障害者の差別が法的に禁止! 罰則と今後の問題点とは?

 

皆さんは、「障害者差別解消法」という法律ができたことをご存じでしょうか?

義務教育を通じて、「差別はいけない!」と誰もが習ったことがありますよね。私自身は福祉の仕事(高齢者介護)をしていたこともあり、「福祉」については大学で学んでもきました。

ただ、そのたびに差別の定義は人により千差万別で、下手をすればただのクレーマーになることまであります。

そこで、今回はこの「障害者差別解消法の中身と問題点」についてご紹介します。

 

障害者差別解消法ってなに?

最初に、少し難しい話しになりますが・・・

 

障害者基本法

まず、この法律は障害者基本法「すべての国民が、障害の有無に関わらず等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」という理念にのっとって定めれた法律です。

そして、この障害者基本法では定められていない「差別の禁止」を具体的に実現していくために、成立された法律です。

さて、簡単な目的はこのぐらいにして、この法律の正式名称を見れば、なんとなくどんな法律かが分かると思います。

 

障害者差別解消法

この法律の正式名称は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」です。まあ、見たままの内容なわけですが・・・

それでは、この法律について一つずつ見ていきましょう。

 

法律の役割!

①「不当な差別的取扱い」の禁止?

差別を禁止するために・・・

国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が障害のある人に対して正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止しています。

→つまり、そもそも個人には適応されません。

 

②合理的配慮の提供?

役所事業者は障害のある人から、なんらかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときは、負担が重すぎない範囲で対応する。

→ただし、事業者については努力義務!

 

「障害者?」「事業者?」

それでは、それぞれの対象はどうなっていると思いますか?

 

障害者の範囲は?

「障害者手帳をもっている人」だけではなく、日常生活・社会生活に相当な制限を受けている人が全て対象です。

  • 身体障害
  • 知的障害
  • 精神障害(発達障害・高次機能障害など)
  • その他の心や体の働きに障害(難病に起因する障害も含む)
  • 障害児

というわけで、「障害」とされる範囲はかなり広いことが分かります。

 

事業者の範囲は?

先程、紹介した「会社」や「お店」だけではありません・・・

  • NPN法人
  • ボランティアグループ

なども含み、同じサービスなどを繰り返し継続する意思をもっておこなう人たちが対象です。

→これまで、「お店のサービス?」として行われてきた接客を、事業者側は特に障害者には気を遣っておこなうことが求められることになりました。

 

具体的に、どんな接客・対応をしたらいいの?

「不当な差別的な取り扱いを禁止」ということは・・・

  • 精神障害を理由に、賃貸などの物件などを拒否する。
  • 盲導犬を連れての、レストランなどへの入店を拒否する。
  • 病院の診察などで、本人を無視して付き添いの人にだけ診察結果などを説明する。
  • 障害を理由に入学や受験を拒否する。

障害を理由に拒否してはいけません。

 

「合理的配慮」ということは・・・

  • レストランに入店した視覚障害者に対して、レストランのメニューを口頭で説明する。
  • 病院に来た知的障害のある人に、混乱しないようにあと何人待ちでどれくらいかかるかを説明する。
  • ホテルなどの受付にきた聴覚障害のある人に、筆談で対応する。
  • バスや電車に乗ろうとしていしる車椅子の人の乗車に対応する。
  • 漢字を読むことが難しい人に、市役所の研修会などの資料を配付するときはルビをふるなどして対応する。
  • 障害特性のある人に応じて、座談会や研修会などの座席を決める。

→ただし同じ障害だったとしても、その程度はさまざまでその対応はまったく違ってきます。

 

それでは、違反した場合どういった罰則があるのでしょうか?

 

罰則

障害者差別解消法は・・・

  • 障害者を差別してはいけない!(不当な差別的取り扱い)
  • サービスが利用できるように、障害に応じたサービスを提供して!(合理的配慮)

という2つの役割が法律で規定されています。

「規定された!」ということは、違反した場合には罰則があります・・・

 

①第25条

第19条(守秘義務)の規定に違反した物は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

→そもそも、障害を理由として差別を受けたりその様子を目撃した場合は、市役所や福祉センターなどの窓口に相談します。

ここでいう「守秘義務の規定に従う人」というのは、こういった関係機関により構成された「障害者差別解消支援地域協議会」という協議会の事務に従事する人していた人が対象です。

つまり、この罰則は「相談者の秘密は守られるので、気軽に専門機関に相談して下さい!」というための罰則ともいえます。

 

②第26条

第8条

  1. 事業者は、障害を理由にして差別的行為をしてはいけない。
  2. 障害者から意思表示があった場合、対応による負担が過重でない場合は合理的に配慮するように努める。

といった規定が前提としてあります。

⇊ ⇊

第12条

「主務大臣は、第8条の規定に基づいて特に必要があると認めるときは対応指針に基づいて報告を求め、又は助言・指導・勧告することができる。」

という規定があります。

⇊ ⇊

第26条は、第8条(障害者に差別行為をしない・障害に応じて合理的な配慮をすること)に対する第12条の規定にある「報告」をしない・「虚偽の報告をした」場合は・・・

20万円以下の*過料に処されます。

*過料=金銭罰のこと。

つまり、こちらは「事業者が障害者に対して不当な取り扱いをしない!」ようにするための罰則です。

 

事業者はそもそも努力義務!

さて、事業者にも罰則があることをお伝えしましたが、そもそも努力義務です。というのも、そもそも義務にしてしまえば、ただのクレーム対応にまで逆らえないことになりかねません。

お客さんだから何でも許されるわけではないように、障害があるからなんでも許されるわけでもありません。あくまで、明確な差別に対する権利を守るための法律です。

この法律は・・・

①障害があることで困ったことがあれば、障害者自身が主張する。

②事業者は、その主張に対して合理的に(誰が見ても)納得できる方法で可能な範囲で対応する!

という内容になっています。


対応には、まさに臨機応変さが求められることになります。そのため、法的に対応の内容まで細かく規定することは、そもそも無理でしょう・・・

「障害を理由に、あまりにも差別的なことをすれば罰を受けることがある。」と考えると分かりやすいかもしれません。

 

問題点

基本的に障害者自身が「主張」できなくてはいけない。

  • そもそも、障害によってはその主張が難しい場合もあります。そのためにヘルプマークなどもありますが、相手にどこまでくみ取ってもらえるかは、その時にならないと分かりません。
  • 事業者の負担が過度に大きくならない程度」ですので、店の力量で対応の差が大きく広がります。(繁盛期などはそもそも対応しなくていいの?)
  • 事業者は努力義務ですので、そもそも強制ではない。(差別が何度も繰り返され大臣からの指導などをしても改善の余地がないなど、明らかに悪質な場合は第26条が適用される)

 

「誰」が「どんな基準」で「どうやって」「どこまで」対応するの?

障害を理由に、「入学させない」とか「入居を断る」ということはたしかに差別かもしれません。ですが、その障害に適した設備がなければやはり生活をするには危険も伴います。

無理矢理入ったとしても、継続していくことは困難でしょう。

 

《それでは、「誰が」「どこまで」「どんな配慮」をしていけばいいのでしょう?》

①「事業者」といいますが、つまり現場の対応ということになります。現実問題として、アルバイトやボランティアの人達にどこまで責任を負わせていくのでしょう・・・

②なにかあったとき、誰が責任をとることになるのでしょうか?

ただ解禁しただけでは、結局障害者自身が苦しむことになりかねません。

→判断基準は、「臨機応変」のため学校側やオーナー側がそれぞれできる範囲の対応になるでしょう。(その人にとって十分かどうかはまた別の話です)

*そもそも、ボランティア活動の縮小に繋がる危険性もある。

 

相談機関

先程紹介した「障害者差別解消支援地域協議会」は・・・

  1. 障害を理由とする差別に関する相談や紛争の防止
  2. 解決の取組みを進める

といった目的のために、国や地方公共団体の機関が、それぞれの地域で組織できることができます。

「制度の谷間」「たらい回し」が生じることがないように、地域全体として差別の解消に向けた主体的な取組みが行われることが狙いとなっています。

→関係する機関(事業者やNPO法人・保健所・福祉事務所など)のネットワークが構成されて行く予定です。

ただ、できていなければどういった苦情・相談があり、個々の事業所や役所などでどういった対応をしたかという情報共有も難しくなります。

 

最後に

障害者差別解消法は、平成25年6月26日に交付され平成28年4月1日に施工された、まだまだ新しい法律です。この法律の存在自体を知らない人が多いかもしれませんね。

こういった「差別」の話しは、障害者に限ったことではありません。そもそも、あなたはどんな内容であれ困っていることがあれば、すぐに適切に助けを呼ぶことができますか?

毎回同じことで、助けを呼ぶことができますか?(例えば、施設に入所したての車椅子の高齢者は、トイレに行くことさえ我慢するようになることが多い)

つまり、異変に気付いて声かけをしていくことが絶対に必要になります。

この法律ができたことで、逆に「なにも言ってこなければ対応しなくていい!」と考える人が少なからず出てこないでしょうか?

→もちろん、「合理的配慮」をしないといけないのですが、痴漢と同じでそもそもこの問題(差別)を誰かが訴えなければ、罰則が適応されることもありません。

 

《シビアな法律》

今後、この法律が「絵に描いた餅」にならないといいですが、逆に厳しく取り締まれすぎても、事業者が萎縮してしまい、かえってサービスが低下していく恐れもあります。

バランスをとることが本当に難しい法律だといえるでしょう。

この法律が、「差別」や「*逆差別」を助長しないといいですね。

*逆差別:今回の法律の場合なら、「障害者」とされた人達を優遇することで、それ以外の人達が不利益を被ること。→不利益を被った怒りの矛先は結局、障害者へいっていまう。


参考

内閣府:障害者基本法
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kihonhou/s45-84.html

内閣府:障害を理由とする差別の解消の推進
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html

千葉県:障害者差別解消法
https://www.pref.chiba.lg.jp/shoufuku/kenriyougo/kaishouhou/

 

 

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