新型コロナウイルスは、残念ながらどんどん波及しています。
最近では、マスクに続き消毒液が薬局などの棚から消えている様子に違和感がなくなってしまいました。
さて、そんな消毒液ですが「自作できる!」と言うことで、今度は精製水まで棚から消えているようです。
どうやら、無水エタノールと精製水を混ぜることで消毒液が作れることが、テレビで紹介されたことが1つの原因のようです。
今回は、「本当の情報も受け取り側の問題で誤情報になる」そんな事例を、精製水が棚から消えた事情からご紹介します。
そもそも「エタノール」ってなに?
多くの人が「エタノール」と聞いて思い浮かべるのは、傷口などに塗布する「消毒用のエタノール」ではないでしょうか?
ですが、実は「エタノール」と一言でいっても1種類ではありません。
そもそも、エタノールというのは国際科学命名法の呼び名で、慣用名は「エチルアルコール」と呼ばれるアルコールのことです。
さて、そんなエタノールはアルコール濃度の高い順に以下の3種類があります。
- 無水エタノール・・・99.5vol%
- エタノール・・・95.1~96.9vol%
- 消毒用エタノール・・・76.9~81.4vol%
→vol%(ボリュームパーセント)は、アルコール濃度の単位のことで体積で考えたときの濃度のことです。
つまり、無水エタノールがもっともアルコール濃度が高いことが分かります。ここで、勘違いしやすいのが「消毒にも使われるアルコールの濃度が高いなら殺菌・消毒にも効果がある!」という考え方です。
残念ながら、アルコール濃度が高いはずの無水エタノールでは、一部の特殊なウイルスを除いて私達のまわりにいる菌やウイルスを殺菌・消毒することができません。
そもそも、最もアルコール濃度が低いエタノールに「消毒用」と書かれている点からみても、分かっていただけるのではないでしょうか?
無水エタノールのメリット・デメリット
そもそも、無水エタノールは水分をほぼ含まない純度の高いエタノールで、洗浄力も抜群です。ただし、良くも悪くも、あっという間に蒸発してしまう特徴があります。
メリット
- 水拭きができない電気製品などの掃除
- 1本あれば、必要に応じて精製水で薄めることで消毒用エタノールを作ることができる。
デメリット
- 刺激が強い
- 肌に直接付くと水分を奪う。
- 瞬時に蒸発するため消毒には向かない
- 火気厳禁!
無水エタノールには、こういった特徴があります。
つまり、精製水と混ぜて使うエタノールは、普段私達が使用している消毒用エタノールではなく、おそらく一般の人はほとんど使ったことがない「無水エタノール」を購入する必要があります。
それでは、ここからが本題です。なぜ、精製水がなくなったのでしょうか?
なぜ、精製水がなくなったの?
単純に、「消毒液が作れると報道されたから、多くの人が買いに走ったんだろう?」と思いますよね。確かにそうなんですが、もう一つ情報の受け手の問題が大きく影響してしまったようです。
勘違いが多発!
無水エタノールは、そもそも一般の人が基本的には使ったことがない薬品です。しかも、それを薄めるということは「調合する」ということです。
ねとらぼによれば、昭和製薬の担当者より・・・
- 消毒用アルコールと精製水を間違って購入するケースが相次いでいる。
- さらに、「消毒用アルコールと精製水を購入したがどうすればいいか?」とった相談がある。
こんな相談が毎日200件近くきているようです。
さらに、薬剤師が常駐していないドラッグストアなどで、知識のない店員が消毒用エタノールと精製水を一緒に進めている可能性まで示唆されています。
他にはどんな相談があるの?
エタノールを販売している昭和製薬だけで・・・
- どうやって薄めたらいいか?
- 店員に勧められて買ってしまったがどうすればいいか?
こんな電話対応に追われているようです。
このように、どんなにテレビやネットで正しい情報を伝えていたとしても、受け取り側しだいでデマが拡散されたような状態になってしまっています。
その結果、使われない精製水が「保管」されるか、「よくわからない使い方」をされるか、「捨てられる」といった経過をたどることになります。
それでは、精製水がなくなることでなにが起こると思いますか?
精製水は命の水!
そもそも、精製水は水道水を沸騰させただけではなく、水道水に含まれる塩素やミネラルなどの不純物を一切取り除いた水のことです。
そのため、もちろん飲料水としても使用できますが基本的には医療用と工業用に分けられています。
- 医療用:薬品の溶解水・医療用器具の洗浄水・化学分析用水・その他医療用水など。
- 工業用:薬品の溶解水・科学分析用水・バッテリー補充液・洗浄水・原料用水など。
さて、そんな精製水は例えば、コンタクトレンズの洗浄用の水としても有名ですよね。ただし、場合によっては精製水が買えないと命に関わる場合もあります。
在宅医療
例えば、在宅医療を続けている患者さんの場合、吸引器(気道ケア)や人工呼吸器の加温加湿器などに精製水が使われています。
水道水でも使えるようですが、免疫力が低下しているなどそもそも感染症のリスクにさらされているため、わざわざリスクをとる人はいないですよね・・・
少なくとも、「精製水は医療用だ!」と自覚する必要があります。
こんな時節ですので、買いだめしたくなる気持ちは分かりますが、医療用品の場合は特に使わない分まで買ってしまうと、命に関わる人がいることを覚えておく必要があります。
最後に
これまで、「デマ情報におどらされないために!」ということで情報をお伝えしてきました。
ただ、「正しい情報でも受け取り手によって誤情報に変えられてしまう」。そんな一例として、今回の記事を取り上げました。
どうしても、上辺だけの情報で肝心の中身まで確認せずに、買ってしまっている現状があります。
「日本人は騙されやすい」とよく言われますが、今回のように真実の情報であっても、そもそもあやふやな状態で行動してしまっていることが多いのではないでしょうか?
最後になりましたが、「無水エタノール」と「精製水」を使って「消毒用エタノール」を作る場合はこの分量になります。
→無水エタノール400ml+精製水100ml=500mlの消毒エタノール
*4(無水エタノール):1(精製水)の比率で混ぜれば、できあがりです。
*もしも、間違って「エタノール」を買った場合は・・・
エタノール415mi+精製水85ml=500mlの消毒エタノール
*さらに「消毒用エタノール」を買った場合は、薄めずにそのままお使い下さい!
買ってきた物がそのまま使えればいいですが、今回のように調合する必要がある場合はしっかり調べてから買うようにして下さいね。
参考
健栄製薬:無水エタノールと消毒用エタノール、どこが違うの?
→https://www.musui-ethanol.net/column/column01/
ファミリー薬局:消毒液の作り方
→https://www.natural-pharmacy.jp/jp/static/sp/syodoku_handmade/
【水】まるわかり情報サイト:精製水とは
→https://water-explanation.com/syurui/jyunsui/seiseisui/
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