校則により訴訟 ~学校教育法には「生徒の懲戒」については規定がある!?~

 

前回の記事で、校則についてご紹介しました。意味不明な校則がまだまだ残っている現状ですが、拘束力のあるこの校則。

ですが、実は校則をめぐっては訴訟が何度も起こされています。しかも、昔の話しではなく今も続いています。今回は、「校則をめぐる訴訟」についてご紹介します。

前回の「校則」についての記事はこちらで紹介しています。

「校則」は時代で変わる? 合理的な理由があれば「校則」は法律よりも強い!?

 

これまでの裁判事例

事例1)

熊本丸刈り訴訟(熊本地裁1985年)

→男子生徒に丸刈りを強制する公立中学校の校則が争われた訴訟。

「丸刈りを定めた本件の校則内容が著しく不合理であると断定することはできない。」とされた。

 

事例2)

兵庫県の小学生が、進学予定の中学校の「男子生徒は丸刈り」という校則は違反とした訴訟。

→最高裁が1996年、原告側の上告を棄却したが、校則について「守るべき一般的な心得を示すにとどまり、生徒に対する具体的な法的効果を生じるものではない」と判断を示しました。

 

事例3)

私立高校パーマ退学訴訟(1996年)

→高校卒業の間際に普通自動車運転免許を取得(校則違反)。その罰としての登校期間中にパーマをかけたことなどを理由に学校が生徒に自主退学するよう勧告したことの適法性が争われた訴訟。

「高校生にふさわしい髪型を維持し、非行を防止するため」と鑑み、不合理な校則ではないとした。

 

事例4)

赤みがかった地毛の黒染めを学校で強要された宮城県立高校の元女子生徒が損害賠償を求めた訴訟。

→2006年、仙台地裁で県側が「教育的配慮に欠けた」と謝罪し和解

 

事例5)

黒染め訴訟(2017年10月に第1回口頭弁論)

→生まれつき茶髪の女子高生が提訴。

  • 生徒心得(校則)にある、「染色や脱色を禁止」を理由に黒く染めるように学校側は指導
  • 最初は原告生徒も応じていたが、そもそも地毛が茶髪なため何度も黒に染め直していた。
  • 頭皮がボロボロになり、頭髪や頭皮に健康被害が起こる。
  • 染めることができなくなくなったが、黒染めが不十分として授業の出席を学校側が禁止。
  • 修学旅行の参加も認められなかった。
  • 女子生徒は不登校になる。

他にも学校側(教師)のいじめとも思える言葉もありますが、真偽は不明なので新聞に掲載されている部分のみを紹介しています。

ちなみに、学校側は「金髪の留学生がくれば黒く染める」といった説明をしているようです・・・

Axe77 / Pixabay

 

考察

❶これらの裁判事例から分かるように、裁判になったとしてもほとんど原告(生徒)側が勝てるようなことはないようです。

➋事例5について、本当に留学生がきたとして留学から帰った子どもが黒髪だったら親はどう思うのでしょうか?国際問題にならない?

❸そもそも、「染色・脱色禁止」という校則であって、「黒髪しか認めない!」という校則ではありません。さらにいえば、文部科学省の通知にはこのようにあります。

校則自体は教育的に意義のあるものですが,その内容・運用は,児童生徒の実態,保護者の考え方,地域の実情,時代の進展などを踏まえたものとなるよう,積極的に見直しを行うことが大切です。

❹通知には、「児童生徒の実態」とありますが、完全に無視されています。(「人権侵害をしてもいい!」とどこにも書かれていません。)

❺校則には根拠となる法律がありませんが、「法律よりも優先されている?」ような印象があります。

*事例5)の訴訟も負けるようなことがあれば、それこそ「どこかにある支配国家?」って多くの人が感じるのではないでしょうか?

 

学校権限

「校則」についての根拠は法律で定められていませんが、児童生徒の「懲戒」については法的に定められています。

~学校教育法11条~

校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは文部科学大臣の定めるところ(学校教育法施行規則)により、児童・生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

 

~学校教育法施行規則26条~

校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当っては、児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。

26条 2.懲戒のうち、退学・停学及び訓告の処分は、校長がおこなう。(大学にあっては学長の委任を受けた学部長を含む。)

→退学については、「公立の小学校・中学校・義務教育学校・特別支援学校の在学生」は認められていません。

それ以外の児童等で、以下の要件に該当すれば退学させることができます。

  1. 性行不良で改善の見込がないと認められる者
  2. 学力劣等で成業の見込がないと認められる者
  3. 正当の理由がなくて出席常でない者
  4. 学校の秩序を乱し、その他学生または生徒としての本分に返した者

停学は、学齢児童または学齢生徒に対してはおこなうことができない。

ColiN00B / Pixabay

 

退学・停学・出席停止処分

簡単に言えば・・・

  • 停学:義務教育の間は、停学はない。
  • 退学:公立の義務教育はできないが、私立には退学がある。

ただし、「出席停止処分」は義務教育でも認められています。

*停学や退学は「懲戒」ですが、出席停止処分「本人の懲戒ではなく学校の秩序の維持・他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障する」目的で設けられています。

→公立小学校・中学校において、学校が最大限の努力をもって指導したにも関わらず、性行不良で他の児童生徒の教育の妨げがあると認められる場合は、市町村教育委員会がその保護者に対して児童生徒の出席停止を命じることができます。

 

最後に

校則違反→評価が下がる→学生にとっては進学が危ぶまれる→仮に退学処分を不服として訴訟を起こしても時間がかかりすぎ勝てない可能性が高い。=学校(先生)には逆らえない。

という構図が、昔も今もあるように思います。そうかと思えば、生徒が教師をいじめるなんてこともありますが・・・

ただ、2020年から始まる教育改革で目指しているのは「国際的にも通用する子ども達を育成すること」にあるようです・・・

分かりやすくいえば、これまでのように受動的なマニュアル人間やいわゆるいい子ちゃん(先生のいうことだけを聞く生徒)は評価されにくくなります。むしろ、自主的に考え発言していく能動的な子ども達が評価されていくという方針に変わっていきます。

教育改革については、こちらの記事でも紹介しています。

2020年教育改革 ~英語教育はどうなっていく?~

本来なら、校則を変えるぐらいの子ども達がでてきてもおかしくない教育をすることが、学校には求められています。皆さんは、学校教育が変わると思いますか?

*子どもに関する相談は、例えば滋賀県弁護士会がおこなっている「こどもの悩みごと110番」で相談することができます。


参考

産経west
https://www.sankei.com/west/news/171027/wst1710270055-n1.html

滋賀弁護士会
http://www.shigaben.or.jp/legal_advice/children.html

朝日新聞DIJITAL
https://www.asahi.com/articles/ASKBS6D22KBSPTIL024.html

学校教育法施行規則
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=322M40000080011_20170401_999M40000080011#D

学校教育法
http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00000944.html

 

 

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