時にまでマスクを付けるの!?」と私は本当に驚愕しました。

それでは、マスクを付けるとどういったことが引き起こされるのでしょうか?

 

マスクの悪影響とは?

そもそも、マスクをして呼吸するわけですから程度の差はあると思いますが、自分の吐いた息を少なからず吸っていることになります。

ここに、疑いの余地はありませんよね。

さて、通常私達は約21%の酸素濃度の空気を吸い込み(吸気)、肺で酸素を取込んで約15%の酸素濃度の空気を吐き出し(呼気)ています。

つまり、吐き出した息にも酸素はまだ含まれています。

それでは、どれくらいの酸素濃度で酸欠状態になると思いますか?

→実は、通常なら16%の酸素濃度を吸い始めると自覚症状が現われることになります。ちなみに、「酸素濃度が10%以下になると命に関わる」と言われています。

結論から言ってしまえば、「そもそも自分が吐いた息には十分な酸素が含まれていない」さらに言えば、吐いた息には軽い酸欠状態を引き起こす酸素濃度しかないことになります。

 

酸欠状態が続いたらどうなるの?

  • 脈拍増加
  • 呼吸数増加
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 全身脱力
  • 意識喪失

などが現われるようになります。

そのため、少なくとも長時間のマスク着用は健康を害することが記事で指摘されていました。また、マスクによっては鼻の穴に密着してしまい呼吸が苦しくなることもあります。

結論としては、30分に1回はマスクを外して深呼吸が必要になると結論付けられています。

当然、運動すればさらに多くの酸素量が必要になるため、安静時よりも注意が必要になるでしょう。

それでは、「分娩時にマスク」はどのような体制で行われているのでしょうか?

 

分娩時にマスクをするの?

そもそも、2020年7月9日にWHOが新指針として「主に屋内で、混雑し換気が不十分な場所で新型コロナウイルスが空気感染することは無視できない」とし、空気感染、そしてエアロゾル感染の可能性を指摘したことが注目されました。

さて、エアロゾルというのは明確な定義はありませんが飛沫の水分が蒸発し、ウイルスだけが残る飛沫核という状態が「エアロゾル」です。

飛沫感染とは違い、エアロゾルは浮遊するということになります。

つまり、ソーシャルディスタンスではあまり予防にならないため、「マスク」と「換気」が必要になります。

さて、現実問題として院内感染が起きたら分娩施設を閉鎖することになりますよね・・・

そのため、度々問題が指摘されるWHOですが、「エアロゾル感染の可能性」が示された以上、医療機関としては対応しなくてはいけません。

つまり、「マスク」や「換気」、「エアロゾルを吸引できる設備」の導入などが対策として上げられますが、そもそも設備投資は簡単にできませんよね。

また、分娩室は保温のため窓を閉め切った状態になっています。

→選択肢として、「分娩時にマスクを付けてもらう」という一択になります。

ただし、苦しい場合は酸素マスクを使うといったこともできます。

そもそも、分娩は病院内で実施されるため、素人判断ではなくまさにプロが判断して「ことに当たる」ことになるため、日常とは大きく違います。

ちなみに、ヨミドクターの記事では「分娩時のマスク」についてこのように書かれていました。

マスクを着用しても酸素飽和度に影響はなく、「死んじゃう」ということはありません。赤ちゃんにも影響はなく、苦しがることもないので、ご安心ください。

また、nippon.comでは・・・

日本産科婦人科学会によれば、今年5月に全国766の施設を調査したところ、64%の施設で分娩時にマスクの着用をお願いしている

ということでした。

つまり、5月の時点ですでに6割以上の施設でたくさんのお母さん達がマスクをした状態で赤ちゃんを出産していることになります。

WHOの新指針を受けて、今後はさらに進められていくことになるでしょう。本当にお母さんや医療関係者には頭が下がる思いです。

 

最後に

私の母親に「マスクをして分娩ってどう思う?」と聞いたところ、「ありえない!」と驚いていました。(私の奥様は帝王切開でしたので「分からない」とのことでした。)

そして、「普段でもしんどいのに、あんな状況でマスクなんてしたら、死んでしまうわ!」と一蹴されてしまいました。

ただ、今回の件を話すと「赤ちゃんのためやし、やれと言われればやるんちゃう?」と、あっさり言っていましたが・・・

「母は強し」と言いますが、男の私からすれば男が弱すぎる(覚悟が足りない)だけなんだと、反省した今日この頃です。


参考

マイナビRESIDENT:19. デキる研修医の診察術 バイタルサイン編
https://resident.mynavi.jp/conts/tsukurikata/index19.html

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です