これまで、「貧血」についてお伝えしてきました。
貧血は子どもにも関係し、また女性だけの病気でもありません。
さて、そんな貧血ですが今回は最後に貧血シリーズ⑤として、「貧血と間違えやすい脳貧血」についてご紹介します。
「貧血」と「脳貧血」の大きな違い!
これまで紹介してきた貧血は、「血液内で酸素を運ぶヘモグロビンの量が基準値以下」になった場合に、診断されます。
ですが、貧血なら例えば氷食行動により一時的に最も守るべき脳や臓器に少なくなった血液を優先して送ろうとします。
→赤血球やヘモグロビンと貧血の関係については、こちらの記事で紹介しています。
ところが、脳貧血の場合は本来優先して守るべき脳に酸素が行き届かないために起こります。
つまり、「貧血」と名前にありますがこれまで紹介してきた貧血とは全くの別物ということになります。
脳貧血ってなに?
- これまで紹介してきたさまざまな「貧血」は、ヘモグロビンが減少することで体内の酸素が運ばれなくなり酸欠状態に陥る病気。
- 一方、「脳貧血」は血液内のヘモグロビン量とは関係なく、めまいや立ちくらみが起こる病気。
つまり、貧血と脳貧血は症状が似ているため同じと勘違いされやすいですが、そもそも発生理由が全く違うということができます。
特徴は?
さて、そんな脳貧血ですがこれはあくまで通称です。
正式には、「起立性低血圧」や「脳循環不全」と呼ばれます。
というのも、急に立ち上がる・長時間立っていることで血液に脳を送るために必要な血圧が下がることで引き起こされるためです。
このように、脳貧血は「ヘモグロビンの量が・・・」ということではなく、血液循環の問題です。
とはいえ、急に立ち上がったり、長時間立っている人達がみんな脳貧血になるわけではないですよね。
もし、そんなことになっていたら、そもそもサラリーマンは務まりませんよね・・・
それでは、どういった場合に脳貧血が起こるのでしょうか?
脳貧血の原因は?
突発性起立性低血圧(低血圧が原因)
そもそも、低血圧の基準をご存じでしょうか?
実は、基準はまちまちで明確な基準はありません。
とはいえ一般的に・・・
- 最大血圧:100mmHg以下
- 最小血圧:60mmHg以下
と、されています。
そして、この基準以下の場合は通常の血圧を維持している人に比べて、「脳貧血を起こしやすい」と言われています。
つまり、「低血圧で貧血が・・・」という場合は、「脳貧血」の可能性が高いということになります。
このことを知らないと、「貧血=鉄分が足りていない!」と勘違いして、貧血の対処をしたとしても脳貧血の対処ができていなければ症状が改善されません。
例えば、朝礼などで「子どもが倒れた!」なんて度々聞きますよね・・・
これは、血圧調節障害による低血圧で、大部分が起立性低血圧のため問題はありません。
ただ、頻回に起こる場合は「てんかん」や「心臓障害」が原因の場合もあるため、注意が必要です。
突発性自律神経低血圧(自律神経が原因)
血圧が低くないのに・・・
- 血液の流れ
- 血圧数
- 心拍数
これらをコントロールしている自律神経が弱まることで脳貧血を引き起こします。
その他
- 食後に、胃に集中して血液が溜まった。
- 胃潰瘍などの症状。
- 内服(血管を拡張させる薬)をしたときなど。
- 体調不良
- ストレス
このように、必ずしも低血圧の人だけの病気ではありません。
それでは、脳貧血のなにが怖いのでしょうか?
脳貧血の症状
- 顔面が真っ青
- 全身の冷汗
- めまい
- 目の前が見えなくなる
- 音が聞こえなくなる
- 気が遠くなる・気を失う
- 悪寒がする
- 脈が弱くなり、心臓の鼓動が早くなる
- 手足のしびれ・感覚がなくなる・冷たくなる
このように、さまざまな全身症状があらわれ、ひどくなると意識障害が引き起こされます。
脳貧血のなにがそんなに怖いの?
脳貧血が発生するのは、先程もお伝えしたように例えば「立ち続けた」・「急に立ち上がった」そんな場合ですよね。
つまり、「そうしなくてはいけなかった!」という場合が多いですよね。
脳貧血は、上記の症状で紹介したように、ひどくなると「失神」してしまいます。
そんな状況で意識を失うことは、それだけで危険ですよね・・・
高齢者なら、倒れたときに簡単に骨折してしまいます。
それではどういった対処が必要なのでしょう?
脳貧血に陥ったときの対処は?
「貧血」なら、鉄分の補給がなによりも大事になります。
ですが、「脳貧血」は脳に血液が行かないことが原因で発生するわけですから、対応が全く異なります。
- 頭の位置を足よりも下げる。(横になる→無理な場合は、座って頭を下げ、膝を抱えるようにする)
- 身体を締め付けている物を緩める。
- 冷汗・手足が冷たくなるため、上着や毛布で温める。
- 突然、倒れるためケガがないか確かめる。
- 意識がはっきりしていても、症状が落ち着くまで動かさない。
このように、「血流の促進を促す対処」と「安全確保」が重要になります。
目の前の人が、突然倒れてきたら怖いですよね・・・
ですが、それが脳貧血の1つの症状です。
とはいえ、できれば脳貧血にならないように予防したいですよね。
脳貧血の予防法はあるの?
脳貧血の原因となる行動(「急な立ち上がり」や「急な起き上がり」)をしないことが基本的な予防法になります。
また、ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれ、全身に血流を促すポンプの役割を担っています。
そのため、足の筋肉を鍛える(ジョギング・ウォーキング・サイクリングなど)必要があります。
そして、自律神経の乱れに気を遣う必要があります。
さらに言えば、起立性低血圧はストレスによる自律神経の乱れが原因で起こりやすい病気でもあります。
→脳貧血にならないためには、過度なストレスと睡眠不足・食生活の乱れに注意する必要があります。
最後に
病名だけでみていくと、その病気は個別でバラバラに発生して見えるかもしれません。
ですが、その症状が出るのには理由があり、決して因果関係もなくバラバラに症状が出ているわけではありません。
働き盛りのAさん:睡眠不足と仕事のストレス→自律神経が乱れた→電車で長時間立ちっぱなし→冷汗が出てきた→失神
結果だけを見れば、Aさんは「失神」です。
ですが、夏場なら今回は「脳失神」ではなく、実は「熱中症」だった可能性も高くなります。
このように、結果が同じでも原因が違えば「貧血」と「脳貧血」の違いのように対応も異なります。
→熱中症の場合は、水分補給と身体を冷やすことが最優先!
見極めるポイントとしては、脳貧血の場合は数十秒で意識が戻ります。
その症状が、どういった病気なのか?
最終的には、医師の診断で決定されます。
不安なときは、まずは受診して下さいね。
参考
大正大学保健室
→https://www.tais.ac.jp/wp/wp-content/uploads/health/blog_images/hokendayori20090930.pdf
愛知県薬剤師会
→https://www.apha.jp/medicine_room/entry-3518.html
livedoor NEWS:脳貧血は貧血とは別物!めまいや立ちくらみを防ぐ対策法
→https://news.livedoor.com/article/detail/13880659/
目黒みらい内科クリニック
→https://www.meguro-clinic.net/2019/06/04/481/
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