●この記事では、空間除菌の問題点を中心に紹介しています。
新型コロナウイルスの影響で、否応なく「消毒」がこれまで以上に習慣化した方が多いのではないでしょうか?
ところで、「消毒」と言えば普通はアルコールなどで、ドアノブなどを直接消毒しますよね。
それでは、さまざまな商品が出されている「空間除菌」は、本当に可能なのでしょうか?
今回は、「空間除菌と現状」についてご紹介します。
「空間除菌」ってそもそもなに?
大幸薬品では、「クレベリン」という商品が販売されています。
その中で、消毒についてこのように紹介されています。
- 物体除菌・・・ドアノブなどの物に付いているウイルス
- 空間除菌・・・空気中に潜むウイルス・菌などを取り除く
つまり、私達がこれまでやってきたドアノブなどの除菌は、「物体除菌」ということになります。
それでは、空間除菌は現実的に証明されているのでしょうか?
空間除菌は可能?
「可能か不可能か?」で言えば、可能だと言えるでしょう。
例えば、部屋を菌が死滅する温度に設定したり、濃度の高い消毒液(次亜塩素酸ナトリウムなど)を散布するなどすれば可能でしょう。
ですが、これでは私達も生きていくことが難しくなります。
また、無菌室の要領で気圧を操作するといった方法もあるかもしれませんが、一般家庭で現実的ではありません。
そもそも、私達やペットの健康状態なども含めて、日常生活がこれまで通り送れる環境で空間除菌ができなくては意味がありませんよね。
ところで、すでに「空間除菌」が謳われている商品がたくさん売られていますが、本当に効果はあるのでしょうか?
そもそも「空間除菌」の効果は不明・・・
実は、空間除菌については以前からも問題がありました。
最近でも、例えば携帯型の空間除菌を謳った商品に対して、消費者庁から行政指導を行なったことが2020年5月15日に発表されています。
ここで言う「携帯型の空間除菌商品」というのは、首に下げるなどして使用する商品のことで二酸化塩素を利用していました。
ただ、効果について全てが否定されているわけではありません。
この件でひっかかったのは、景品表示法違反です。
- 身につけるだけで、空間のウイルスを除去
- 身につけるだけで1㎥の空間除菌
- 携帯することで、オフィスや会議室などで除菌・消臭できます
- 通勤時の予防として、除菌・消臭いたします
- 電車やバスの中、各種施設の中などで、空間に浮遊するウイルス・菌・臭いを除去します
問題になったのは、狭い密閉空間での実験がほとんどだったにも関わらず、外出先などどこにいても効果があるような宣伝をしていたことでした。
つまり、狭い密閉空間での効果については否定されていません。
→「景品表示法」については、こちらの記事でも紹介しています。
また、2020年6月9日に経済産業省は、「新型コロナウイルス対策における「次亜塩素酸水」の空間噴霧について(ファクトシート) 」を発表しています。
実は、そもそも「消毒液の噴霧によるウイルス除去効果について、国際的に確立された評価方法はないことが現状」と指摘されています。
つまり、「消毒液」と一言で言ってもアルコールをはじめ、「二酸化塩素」や「次亜塩素酸水」などさまざまな種類がありますが、消毒液の噴霧による空間除菌は確立していません。
もしも、本当に世界中で認められるような空間除菌が実現すれば、「世界初の功績として名が残るような業績」だと言えるでしょう。
それでは、どうして難しいのでしょうか?
WHOの空間除菌に対する見解
「COVID-19 について、噴霧や燻蒸による環境表面への消毒剤の日常的な使用は推奨されない」とする。さらに、「消毒剤を人体に噴霧することは、いかなる状況であっても推奨されない。これは、肉体的にも精神的にも有害である可能性があり、感染者の飛沫や接触によるウイルス感染力を低下させることにはならない」
つまり、消毒液に対する人体のリスクだけでなく、そもそも「空間除菌がウイルス感染力の低下につながらない」としています。
例えば現状では、消毒液はどこに行っても設置されていますよね。
ですが、そんな消毒液を噴霧するとなれば、目・呼吸器・皮膚への刺激などさまざまな人体へのリスクがあります。
そもそも、消毒液は「水」ではありませんし、その水でさえ「水アレルギー」を引き起こすことがあります。
→水アレルギー(皮膚疾患)は自分の身体の・・・
- 涙
- 汗
- 唾液
などにも反応し、皮膚に水がかかるとおよそ15分後に当該部位が赤く腫れ、痒みや激痛を伴う。
ちなみに、米国疾病予防管理センター(CDC)でも・・・
医療現場の消毒に係る一般論として「消毒剤噴霧は、空気や表面の除染のためには不十分な方
法であり」、「一般感染管理には推奨されない」
と、されています。
つまり、世界的に見るとそもそも人がいる空間に対して、消毒をすることは推奨されていません。
それでは最後に、クレベリンでも使われている効果が否定されていなかった二酸化塩素について見ていきましょう。
二酸化塩素は密閉空間での効果は否定されていなかったが・・・
先程、紹介した大幸薬品のクレベリンも、「二酸化塩素」による空間除菌が謳われている商品です。
まず、「二酸化塩素」について、抑えておかなくてはいけないことがあります。
学校保健会より
二酸化塩素は我が国では消毒薬としては未認可である
二酸化塩素には殺菌作用があり、確かに消臭・消毒などに使われています。
ですが、日本では未認可の消毒薬です。
とはいえ、安全性が経口摂取では確認されています。単純に考えれば、「経口摂取ができるなら安全!」と考えるかもしれませんね・・・
ですが、そんな簡単な話ではありません。
例えば、水アレルギーのように皮膚になにかしらの影響が引き起こされる可能性は十分にあることは先程お伝えした通りです。
そもそも、今回は「空間除菌」について説明していますが、消毒効果のある二酸化塩素を噴霧するわけですから、WHOが懸念しているように、口から摂取する可能性だけでなく、皮膚や目、気管など人体への影響を確認しなくてはいけですよね・・・
ところが、長期間低濃度による暴露に対しての毒性試験は不安定で、そもそも反応性の高いガスであるため、世界的に見ても十分な検証ができていません。
当然、安全性について世界のどこよりも厳しい日本では、「まだ未認可の状態」となります。
*ちなみに日本で「二酸化塩素」は、労働安全衛生法により「名称等を通知すべき危険物及び有害物」の一つに指定されています。
二酸化塩素の「弊害」と「研究」
さらに、国民生活センターでは2020年5月15日に「二酸化塩素に関する弊害」が報告されています。
二酸化塩素を有効成分とうたっているにも関わらず放出が皆無である製品の存在や臭気が原因とみられる体調不良者の発生、自社での有効性・安全性確認がなされていない製品がほとんどである実態がみられた。
つまり、効果がないどころか健康状態に悪影響を及ぼしている現状まで確認されています。というより、そもそも、安全性すら確認されていない商品が多かったようです。
なにより、日本でウイルス感染を予防できる旨を商品の効果・効能として表示するには、厚生労働大臣による医薬品としての製造販売承認が必要です。
このように、空間除菌についてはそもそも世界的にみても、まだまだ研究段階の状況です。
ただ、2020年10月15日に大幸薬品は「大幸薬品、二酸化塩素分子が新型コロナウイルスの感染を阻止するメカニズムを解明 」をリリースしています。
こういったこともあり、確かに空間除菌の研究は進められていますが、その効果や人体への影響についての研究などをクリアして認可にいたるまでは、まだまだ不十分だと言えるでしょう。
最後に
「空間除菌ができる!」とされる商品が発売されれば、確かに新型コロナウイルスに注意しないといけない現状ではかなり期待されるでしょう。
まさに、飛ぶように売れるのではないでしょうか・・・
以前のような、「屋内ライブ」や「買い物」などもできるようになるかもしれません。
ただ、不特定多数の人に対して全身に霧状の消毒液をかけることは、やはり危険が伴うのではないでしょうか?
まずは、その消毒液がそもそも国から認可されているのかを確認するところから始めた方がいいでしょう。
新商品がこれまでになかった商品なら、飛びついてしまうかもしれませんがやはり注意する必要があります。
それでは最後に、amazon「除菌・消毒用商品の安全な使用について」を紹介します。
これまで、消毒剤の有効かつ安全な空間噴霧方法について、科学的に確認が行われた例はありません。また、現時点では、薬機法に基づいて品質・有効性・安全性が確認され、「空間噴霧用の消毒剤」として承認が得られた医薬品・医薬部外品も、ありません。
薬品は、「薬」にも「毒」にもなります。間違った使い方をしないようにご注意下さい。
コメントを残す