「がんゲノム医療」の一部がついに保険適用に!? がん治療の概念が変わる?

 

皆さんは、「新しいがん治療」についてご存じでしょうか?

これまでも、多くの「新治療」なるものがありました。ですが、今回の新治療は「一部とはいえ、国の保険治療が認められた」治療方法です。

今回は、そんな「がんゲノム医療」についてご紹介します。

 

「ゲノム」ってそもそもなに?

  • 遺伝子=英:Gene(ジーン)→たんぱく質を作る単位。(人:約23,000種類の遺伝子)
  • -ome(オーム)=ラテン言の「全体、かたまり」を意味する接尾語

=ジーン+オーム

ゲノム(Genome):「ある生物種がもつ遺伝子情報の総体」という意味があります。

 

そもそも、「がん」はどうして起こるの?

基本的に、ガンは遺伝子の傷(突然変異)により発生します。注意する点は、ガンは「遺伝子が原因で起こる病気」ですが、「遺伝病」ではありません。

 

遺伝病

こんなことを言うと、「ガンは遺伝するじゃないか!」と言われる方もいらっしゃるかと思います。

ですが、親の精子と卵子が受精した「受精卵」という、たった1つの細胞から子どもの全体が作られます。そして、次の孫の世代へと遺伝していきます。

精子や卵子のことを「生殖細胞」と言いますが、遺伝病はこの生殖細胞に傷があることで次の世代にも伝えられていってしまいます。(先天的な病気)

遺伝病は、生殖細胞のゲノムに傷があることで遺伝していく病気です。

 

がんは「後天的変異」!

一方、「がん」は肺や胃などの他の臓器に後天的に起きた遺伝子の傷が溜まったことで起こる病気です。

つまり、基本的にがんは遺伝子の傷(後天的)により起こりますが、遺伝病(先天的)ではありません。

さらに言えば、生殖細胞以外のものを「体細胞」といいますが、がんはこの体細胞のゲノムに後天的変異が蓄積して起きる病気のためそれ自体は子どもに遺伝しません。

*ただし、例えば乳がんそのものは遺伝しませんが、「乳がんになりやすくなる」というリスクは遺伝してしまいます。

それでは、「がん治療」はこれまでどのようにおこなわれてきたのでしょうか?

 

これまでの「がん治療」はどんな治療だったの?

そもそも、細胞が分裂するときにがん細胞ができてしまいます。

細胞分裂の仕組みとしては、「分裂して!」というシグナルが「タンパク質A→タンパク質B→タンパク質C→核が分裂!」といった具合に順番に指示が届いて最終的に分裂します。

ところが、タンパク質Bが突然「分裂しろ!」と嘘のシグナルを出します。すると、タンパク質Cが核にシグナルを送って勝手にどんどん分裂していきます。

これまでは、タンパク質Aやタンパク質Cなど正常に働いている細胞まで働きを押さえつける治療が行われていました。

ですが、「がんゲノム医療」は、これまでの治療法とはまったく違います。

 

がんゲノム医療ってなに?

なんでこんなに話題になっているの?

今回のそもそもの話しは、2018年12月に「2種類のがん遺伝子パネル検査が製造承認された」ことがきっかけです。

これにより、「2019年6月1日から「がん遺伝子パネル検査」が保険適用され、がん治療に役立てることができる」ことになりました。

 

なにがそんなに画期的なの?

◎これまでのがんの分類は・・・◎

  • がん発生臓器(肺や胃など)
  • 病理系(原因や症状など)

→これが、がん治療に対する基本的な分類(考え方)でした。

この分類にそって、薬も選ばれてきました。ところが、がんに対する概念が変わるほどの新しいことが分かりました。

 

◎分類の考え方が変わった!◎

  1. たった1つの遺伝子が、異常な活性化を「いろんな臓器で起こして」「いろんながんの原因になっている」
  2. 逆に、例えば「肺がん」といっても単一ではなく小さながんの複合体であることが分かった。

つまり、異常な遺伝子を特定することがない「臓器」や「病理」だけをみた治療で薬を選択する方法では効果が厳しいことが分かりました。

「がんゲノム医療」とは、この原因となる遺伝子を特定して、より効果が高い治療薬を選択することで1人1人にあった個別化医療を可能にしていきます。

 

がんの原因遺伝子を特定するには?

つまり、個人のがん原因となっている遺伝子を特定する「がん遺伝子パネル検査」という作業にかかる費用について、保険適用されることになりました。

ただし、保険対象となる検査システムは決まっています。

  • OncoGuide NCC オンコパネルシステム(シスメックス株式会社)
  • FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル(中外製薬株式会社)

だけです。これ以外の検査システムは保険適用外になります。

*ちなみに、上記の検査システムの公定価格は56万円です・・・

それでは、がんゲノム医療でなにが変わるのでしょうか?

 

がんゲノム医療 

「がんゲノム医療中核拠点病院」と「がんゲノム医療連携病院」で、がんゲノム診療が実施されます。

 

◎2019年4月時点◎

  • 「がんゲノム医療中核拠点病院」・・・11ヶ所
  • 「がんゲノム医療連携病院」・・・156ヶ所

将来的には、全国どこにいても「がんゲノム医療」が受けられるように目指しています。

厚生労働省が指定した「がんゲノム医療中核拠点病院」が、自らが連携する「がんゲノム医療連携病院」の候補となる医療機関を厚生労働大臣に申請されます。

中核拠点病院と連携病院の中間層である、「がんゲノム医療拠点」が整備されることも決まっています。

そして、がんゲノム医療で収集したデータを一括に集めるデータセンター(がんゲノム情報管理センター:C-CAT)で研究・開発・人材育成・臨床試験の促進などが行われがんゲノム医療革新の核となっていきます。

 

デメリットは何かあるの?

今後期待されている「がんゲノム医療」ですが、現在と今後の課題がすでに指摘されています。

◎現在の課題◎

  • がんの再発などで、標準的治療では効果が見込めなくなった患者さんが対象。
  • 早い段階からゲノム医療を受けられない。
  • 有効な薬が見つからないことが多い。(10~20%の見込み)
  • 治療できる病院(場所)が限られている。
  • 費用がまだまだ高額

遺伝子を選んで薬を選ぶまでで、3割負担→168,000円の費用がかかる。(高額医療費が適用されると、所得に応じてさらに抑えられる。)

*ただし、薬を投与して治療する費用が別途かかる・・・

 

◎今後の課題◎

  • 遺伝情報の取り扱い。(先天的な異常も同時に見つかることもあるが、そういった情報も含めてどう扱うか・検査結果によっては保険に入れなくなるなど)
  • 今後の医療費に対する財源。

このように、治療する場所・限られた対象・高額費用・遺伝情報の取り扱いなど課題がたくさんあります。そもそも、個人の遺伝子を扱うため、想定外の問題が起こる可能性が十分にあります。

 

最後に

「2人に1人は、がんになる」と言われ、がんは決して珍しい病気ではなくなりました。

「がんも不治の病ではなくなる!」なんてよく聞きますが、さまざまな遺伝情報が解析されがんに対応した薬がどんどん開発されれば、本当にがんも治る病気になるのかもしれません。

ただ、がんが克服されてもまた新たな病気が出てくるかもしれません。生き物である以上、死から逃れることはできません。

晩婚化が叫ばれる現在、私の子ども達が結婚するのは20年以上先の話になると思います。その時、私は60代を越えているかもしれません。「未来の医療がどうなっているのか?」

皆さんはどう思いますか?


参考

厚生労働省:がんゲノム医療の現状について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000504302.pdf

がんゲノム情報管理センター
https://www.ncc.go.jp/jp/c_cat/index_kan_jya.html

yahooニュース:がんゲノム医療 ついに保険適用へ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagitaemmy/20190531-00128074/

 

 

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