みなさんは、災害が発生したときに情報が混乱して欲しい情報を受け取ることができないどころか、「デマにだまされてしまう」ということを聞いたことがあるのではないでしょうか?
実際、2019年2月21日に発生した北海道で発生した地震でもデマが飛び交いニュースでも話題になりました。
元総理大臣を務めた人のコメントもデマの一つにカウントされていた始末です。
誰の情報を信じていいのか分からなくなりますよね・・・
それでは、正しい情報がリアルタイムで届けば不安が少しでも減ると思いませんか?
今回は、少しずつ連携が広がっている「SIP4D」についてご紹介します。
そもそも「SIP」ってなに?
SIPとは、「戦略的イノベーション創造プログラム」の略で国家プロジェクトです。
→略せてませんね・・・
*政府機関のHPをみると横文字だらけの主題(命名)が多く、かなり時間をかけて読み解いていかないといけないのが現状です。
スミマセン、話がそれました。
総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の司令塔機能強化の『三本の矢』のひとつ。
総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が府省・分野の枠を越えて自ら予算配分して基礎研究から出口まで(実用化・事業化)までを見据えて、規制・制度改革を含めた取組みを推進しています。
*イノベーションとは、「新しい切り口」とか「新しい活用法」といった意味です。
これだけではかなり分かりにくいと思うのでSIPの内容を見てみましょう!
SIPの内容を見てみると・・・
- SIPには、CSTIが選定した重要な課題として11件あります。(CSTIの議長は安倍総理大臣が務めています)
- 府省・分野的横断的な取組み。
- 基礎研究~実用化・事業化までを見据えて一気通貫で研究開発を推進。規制・制度、特区、政府調達なども活用。国際標準化も意識。
- 企業が研究成果を戦略的に活用しやすい知財システム
とあります。
つまり・・・
- これまで独立した縦の関係が強かった府省が、横のつながりで既存の物をどんどん有効活用して国際的にも認められる水準にしていく。
- 「企業にも研究成果を提供できるようにしていこう!」
という目的が見て取れます。
11の重要な課題とは・・・
- 重要インフラ等におけるサイバーセキュリティーの確保
- 革新的設計生産技術
- 次世代農林水産業創造技術
- レジリエントな防災・減災機能の強化
- インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
- 自動走行システム
- 次世代海洋資源調査技術
- エネルギーキャリア
- 革新的構造材料
- 次世代パワーエレクトロニクス
- 革新的燃焼技術
以上、11の課題があげられています。
今回、紹介するSIP4Dは、SIPの「レジリエントな防災・減災機能の強化」に当たります。
それでは、本題の「SIP4D」についてご紹介します。
「SIP4D」ってなに?
「府省庁連携防災情報共有システム→Sharing Information Platform for Disaster managemente」の略。
SIPの課題の1つ「レジリエントな防災・減災機能の強化」のなかの4番目の課題(ICTを活用した情報共有システムおよび利活用技術の研究開発)という意味で「SIP4D」といいます。
*ICTとは、「情報通信技術」のことです。
目的
国全体で状況認識を統一し、的確な災害対応をおこなうために所掌業務(特定の機関の業務)が異なる多数の府省庁・関係機関等の間で、横断的な情報共有・利活用を実現するシステム開発。
→災害対応現場の業務実態に即したシステムの構築が目標となっています。
*SIP4D=「災害関連情報をデジタル地図に収集・集約・提供するシステム」
SIP4Dによる情報共有がなぜ注目されているの?
NIEDの平成29年8月の報告にこんなものがあります。
→NIED:http://www.soppf.org/fbox.php?eid=11003
防災分野におけるAI技術の利活用について3つの論点が示されています。
❶避難所情報の不整合
事前情報では緯度経度が書かれていて、地図による可視化が容易にできるはずでしたが実際は・・・
- 避難所情報に緯度経度が含まれず住所が特定できない。
- 事前情報にない避難所が新設されていた。
- 事前情報では1つだった施設が2つになっている
- 事前情報と名前が変わっている。(旧名称と新名称が混在・紛らわしい名前が混在など)
- 住所不明の避難所がある。
など・・・
→つまり、避難所の情報が共有できず避難場所に誰も助けが来ないことが発生します。
国・県・市の「避難所情報」は、これまで手作業により別々に擦りあわせがおこなわれてきました。
ですが、足りないものを補うためには複数の調査情報を統合しないと現場では使い物にはなりません。(誤報になる危険性が高くなるため)
そして、統合作業には手間がかかりすぎて自治体では対応できません。
➋災害対応現場の混乱
現場は、ホワイトボード・電話・FAXで情報はまわっている。
想像してみて下さい・・・
- 医療救護班
- 市役所
- 町役場
- ボランティア
などがワイトボードと張り紙だらけの中で駆け回っていたら・・・
大事な情報を見つけられるでしょうか?
→情報を集めても、誰がまとめて、どこに集約されているか分からない。
→結局、同じことを何度も現場に問い合わせることになる。
❸災害対応現場の創意を誘発(臨機応変な行動)できない
想定外のリスクに誰も対応しきれない。
例えば、ため池のすぐ下に避難所があり集中豪雨で、もしあふれそうになっていれば別の避難所に移動しないと大変なことになりますよね?
せっかく安全なはずの避難所に避難したのに安全ではなかったら?
もし、そこが危険だという情報を現場の人が知っていればいち早く避難することができます。
こういった情報の混乱がないように、AI技術を活用して必要な人が必要な情報をいつでも利用できるようにしていくことがSIP4Dに求められています。
SIP4Dはどこまで進められているの?
「官民一体」なんて言葉をきいてからずいぶん立ちますが、どこまで進んでいるのでしょうか?
それぞれの災害時で利活用の実績(連携)があった官庁をみてみましょう。
SIP4D参画官庁 | 常総市水害(2015年) | 熊本地震(2016年) | 九州北部豪雨(2017年) |
文部科学省 | ○ | ○ | ○ |
厚生労働省 | ○ | ○ | ○ |
農林水産省 | ○ | ○ | |
防災官庁 | |||
内閣府防災 | ○ | ○ | |
国土交通省 | ○ | ○ | |
実働官庁 | |||
防衛省・自衛隊 | ○ | ○ | |
消防庁 | ○ | ||
警察庁 | ○ | ||
海上保安庁 | ○ | ||
その他官庁 | |||
総務省 | ○ | ||
経済産業省 | ○ | ||
環境省 | ○ | ||
法務省 | |||
外務省 | |||
財務省 |
皮肉なことかもしれませんが、災害が起こるたびに毎年SIP4Dの実績はあがっています。
SIP4Dの今後の課題は?
今後の課題として自治体・公的機関の・・・
- 意思決定支援
- 住民参加
- 現場機動力向上
- 状況分析
といった民間との連携が課題にあります。
そこで、「防災情報サービスチャレンジ」がおこなわれました。
①地域で活躍する人達が連携して
②災害時の対応を効率化していくコミュニティを作り
③災害対応を効率化する情報サービスを地域で生み出し
④全国に波及させることを支援
するためのチャレンジです。「防災情報サービスチャレンジ」についてはこちらの記事で紹介しています。
→NIED(防災科研)の新しい取組み「防災チャレンジ」とは?
最後に
防災の観点から、例えば地震が研究され建物の構造(耐震・制震・免震)・通信手段・予報などに活かされ、これまでの経験が培われていることが見受けられます。
ただ、災害に「想定外」はつきものです。今後も想定外が繰り返され、また新しいシステムや建物などに変わっていくかもしれません。
SIP4Dもその一つです。このシステムはまだまだ発展途上ですが、震災後の情報は命を左右することはみなさんもご存じだと思います。
これからは、アプリをみれば避難所や危険な場所のリアルタイムな状態などを見ることができるようになるかもしれません。また、誰がどこに避難しているかもすぐに調べられるようになるかもしれません。
AI技術がこれからもどんどん発達していくなかで、今度は個人情報やセキュリティーの問題など新たな問題が出てくるでしょう。ただ、それは最悪の問題を一つ解決できた証拠でもあります。
まずは、震災時であってもデマにだまされないだけの有力な情報が手にいれられる社会になって欲しいですね。
まとめ
- 国家戦略であるSIPには11の課題があり、そのなかの1つのなかでさらに細分化されたものの1つがSIP4D。
- それぞれがバラバラに情報収集をして混乱を招いている。(デマに流される)
- SIP4Dは、災害があるたびに強化されているが、まだまだ民間との連携は不十分。
- SIP4Dが完成すれば、災害時にリアルタイムで誰もが欲しい情報を即座に共有することができる。
参考
内閣府
→https://www.cao.go.jp/index.html
国際高等研究所
→https://www.iias.or.jp/wp/wp-content/uploads/96ae45ab8b2ae9f16c5750b048892ee9.pdf
NIED
→https://www.jst.go.jp/sip/dl/k08/sympo2017/koen_09.pdf
→http://www.bosai.go.jp/rcenter/sip.html
コメントを残す