新型コロナウイルスは「疑似性サーベイランス」で調査中!?

 

これまで、新型コロナウイルスについての記事をあげていますが、全世界的にどんどん拡散している様子を追っている状態です。

ただ、政府の対応を見ると「感染の拡散対策」よりも、「感染者の人権」を守ることに重きが置かれています。

また、1月29日12:00時点で、中国では100人以上の方が亡くなり感染者も5,000人を越えてしまいました。

ただ、さまざまな国に拡大はしていますが、その国での感染拡大は見られません。死者についても、中国以外は一人も出ていない状態です。

SNSでは、「細菌兵器だ!」と主張する人までいますが、私には真偽を確かめる術がありません。ということで、今回も厚生労働省が発表している情報をお伝えします。

今回は、「新型コロナウイルスの日本での早期発見をどのようにしているのか?」についてご紹介しています。

 

早期発見の方法は?

1月29日12:00時点までに、新型コロナウイルスは「疑似症サーべイランス」に基づいて計23件の検査実施されました。(その内7例が陽性。16例が陰性と診断されています。)

→その後、同日に8例目が確認されています。

ちなみに、「陽性」というのは+(プラス)の反応。つまり、「感染していた」という意味です。

さて、「疑似症(ぎじしょう)サーベイスランスに基づいて」と言われても、「なるほど!」とはならないですよね。

それでは、新型コロナウイルスの調査はどのように行われているのでしょうか?

 

「疑似症サーベイランス」ってそもそもなに?

「疑似症」というのは、今回の感染症で言えば「新型コロナウイルスによく似ているが、はっきりそうであるとは断定できないもの」です。

新型コロナウイルスの初期症状は、咳や発熱、筋肉痛など風邪やインフルエンザとほぼ同じため、見分けが付きません。

また、「サーベイランス」とは注意深く監視するという意味です。つまり、「新型コロナウイルスだと断定するために注意深く監視する。」

これが、疑似症サーベイランスとよばれるものの目的です。それでは、「疑似症サーベイランスの運用ガイダンス」についてみていきましょう。

 

「運用ガイダンス」とは?

そもそも、このガイダンスは「原因不明の重症の感染症の発生動向を早期に把握することが目的」です。

そして、2019年2月14日に改正された染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)がきっかけで作られました。

つまり、疑似症サーベイランスのガイダンスは、感染症法に基づいて作られています。さて、根拠法が分かったところで、どのように運用されていくのか見ていきましょう。

 

《疑似症の定義》

疑似症は、発熱、呼吸器症状、発しん、消化器症状又は神経症状その他感染症を疑わせるような症状のうち、医師が一般的に認められている医学的知見に基づき、集中治療その他これに準ずるものが必要であり、かつ、直ちに特定の感染症と診断することができないと判断したもの

新型コロナウイルスを定義に当てはめると、風邪やインフルエンザなどと症状が同じなため、「特定の感染症」と簡単に判断することができません。また、肺炎により集中治療が必要な感染症でもあるため、疑似症の定義に合致します。

 

《届出基準》

疑似症の定義を満たしていること。ただし、以下の2つに該当する場合は、届出の対象とならない。
 当該症状が2~5類感染症の患者の症状であることが明らかである場合(注:当該感染症の届出基準に基づき届出を行う)
 *感染症法の対象外の感染性疾患であることが明らかである場合

さて、疑似症の定義を見ると、感染症法の対象外の感染性疾患であることが明らかである場合は対象外になることが示されています。

つまり、新型コロナウイルスは感染症法対象外の感染性疾患です。さらに、症状が2~5類に指定されている感染症とは明らかに違うことが分かっています。(新種のコロナウイルス)

→以上のことを踏まえると、前倒しされた2月1日に「指定感染症に指定」されることで初めて、「疑似症サルベージの対象」に正式に決まることになりそうです。

*ただし、新型コロナウイルスについては、すでに「疑似症サーベイランス」が実施されています。

 

《指定届出機関》

疑似症の発生の状況の届出を担当させる指定届出機関の指定は、集中治療その他これに準ずるものを提供できる病院又は診療所のうち疑似症に係る指定届出機関として適当と認めるもの

さて、指定届出機関は「疑似症定点」として設定されます。そして、届出基準に合致することが判明した時点で、直ちに保健所へ報告することが義務づけられます。

もちろん、「定点」として選ばれるわけですから、地域の医療機関における原因不明の重症の感染症が疑われる患者の受け入れの現状を考慮して設定されます。

ちなみに、ガイダンスには「できるだけ当該都道府県全体の疑似症の発生状況を把握することができるようにするため、人口及び医療機関の分布を勘案しつつ選定する」とあるため、都道府県により届出機関の数にはバラツキがあることになります。

以上のことから、新型コロナウイルスが「疑似症サーベイランス」の実施が必要な感染症であることが分かりました。

それでは、報告を受けた保健所はどのような対応をするのでしょうか?

 

保健所の対応は?

保健所は、届出内容を確認の上、原則として1例ずつ報告内容を確認していきます。

そして、必要に応じて・・・

  • 症例の臨床症状
  • 検査所見(一般検査、病原体検査等)
  • 疫学情報(例:推定感染地域、渡航歴、職業歴、国籍、患者集積の有無等)

こういった情報を、追加収集していきます。

そして、保健所などからの求めに応じて「国立感染症研究所感染症疫学センター」は、国内外の感染症の流行状況や、疫学情報も参考にしながら、事例のリスク評価について支援していきます。

 

最後に

疑似症サーベイランスは・・・

「特定の感染症との診断ができない場合に、届出を行うことにより患者報告のための明確な定義を満たさないが、重症であり早期に対応が必要な症例を迅速に探知すること」が意図されています。

つまり、少しでも早くより多くの情報を集めることが最大の目的です。

冒頭でお伝えしたように、1月29日12:00時点で厚生労働省が発表している疑似症サーベイランスは23件しか実施されていません。

しかもその内、7例が陽性反応でした。つまり、約30%が日本国内では陽性だったことになります。

絶対数が少ないため、まだ正確なことは分かりません。

ただ、武漢市からの旅行者や武漢市から戻ってきた日本人。現在、それ以外の中国国内や海外にいる日本人、国内の日本人や外国人など範囲を広げていけば、分母がどんどん増えていくことは容易に予想できます。

*やはり、2月7日の指定を待つ余裕はなかったようです。今後どうなるかはまだまだ未知数です。


参考

厚生労働省:中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎について(令和2年1月29日版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09196.html

疑似症サーベイランスの運用ガイダンス(第三版)
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/PDF/gijisyo-gildeline-200110.pdf

 

 

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