今回で、貧血シーズも4回目となりました。

さて、貧血になると「氷を食べたくなる」ことをご存じでしょうか?

今回は、そんな「貧血のサインの1つである氷食症」についてご紹介します。

 

そもそも「氷食症」ってなに?

「氷食症(ひょうしょくしょう)」は、氷を無性に食べたくなる病気でその理由の多くは、体内の鉄欠乏が原因とされています。

他にも、土を食べてしまう土食症(どしょくしょう)などがかなり希に起こることもあるようです。

基本的には、こういった食べ物ではない物を食べる病気を「異食症」と呼びます。

 

どんな特徴があるの?

実は、まだはっきりした原因は分かっていません。

さらに、定義も曖昧です。

例えば・・・

  1. はっきりとした意図をもって、
  2. 2ヶ月間にわたり、
  3. 少なくとも製氷皿1つ分以上の氷を、
  4. 毎日摂取

していれば、氷食症とみなすという考え方もあります。


とはいえ、氷食症は誰にでも起こり珍しい病気ではありません。

そして、鉄欠乏が原因のことがほとんどです。→鉄欠乏貧血が引き起こされている状態。

 

鉄欠乏性貧血についてはこちらの記事で紹介しています。

鉄欠乏性貧血は女性の約⚪%!? 貧血シリーズ➋

 

そのため、このように定義されることもあります。

  1. 強迫的異常行動(無性に欲しくなる状態)としての氷食行為。
  2. 鉄分の投与により短期間で氷食行為が消失
  3. 鉄欠乏性貧血の進行とともに氷食が認められる場合。

注目してほしい部分は、2の「鉄分が補充できれば氷食行為がなくなる」という部分です。

そもそも、氷食症で氷を食べる人は、「氷がおいしい!」と本能的に感じているから食べてしまいます。

ところが、鉄欠乏が改善されると「氷がおいしくなくなる」ことが知られています。

つまり、鉄欠乏が解消されることで氷食症がなくなるということです。

 

氷食症のなにが問題?

もともと氷食症は、「妊婦さんがなる!?」というイメージがありました。

「妊娠すると酸っぱい物が食べたくなる」みたいなかんじです。

実際は・・・

  • ダイエット
  • アスリート
  • ベジタリアン
  • ビーガン(ベジタリアン+卵や乳製品なども食べない人)
  • 幼児
  • 思春期
  • 一般女性

にも引き起こされています。


ちなみに、氷食行動は、鉄欠乏に対して脳に血液を送り込むための本能的な一時しのぎとして本能によるものだと考えられています。

体中に酸素を送るのは赤血球ですよね。

その赤血球を構成しているのはヘモグロビンです。

①ヘモグロビンには鉄が必要なため、鉄が減ればヘモグロビンが減る。
②赤血球の数が減る。
③酸素補給が減る。
④酸素欠乏状態になる。
⑤脳や内臓など優先度の高いところ(血液や脳)へ、酸素を送ろうとする。
⑥酸素を送るために、氷を食べることで冷たい刺激を与える。
⑦反射により、血管が収縮して一時的に血液が増加する。

さて、それでは氷を日常的に食べるとどうなると思いますか?

 

氷食症の危険性!?

①免疫力が低下する。

氷を食べるわけですから、当然体温が低下します。

人間は体温が下がると、免疫力が落ちることは皆さんご存じかと思います。

  • 風邪や感染症にかかりやすくなる。
  • 転んでケガをしても治りにくい。
  • さまざまな体調不良が引き起こされる。

 

②歯が欠ける

同じ歯で噛むことが多いため・・・

  • 歯が欠ける
  • 磨り減る
  • 顎関節症

といった症状が出やすくなります。

 

貧血の解決にならない

これが一番やっかいなことでしょう。

貧血が原因で氷食行動がでて氷ばかりを食べていても、鉄欠乏は改善しませんよね。

つまり、氷を食べても根本原因が改善されないだけでなく、免疫力低下・歯への影響など他の問題が発生する上に、貧血もどんどん進行していきます。

*ちなみに、例えば馬などはフェンスを舐める・蝶ならミネラルの多い土壌を舐めるなど、異食行動は見られています。

→つまり、人間だけではなく動物も本能としてやっている行動です。

johnhain / Pixabay

 

鉄欠乏性貧血が進行した場合

氷食症を放置して、鉄欠乏性貧血が進行してしまうと・・・

  1. サプリメントや食品のみでは十分な鉄分を補うことは難しくなる。
  2. 鉄剤を服用する。(服用開始後、6~8週間で貧血は改善する)
  3. 体内の鉄の蓄えが正常化するには、3~6ヶ月の服用が必要。

つまり、この状態になってしまうと「受診しないと治療は難しい」と言うことです。

 

最後に

「氷を食べること」と「貧血」は、一見なんの関係性もないように見えます。

ですが、本能としては自分の身体に一時しのぎとはいえ、効果があるものを瞬時に判断した結果です。

そういう意味では、自分で自分をコントロールしているというよりは、「本当は本能に動かされている!」と考えた方が自然かもしれません。

このように、身体は本人が気付く前に反応してしまうため、見過ごしてしまいやすいのかもしれませんね。

そんな氷食行動は、まさに身体のSOSです。

季節に関係なく氷を食べる習慣がある人は、貧血になっていないか一度受診して確認した方が安心です。


参考

macaroni
https://macaro-ni.jp/28257

ヨミドクター:医療相談室
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20140302-OYTEW48227/

氷食症に関する文献的考察
http://npofukusiyougu.sakura.ne.jp/sblo_files/npo-fukusiyougunet/image/E6B0B7E9A39FE79787E381ABE996A2E38199E3828BE69687E78CAEE79A84E88083E5AF9FEFBC9AE58C97E58CBBE79982E5A4A7E38387E383B3E382BFE383ABE38388E38394E38383E382AFE382B92016.pdf

 

 

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